嬰児の餓死に日本社会の「貧困」を思う。

同居する生後一カ月の次男を栄養失調などで死亡させたとして、仙台北署は十八日、保護責任者遺棄致死の疑いで、仙台市青葉区桜ケ丘一、母親の無職千葉侑容疑者(28)を逮捕した。「ミルクを買うお金がなく、十日前からあげていなかった。さゆとコンビニで買った飲料水をあげていた」と供述、容疑を認めている。
 逮捕容疑は、次男の楓翔(ふうと)ちゃんにわずかな飲食物しか与えずに飢餓状態になっても医師の診察などを受けさせず放置し、十八日に脱水症状や栄養失調で死亡させた疑い。
 楓翔ちゃんは十九日で満二カ月だった。体重は約三一〇〇グラムで、一カ月検診時より二百グラム減っていたという。
 千葉容疑者は自分の父親(58)と楓翔ちゃん、その双子の弟の三男との四人暮らし。十七日に自宅を訪れた容疑者の母親(51)が衰弱した双子に気付いて仙台市の東北大病院に連れて行ったが、楓翔ちゃんは十八日朝に死亡した。三男の命に別条はなく、入院中。
 千葉容疑者には長男と長女もいるが、児童相談所に預けられている。夫はいないという。
 県営住宅の自宅には十八日夜、現場検証で多数の警察官が出入りしていた。別の棟に住む五十代女性は「自分も孫が生まれたばかり。ショックだ。面識はなかったが、気付いてあげられたらよかった」と言葉を詰まらせた>(以上「東京新聞」より引用)


 家族四人暮らしでその嬰児が餓死するとは一体いかなる状況なのだろうか。いい年をした容疑者の両親がいて、なぜ公的機関に援助を申し出なかったのだろうか。
 テレビを付ければ「大食い」だとか「グルメ」だとかを頬張る芸人たちが日常的に映し出される現代の「飽食」にあって、餓死する嬰児がいるとは信じられない。彼らが「苦しい」と叫ぶほど胃に詰め込む一方で、餓死する者もいるのが現代日本の有様だ。

 もちろん餓死させた容疑者は責められるべきだが、彼女の周りの保健婦や民生委員などは何をしていたのだろうか。隣近所の人たちは全く気付かなかったのだろうか。仙台市青葉区桜ケ丘一丁目が飛んでもない田舎で、隣まで軽トラでなければ行けないような山間僻地とは思えない。
 日本の社会は様々な「ライフライン」を張り巡らしている。そして幼児や子供の命や健全育成のための「制度」や「援助」を行うことになっている。だが、それらを利用するのに様々な「お役所仕事」が利用障壁になっているとしたら、まずそうした利用障壁を取り除かなければならない。
 漫然と保健婦が新生児の家庭を訪問しているわけではないし、民生委員は年間僅かな委託料を頂戴している地域の「名誉職」ではない。命を繋ぐ「ライフライン」の一本を担っている。しかしなぜ仙台市青葉区桜ケ丘一丁目に誕生した嬰児や幼児の命を日本の社会は守れなかったのだろうか。

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