(総理大臣は嘘を言っても良い)正しいことを言うのは、評論家の仕事である、とは驚く。

9月の自民党総裁選に、石破茂元幹事長が出馬表明した。立候補の届け出・締め切りはこれからだが、安倍晋三首相と事実上の「一騎打ち」である。
 まず、石破氏は「勇気ある政治家」だと思う。失礼を承知で言えば、勝算がほとんどないのに、あえて勝負を挑んだ。選挙後は「干される」かもしれない覚悟で出馬する政治家はそういない。
 出馬が噂されていた岸田文雄政調会長は、結局断念し、「安倍首相支持」を表明した。石破氏がいなかったら、安倍首相の無投票3選が決まる可能性が高かっただろう。そうなったら、自民党のために良くない。野党や左派マスコミはここぞとばかり「安倍独裁だ!」と大騒ぎしたに違いない。自民党の懐の深さを示すためにも、皮肉でなく、石破氏の勇気には敬意を表したい。
 そこを確認したうえで、石破氏をどう評価するか。私がなんとも違和感を覚えたのは「正直、公正、石破茂」というキャッチフレーズだ。安倍首相を意識したに違いないが、こう言われると、安倍首相が正直でも公正でもないかのように聞こえる。「モリカケ」問題で、安倍首相を攻撃した野党の印象操作にワルノリしている感がある。それとも、石破氏は本当に安倍首相が正直でも公正でもないと思っているのだろうか。もし「安倍首相は嘘つき」と思うなら、石破氏のスタンスは野党や左派マスコミと同じで、大問題だ。そのあたりはぜひ、選挙戦で明らかにしてほしい。
 石破氏はかつて自民党を離党した経歴がある。「自民党が野党に転落して一番苦しいときに、後ろ足で蹴って飛び出した人だ」と批判する総理経験者もいる。野党的立場をとるのに、ためらいがないのかもしれない。麻生太郎副総理兼財務相は「(石破氏は)派閥を解消すると言って無派閥の会(無派閥連絡会)をつくって、それを石破派に変えた。言ってることと、やっていることが違う」と痛烈に批判した。麻生氏ならずとも、石破氏の反論を聞きたいところだ。
 私が首をかしげるのは、石破氏は常に「正しいこと」を言う点である。憲法問題では国防軍創設を主張し、安倍首相の自衛隊を明記する改憲論に反対している。北朝鮮問題でも、米軍の核持ち込みを視野に、非核三原則の見直しを唱えた。それは現実的選択だろうか。そんな話をしていたら、いつまでたっても9条改憲は難しくなる。理想的であっても、できない改憲論を言うのは「形を変えた護憲派」にならないか。実際、石破氏は9条改正を後回しにする意向のようだ。
 正しいことを言うのは、評論家の仕事である。首相の仕事とは、正しい方向に向かって「今できることを1ミリ、2ミリでも前に進める」ことだ。うまくいったら、次にまた1ミリ進めばいい。改憲のような大仕事は、そうやって匍匐(ほふく)前進していくしかない。いきなり大改革しようとしたら、多くの人は不安になってしまう。それとも、石破氏の正直とは「正しいことを直球で投げ続ける」という意味なのだろうか。そうだとしたら、残念ながら現実の壁は厚い。首相の椅子は遠そうだ>(以上「夕刊フジ」より引用)

 上記論評を書いた長谷川幸洋氏を私は知らないが、まさしく御用評論家というに相応しい内容の論評だ。石破氏が総裁選に出馬を決心したのがそんなに気に入らないのか、というほど酷い論評だ。
 「正しいことを言うのは、評論家の仕事である」とは酷い言い様だ。もちろん政治家は正直でなければならない。「TPP絶対反対」と選挙でポスターを張り巡らし、政権を執るやTPP参加を打ち出すとは「正直」以前の公約違反だ。TPPだけではない。原発即時停止が選挙の争点になるや、「原発停止」を公約として選挙に勝ち、次々と再稼働している。

 安倍氏が嘘吐きなのは国民周知の事実だ。「いや、安倍氏は正直だ」とはいえないから「正しいことを言うのは、評論家の仕事である」と詭弁を弄している。ひょっとしたら長谷川氏は本気で「正しいことを言うのは、評論家の仕事である」と思っているのかもしれない。
 官僚が国会審議で大嘘を吐いたり、存在する「日報」を隠蔽しても日本のマスメディアはそれほど大騒ぎしなかった。民主主義国家の根幹を揺るがす由々しき問題にも拘らず、官僚たちの吐いた嘘は安倍氏が吐いた大嘘と比べれば騒ぐほどのものではなかったのかも知れない。

 それとも日本は「正しいことを言うのは、評論家の仕事である」という国に成り下がっているのかも知れない。日本を代表する大企業が大嘘の決算報告をしたり、厳密に排ガス検査したはずが碌に検査をしていなかったりと、嘘を吐くのが日本国民の標準仕様になったかのようだ。
 総理大臣が大嘘を吐いても、評論家が「政治家とは方向性さえ示せば良い」とは何事だ。TPP反対とTPP賛成は方向性が同じだとでもいうのか。
 こんな低能な評論家が跋扈するとは言論界も随分と落ちぶれたものだ。なぜ石破氏に「安倍氏のグローバルに対抗する理念として何を打ち出すのか」と質問する大局観も持ち合わせていないのだろうか。

 石破氏の「正直、公正、石破茂」とは中学校の生徒会長選挙のキャッチフレーズのようだ。生徒会長選で主張する程度のキャッチフレーズしか持ち出せないほど自民党の総裁選が劣化している証拠だ。せめて「国民の生活が第一」の政治を実現する。せめては消費税を5%に減税して経済成長によるインフレーターで国債を実質償還して、財政規律を経済成長の果実で取り戻す、くらいの政策を国民に提示すべきだろう。
 

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