「トランプ政権と距離を置くべきだ」という意見に賛成だ。
<安倍総理は、G7並びにその直前の首脳会談で、トランプ大統領に対して、おそらく次の3点を持ち出すことと思います。
トランプ氏の「米国ファースト」は狭隘な米国一国主義に陥っているようだ。米国の国益さえ守られれば他の国はどうなっても構わない、というエゲツナイまでの「米国ファースト」だ。
そのため中東の平和が危機に瀕しようと、米国のシオニストたちのご機嫌さえ取れればエレサレムに米国大使館を移転させても構わないし、イラン核合意を破棄して盟友国のフランスの面子を潰そうと構わない。だから日米同盟がどうであれ、トランプ氏は平気で日本の自動車に25%の関税を課すゾ、と脅してくる。
自由貿易はWTOの枠組みの中で動いている。世界各国で取り決めた貿易に関する約束事を、たとえ米国であろうと違反して勝手に輸入品に高関税を課してはならない。またそうした愚かなことはしないだろうと思っていた国際社会の常識をトランプ氏は簡単に覆した。
米朝首脳会談に安倍氏は日本人拉致問題を話題にして欲しいと懇願しているようだが、トランプ氏にとって優先課題は「米国ファースト」だ。つまりICBM開発を中止してもらえるなら他のことはそれほど急ぐことではない。中間選挙前までに一定の成果を見ればトランプ氏はそれ以上の無理難題を金正恩氏に押し付けることはない、とみるのが常識的だ。
安倍政権が完全に梯子を外されて、米朝平和交渉が進展することだってあり得る。トランプ氏の背後には400兆円とも440兆円ともいわれる北朝鮮復興事業の利権に喰いつこうとする連中が列をなしている。安倍氏に配慮するよりも仲間に配慮する方が優先される、というのは安倍氏は他の誰よりもご存知のはずだ。
なぜ安倍氏は北朝鮮のハンドルを握っている習氏と会談しないのだろうか。パイプがないというなら田中角栄氏以来の 伝統的な対中パイプを持っている小沢一郎氏に仲介の労を頼めば良いだろう。北朝鮮の体制が崩壊して最も困るのは瀋陽軍区(旧満州)を抱える中国だ。中国もまた対北朝鮮で日本の協力を切望している。
(1)北朝鮮との交渉においては、G7が結束する。
(2)その代わり、保護貿易、特に鉄鋼、アルミ、自動車の関税に関しては慎重になってもらう。
(3)北朝鮮に対しては、人道・人権問題の解決についても取り上げさせる。
(2)その代わり、保護貿易、特に鉄鋼、アルミ、自動車の関税に関しては慎重になってもらう。
(3)北朝鮮に対しては、人道・人権問題の解決についても取り上げさせる。
つまり、(1)と引き換えに、米国に(2)と(3)の譲歩を迫るということです。(2)に関しては、カナダ、日本に加えて欧州諸国も同調するでしょうから、6対1という多数をもってアメリカに迫るという構図もあり得ます。
仮に、トランプ大統領が(2)には同意せず、また、今回の北朝鮮との交渉の結果として(3)について全く進展がなかったような場合には、日本の国際的な立場と国益には大きくマイナスとなります。
それだけではありません。アメリカが仮に北朝鮮に対して譲歩し、「核廃棄には時間的猶予」を与える一方で「短中距離ミサイルは残る」「当面核弾頭は残る」ような結果となり、さらに在韓米軍の削減など東アジアのパワーバランスへの変化が起きるようでは、日本の「安全の保障」にも大きな影響があります。
さらに、そのパワーバランスの変化に対して、トランプ政権から日本の「自主防衛」を迫られて国論分裂に追い込まれ、その上に巨額な兵器購入まで強いられるようでは、平和国家という日本の「国のかたち」までが揺らいでしまいます。
そのような危険性を考えると、安倍総理は今こそトランプ政権と距離を置くべきです。ゴルフ外交を積み重ねたからといって遠慮は必要ありません。フランスのマクロン大統領にしても、あれだけトランプ大統領と「抱擁を重ねた」にも関わらず、結果的に忠告は無視され、イラン核合意を「蹴っ飛ば」されているのです。この特異な大統領にとっては「首脳間の個人的信頼関係」の演出など、そもそもディールのテクニックのひとつに過ぎないのです。
2016年11月以来、安倍総理がトランプタワーを訪問したり、ゴルフ外交を重ねてきたりしたのは、トランプ政権の「保護主義」とか「同盟国の安全保障責任放棄」といった危険な匂いを感じて、その影響を最小限にしようと苦心してきたのだと思います。それはそれで外交当局も含めて正当な努力だと思います。
ですが、今回のG7とシンガポールの局面はそれとは別です。明らかに日本の国益が大きく損なわれるようであれば、ズルズルと引きずられるよりは、距離を置く必要も出てきます。その場合は、他のG5諸国との協調が重要になりますし、これに加えて日韓、日中との丁寧な対話を繰り返すことで、東アジア全体の安定を確保することが必要になってきます>(以上「News Week」より引用)
北朝鮮の復興事業は中国の体制崩壊を緩和(ソフトランディング)する最後の機会だ。生産過剰で山と積まれた粗悪な鉄鋼やアルミを高関税を課す米国ではなく北朝鮮へ振り向けることで棚卸一掃大バーゲンが実施できる。
米朝首脳会談の実現が加速されている一因は金正恩氏の背中を押す習氏の働きによるところが大きいだろう。北朝鮮の脅威を払拭し、中国の海洋進出の圧力を封殺する機会が日本に訪れている。この機会を逃して、安倍氏はトランプ氏の足に縋り付いたままでいるのだろうか。