財政規律のためには2029年に消費税19%でも足りないとは。

来年10月に消費税は8%から10%に引き上げられる見込みだ。現在、増税と同時に導入が検討されている食料品の軽減税率や、中小店舗に対する救済策の議論が盛んだが、早くも「次の引き上げ」を気にする動きが出てきた。

 第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は、「2025年度に基礎的財政収支を黒字化し、社会保障関係費をすべて消費税で賄うとすれば、税率は17~19%に上がる」と言う。

 何と現在(8%)の倍以上だ。熊野氏は、消費税10%のままで25年度を迎えると、社会保障費のマイナス分がどのぐらいになるかを試算。25年度の社会保障費は41.2兆円に達するが、消費税収は24.1兆円に過ぎない。その差は17.1兆円だ。その全額を消費税で賄うとすると、税率は17~19%(軽減税率は15~17%)が必要になるという。
「将来に向けた議論は必要になってくるでしょう。社会保障費のひとつである年金の減額なども検討課題になってくるかもしれません」(熊野英生氏)

 国際通貨基金(IMF)は日本の財政を健全化するため、数年前から「消費税を15%に引き上げるべき」と“要求”している。

「日本側からすれば余計なお世話ですが、消費税はいずれ12%、13%と引き上げられることになるでしょう」(市場関係者)

 来年10月の消費増税で、平均的家計の負担増は年4万4000円との試算がある。2%分が4.4万円だとすると、1%分は2.2万円。かなり乱暴な計算だが、8%から19%にアップすると、プラス11%だ。ごく単純には、「2.2×11」で24.2万円の負担増となる。庶民生活は苦しくなるばかりだ>(以上「日刊ゲンダイ」より引用)


 まったく愚かな議論だ。消費増税だけで財政規律を実現する、という設定自体が無意味だ。なぜなら経済は生き物で、税率を上げれば税収が増える、というものではないからだ。
 むしろ消費税を10%に上げれば税収全体では減少しかねない。さらに政府が目論む「付加価値税」の伝票方式を国民に課すつもりのようだが、税金は「単純・明快」を以て旨とすべきだ。

 消費増税10%の軽減税のありようの議論だけでも甲論乙駁で混乱しているではないか。法案の段階で甲論乙駁なら、実施段階でどれほどの混乱が起きるだろうか。
 消費税は財務相にとって好都合の税だ。好・不況に関係なく、国民の消費生活は一定だからだ。その国民の消費に一定の税率を課すのだから税収も一定化している。使い勝手の良い税金といえる。

 しかし国民にとっても過酷この上ない。なけなしのカネで食料を買い求めても税金を支払わされる。
 消費税を20%近くまで上げるなら、教育と医療は無料化しなければ「欧米並み」とはいえない。食料品に関する税もスウェーデンですら7%の軽減税率だ。英国などの多くの国は非課税となっている。それが消費税の国際的な基準だ。

 日本は低い社会保障のまま、国民から過酷な税を取り立てている。公的負担率を国際比較するのは正しくない。公的負担から公的給付を差し引いた「純公的負担」を比較すべきだ。
 そうすると欧州諸国が押しなべて14%台なのに対して、日本は17%と突出している。なぜそうなっているのか。それは公的部門の生産性が低いからだ。

 なぜ公的部門の生産性が低いのか。それは公務員が働いてないからだ。たとえば社会福祉関係の公務員の多くは「外注委託伝票」を切ることと、民間施設の検査・監督しかしていない。介護福祉は民間企業が現場をすべて受け持っている。
 医療関係も実際に国民に医療を提供しているのは公務員ではない。かつては国立病院があったが、現在では行政独立法人となっている。公務員は医療保険の「伝票を切る」だけだ。それも多くは外部委託の電算事務会社が行っている。

 保育所もそうだ。公立の保育所を除いて、公務員が乳幼児を預かって面倒を見ているのではない。すべては民間法人が現場事業を受け持ち、公務員は「措置費」の伝票を切り、数年に一度施設の検査・監督をしているだけだ。
 その程度の生産性の低い仕事しかしていない公務員が高額報酬を得て、就職でも狭き門となっているのに対して、介護福祉士や保育士は待遇の悪さから敬遠されて就職希望者が集まらず、安倍自公政権は外国人労働移民に頼るという悪政で凌ごうとしている。

 マスメディアはそうした現場を国民に報せるのが使命だが、実際は実態を殆ど知らせないで「人手不足」だけを拡散している。公務員の平均年俸が700万円を超えたというが、介護福祉士や保育士の平均年俸はいくらなのか、是非とも各自がネットで検察して調べて頂きたい。
 財政赤字は政府が国民から借りた借金だ。その返済に国民から搾り取る、というのはどうかしている。それも貧困層に厳しい消費増税でやろうとするとは言語道断だ。

 まず経済成長しなければ財政規律の議論は何も始まらない。経済規模(=パイ)を大きくしないで、自分の取り分だけ大きくしようとすれば国民の取り分が減るのは自明の理ではないか。
 まずパイを大きくすべきだ。すべての議論はそれからだ。パイを大きくするには消費減税、もしくはマハティール氏のように消費税を廃止することだ。そして明日の経済成長のために投資や研究開発減税を果敢に実施すべきだ。

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