公文書虚偽記載、はないか。

中央省庁が障害者の雇用者数を水増しした問題で、野党は二十一日、国会で十三府省庁の担当者からヒアリングを行った。各省庁の担当者は「状況を精査中」を連発し、詳しい説明を避けた。障害者団体の代表二人も出席して、議論を見守ったが、省庁の姿勢に「障害者雇用に取り組もうという姿勢を感じない」と批判。政府には任せられないとして、障害者を入れた第三者委員会を設置して、実態解明を進めるよう迫った。
 野党から障害者雇用を所管する厚労省に対して、水増しの疑いをいつ認識したのか、そのきっかけは▽なぜ、公表しなかったのか▽水増しの具体例と、その対象人数は▽調査結果はいつ公表するのか-など八項目の質問が出された。厚労省の回答は、制度に対する質問を除き「調査中」だった。
 ほかの十二省庁には水増しの実態を聞いたが、いずれも「精査中」だった。
 水増し問題は、障害者雇用を率先して進める立場の省庁が、雇用者数を水増しして、雇われるはずだった障害者の雇用を奪った、と批判されている。自らも視覚障害のある日本障害者協議会の代表藤井克徳(かつのり)さん(69)と、DPI(障害者インターナショナル)日本会議の事務局長で、下半身に障害があり車いす生活を送る佐藤聡さん(51)が駆け付けたのも、早く実態を把握したいからだ。
 ヒアリングの途中で、藤井さんは「障害者はあてにならない前提にしているのでは。差別があるのかなという気持ちを持たざるを得ない。改めてこの国の障害者雇用のもろさを投影した」と指摘。「障害者にとってどれだけ働く場が奪われたのか。障害者への背信行為をどう省庁は認識しているのか」と問いかけた。しかし、担当者から具体的な説明はなかった。
 佐藤さんは「障害者雇用促進法という国の作ったルールを自分たちが守っていない。本来、雇われるチャンスがあった人が働く場を閉ざされたことは重大な問題だ」と指摘。省庁の担当者に「障害者を含めて第三者委員会を設置して、実態把握を進めてほしい」と迫った。省庁の担当者から発言はなかった>(以上「東京新聞」より引用)

 障害者雇用促進法によって定められた官公庁の雇用割合を誤魔化していた件について、野党のヒアリングに対して官庁担当者からは「精査中」との回答しかなかったようだ。これほど国民を馬鹿にした話はない。
 障害者雇用割合を「精査」しなければ何%か分からない企業は日本にない。人事も電子化されてキーワードを打ち込めば即座に回答が得られる。

 その場逃れの回答にはウンザリするが、障害者雇用割合を「基準を満たしている」と各省庁が発表していたとすれば、公文書虚偽記載の疑いが浮上する。もしくは公文書改竄の疑いがある、というべきなのか。
 いずれにせよ、官僚たちは仕事の成果を文書にして残さなければならないし、それらを取り纏めて各省庁の人事か人事院などが発表しているはずだ。そこに改竄なり虚偽記載があったのは疑いようがない。

 安倍自公内閣になって総理大臣に倣って官僚が嘘を吐き、官邸の秘書たちが嘘を吐く。だから公文書なんて何とでもなる悪戯書きのようなものだ、という感覚になっているのだろうか。それが地方にも波及して地方自治体も障害者雇用割合で嘘の報告を平気でする。
 嘘と指摘されれば「障害者手帳を持たない障害者を障害者に数えていた」などと意味不明な回答をする始末だ。それなら出来の悪い健常者を「障害者」枠で採用していたのではないか、と疑念を抱かざるを得ない。

 マスメディアは「忖度」と表現しているが、何のことはない「水心あれば魚心」という贈収賄のことに他ならない。物品の授受が認められなくても、基準を歪めて便宜を図れば「贈収賄」だ。そこには何らかの「利害」が働いているはずだ。
 日本国民はもっと贈収賄に敏感にならなければならない。たとえばNHKに就職するにはNHK関係者の子弟が有利だという噂がある。同じように官公庁の外郭団体に就職するには官僚の子弟か関係者が有利だという噂がある。そうした「噂」が日本には多すぎる。これも「忖度」ではなく「水心あれば魚心」という贈収賄ではないだろうか。贈収賄の成立要件を経済的利害関係だけに限定するのは「水ごろあれば魚心」の日本的悪しき習慣を助長するだけではないだろうか。

 公文書に関する規定は厳しくし、それに反する行為には厳罰を以て対応すべきだ。官僚たちの仕事の成果を文書化した「公文書」がいい加減では日本の基が揺らぎかねない。

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