日本の国のカタチ。

2016年の米大統領選でトランプ氏陣営の選対本部長を務めたポール・マナフォート被告が14日、大統領選介入をめぐるロシア疑惑を捜査するマラー特別検察官と司法取引で捜査協力することで合意した。マナフォート被告は今後、捜査当局の要請に従い全ての資料を提出し、あらゆる場面で証言することに応じた。
 マナフォート被告は昨年10月に起訴されて以来、一貫して起訴内容を否認。先月のバージニア州の連邦陪審では脱税や銀行詐欺などの罪で有罪評決を受けていた。この時点ではトランプ氏に不利となる司法取引に応じていなかったとされ、トランプ氏は「勇敢な男だ」と称賛し、恩赦を与えるとの観測も出ていた。
 しかし、一転して捜査協力することになり、合意文書では「完全に、誠実に、徹底的に、率直に、捜査に協力しなければならない」と明記。トランプ氏の疑惑をめぐっては、「トランプ氏のためなら銃弾を受けることもいとわない」と語っていた元個人弁護士らが相次いで捜査協力に転じており、全容解明に向けて進展する可能性もある。
 マナフォート被告はウクライナの親ロシア派のためにロビー活動し、受け取った多額の報酬をめぐる資金洗浄の罪や、証人に圧力をかけた司法妨害の罪などに問われ、今月公判を控えていた。14日、ワシントンの裁判所で司法妨害の罪などを認め、マラー氏との司法取引に踏み切った。最大で禁錮計15年の判決を受ける可能性があるが、捜査協力の程度によって大幅に減刑されるとみられる>(以上「朝日新聞」より引用)

 日米の民主主義の「質」を考えざるを得ない。米国では「正義」のためなら政権内部にいた人物でも司法取引に応じて「正義」を貫こうとする。
 一方、日本では政権内部の者は国会でも平然と嘘を吐き、官僚たちは国家文書であろうとも政権に不利な記述を改竄したり、隠蔽したりして結果として立憲主義の根幹を揺るがしても良心の呵責を感じない。

 それは国民性にあるのかも知れない。多民族国家の米国は社会を成り立たせている原理・原則を重視しなければ政治体制はたちまち政権根拠を失い「無政府状態」に陥る可能性がある。
 日本の場合は単一民族で長い歴史を持つ国家のため、政権が信を失っても国家が瓦解することはない。律令体制から幕藩体制へ、そして現在の民主主義へと政権原理は変化したが、政権原理の変化によって日本国民が他国民によって奴隷化される危険性はないと思っている。

 米国はニューヨークの海辺に立つ自由の女神に象徴されるように、フランスの市民革命を経て樹立された「民主主義」を統治体制としている。それは「市民」に約束された権利であって、その地に暮らすすべての者に与えられた権利ではない。フランスにもフランス革命以後も奴隷はいた。もちろん米国もリンカーンが奴隷宣言するまで国内にいたし、第二次大戦後にフィリピンが独立するまで他国民を奴隷支配していた。
 日本では奴隷が存在した歴史はない。身分制度は確かにあったが、それらは便宜的なものでしかなかった。自由を奪われ人権を徹底して無視される奴隷が日本に存在した歴史はない。武士という職業差別はあったものの、それですらカネで売買される程度のものだった。

 だから「他者から如何なる桎梏も与えられない」という強烈な自由への渇望を日本国民は経験したことがない。喋る言葉や文化の違いでアイヌ差別はかつて存在したものの、皮膚の色の違いによって自由を奪い牛馬以下の扱いを他者に強いたことはない。
 だから個人の自由や人権の尊重よりも、所属する団体や地域社会の「和」を重んじるようになった。それは所属団体の利益が構成員個々人の利益につながるからだ。だから所属団体の「長」は強烈な指導力や統治権力を振り翳すのではなく、構成するすべての調和を保ち組織を維持するように努めてきた。だから「神輿は軽くて馬鹿が良い」などと揶揄されている。

 日本こそ無政府状態に陥る可能性のない国家では、国民は正義を振り翳し、個々人の存在確立に動くべきだが、実際は「長いものに巻かれ」「大きな傘の下で穏やかに暮らしたい」と切望している。つまり「正義」という自由主義社会の軸となる御旗を振り翳す必要がないのだ。
 かくして「軽くて馬鹿な神輿」が放置され、国民も大して目くじらを立てないでいる。彼もまた日本国民の一人だから日本を壊したり滅ぼすことはしないだろう、と思い込んでいる。

 憲法を改正して「自衛隊を明記して、独立と自由を守る」とバカなことを叫んでも国民はあまり深く考えない。米軍が日本の首都圏に展開して瞬時に米国によって制圧される状態にある、実質的に米国の占領下にある日本の現状を「無きが如し」として目を瞑ったまま、憲法に「自衛隊を明記して、独立と自由を守る」と総裁選の候補者が叫ぶ愚かさを日本のマスメディアは一切何も指摘しない。
 それどころか日本のマスメディアに公文書改竄によって日本の民主主義が危機に瀕しているという危機感もない。官邸が嘘を吐いても「大したことはない」と能天気だ。なにしろ米国統治という二重支配をサンフランシスコ条約以後の長期間、知って知り抜いて、猶も知らない素振りをして来たのだから。「本音と建前」というよりも決して瓦解しない日本という国家の枠組みに国民も政治家もマスメディアも安住しきっている。ぬるま湯に浸かったまま、いよいよ日本は衰亡しようとしている、というにも拘らず。

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