北方四島返還を持ち出すには、西側諸国の一員として徹底した対ロ経済制裁に動くべきだ。
<プーチン大統領の発言は、ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムで出てきたものだ。この会議には安倍首相も出席しており、未来の世代のためにも、平和条約締結へのアプローチを変えねばならないと発言し、北方領土の共同統治が一つの策だと熱く語った。
少々長いがプーチン氏の「即時平和条約締結提案」に関する反応の電脳空間の平均値を知って戴くために掲載した。世界はプーチン発言をこう見ている、という糧にしていただきたいが、注意すべきはネットの自由が確保されていない中・ロの意見は反映されていないことだ。
上記記事には主として西側のジャーナリストの意見が掲載されている、とみるべきだ。つまり米国のエージェントの意見だということだ。
ロシア国民はもとより「戦利品を返還する義務はない」と教え込まれている。彼らはポツダム宣言を会議したドイツの避暑地にスターリンも同席していたことを無視して、旧ソ連がポツダム宣言に調印していないからポツダム宣言にロシアは拘束されない、という立場をとっている。
それは日本の独立を約したサンフランシスコ条約にも旧ソ連は調印していないことから、日本はロシアにとっていまだに国際的には独立国家と見なしていないことにる。ロシアは戦勝国クラブの一員としての立場を十二分に利用している。
その反面、プーチン氏の危惧が解らないでもない。日本から膨大な経済支援を獲得するために、ロシア国民の税金を注ぎ続けるしかない北方四島など返還したいと本音では考えているだろう。しかし国防上、北方四島に米軍基地が建設されてはかなわない。日米同盟といいながらしっしつ的な米国の占領国・日本政府に米国が択捉に米軍基地とすべき土地を寄越せ、と言われれば日本政府は従うと予測せざるを得ない。
中ロを手玉に取って外交ゲームを楽しめ、と勧める記事もあるが、それこそ米国の望むところだろう。中ロ関係に日本が楔を打てば米国にとって望外だ。しかし日本にとっても中国を使ってロシアの南下策に対抗させるのは悪い戦略ではない。ただ、そうした権謀術数を駆使できる老獪な政治家が日本にいない。安倍氏の無能・無策ぶりは六年間のあらゆる外交で明らかになっている。
北方四島の返還を「独立国家・日本」が求めるなら、まず日本が真の独立国家になり、西側諸国の一員として毅然とした対ロ制裁を実施すべきだ。ぬるま湯に浸かったままのような外交をダラダラと続けて良いことは何もない。ただロシア国民に舐められプーチン氏にバカにされるだけだ。
これに対しプーチン大統領は、安倍首相がアプローチを変えようというのなら、無条件で平和条約を年末までに締結しようと、アジアの首脳たちを前に提案した。「ジョークではない」というプーチン大統領は、平和条約締結により、両国関係に良い雰囲気が作られ、懸案となっている問題も友人同士のように解決することができると話した。過去70年間にわたり解決できなかったすべての問題の解決が容易になると自分には思えるとも述べた(AFP)。
この件に関し、菅官房長官は、どんな条約であろうと、まず領土返還が必要だと述べ、安倍首相とプーチン大統領が過去に無条件の平和条約について話し合ったことはないとしている。またロシア側の報道官も、プーチン氏の発言は突然飛び出したものだと説明している。
この件に関し、菅官房長官は、どんな条約であろうと、まず領土返還が必要だと述べ、安倍首相とプーチン大統領が過去に無条件の平和条約について話し合ったことはないとしている。またロシア側の報道官も、プーチン氏の発言は突然飛び出したものだと説明している。
プーチン発言をどこまで本気と見るかだが、ロシアの元外務次官、ゲオルギー・クナーゼ氏は、プーチン大統領には本気で領土問題を解決する気はないと述べる。発言はただの煽りであり、何も期待していないだろう、とモスクワのラジオ局に語っている(AFP)。フォーリン・ポリシー誌は、そもそも愛国主義的なロシア国民は、経済のために領土を差し出すことを支持するはずがないとし、北方領土返還はまずないと見ている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、欧米中心に西側諸国から経済制裁を受けているロシアが、アジアに戦略的バランスを移していることが、今回の発言に関係していると見る。ロシアは中国や韓国などとの関係強化に向かっており、アジアを取り込むことで、失った欧米からの資金を相殺することを期待している、ということだ。
カーネギー財団モスクワセンターのアレクサンドル・ガブーエフ氏は、発言は日本の投資が少ないことにプーチン大統領がいらついていることの表れではないかとし、日本にプレッシャーを与えるのが目的ではないかとしている(AFP)。事実日本は西側の一員としてロシアへの経済制裁に参加しており、日本の多国籍企業も、ロシアへの投資には積極的ではない、とフォーリン・ポリシー誌は指摘する。
日本はこれまで北方領土を取り返すため、主権や統治のやり方などに関し、様々な提案や妥協をしてきたが、どれもロシアの気に入るものではなかったとフォーリン・ポリシー誌は述べる。このままロシアと付き合い続ける意義はあるのかと考えてしまうが、同誌は、安倍政権が長期にわたってロシアに関与し続けてきたことにおいて、もっとも大事な要素は戦略面であり、ロシアと中国の関係にくさびを打ちこむことだとする。
日本はロシアが戦略的パートナーになることはないと知っているし、意見がまとまる余地は少なく、両国外相、防衛相による2プラス2の協議も、結果を求めるというよりは善意の印のようなものだと同誌は指摘する。仮に中露関係が少しでもギクシャクするようなことでもあれば2プラス2が意味を持つだろうが、それでもロシアはこれまで通り曖昧な態度を取るだろう。それでも日本としては、中国に近寄り過ぎることへの疑問の種をロシアに撒き、ロシアの信頼性について中国に不安を感じさせることができれば、会談を続ける価値はあるとしている>(以上「NewSphere」より引用)