情実政治を日本国民は許さない。

学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部(愛媛県今治市)の新設をめぐり、県の文書に記載がある同学園の加計孝太郎理事長と安倍晋三首相の面会について誤った情報を与えたとして、学園側が謝罪した問題で、愛媛県の中村時広知事は2日、学園に建設補助金を出す今治市への財政支援について、「(見直しの検討は)一般的にはありうる」との考えを示した。
 獣医学部設置に関連し、県は学園に建設補助金を出す今治市に3年間で約31億円を補助する。すでに約14億円が支払われた。知事の発言は、県としての支援を見直す可能性に触れたものだ。
 学園は5月26日、「実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出した」とのファクスを県への説明なしに報道各社に送付。同31日に学園の常務理事でもある渡辺良人事務局長が県庁を訪れ、県幹部に謝罪した。これについて、知事は「(学園の)ナンバー2が虚偽の話をしたということなら、最高責任者が公に説明するのが当然のこと」と述べ、理事長の説明が必要との認識を示した
 さらに知事は、最近になって財政支援の妥当性について県内部で議論したことを明らかにした。謝罪を受けた県幹部からの報告などを踏まえ、一連の経過が検証されるなかで、「おかしなことがあった場合は、当然(今年度支出分の)返還を請求する権利は担保する」とも述べた>(以上「朝日新聞」より引用)

 加計学園の獣医学部新設に不適切な手続きと認可があった場合、地方自治体は国の新学部新設に関連して行っている財政支援を見直すというのに何ら違法性はない。地方自治体が大学誘致などに財政支援を行うのは大学新設に伴う経済効果が見込まれるからに他ならない。
 しかし実際に大学が設置された地域に企業誘致と異なってそれほど経済効果はない。雇用の拡大といっても学生相手の飲食業か不動産業が多少潤うくらいで、大学職員として採用される人数は知れたものだ。

 国が獣医学部で新しい獣医師を養成する、というのなら国家としてはメリットがある。しかし新設獣医学部が「単科大学」ならばいかにして新しい獣医師を養成するというのだろうか。
 文科省は新設獣医学部に国家戦略会議で打ち出した新学問をいかにして学生に学ばせるのかカリキュラムと教授陣を明らかにさせるべきではないか。それが「羊頭狗肉」ではないか、しっかりと検証する必要がある。

 そして前愛媛県知事が国会で参考人として述べた四国の獣医師不足を解消するのに必要な入学定員について、文科省は詳細に検討したのだろうか。160人の入学定員に190人以上の新入生を入れるのは私立大学として当たり前なのかもしれないが、獣医師養成機関として適切なのだろうか。
 獣医師学部定員として中四国学区では山大の30人と鳥取大の35人の計65人で長らくやって来た。それで中国地域としては別段獣医師不足に悩まされているという実情はない。四国がよほど獣医師不足に陥っているとしても、定員160人はどのようにして決めたのだろうか。

 今治市は愛媛県以上に加計学園に助成金を支出することになっている。建築費の半分96億円の2/3を今治市が持つようだから、その額は市民に対する様々なサービスを圧縮しなければ賄えない。そうしたことを今治市民は承知の上なのだろうか。
 さらに巨額な建築費に関して今治市議会は容認したようだが、今治市民も容認しているのだろうか。坪単価150万円を超える大学棟とはどれほど豪華な設備が盛り込まれているのか想像がつかない。なぜなら坪単価150万円とはタワーマンションの建築費に相当するからだ。

 森友学園の「建築費」でも明らかになったように、実際にかかった建築費と大阪府に補助金申請で提出した建築費に大きな乖離が見られた。実際にかかった建築費はどちらかと問題になり、籠池氏は詐欺に問われている。
 加計孝太郎氏は詐欺に問われないのだろうか。安倍氏の「腹心の友」なら何でもフリーパスということなのだろうか。同じ学校法人の新設疑惑だが、籠池氏と加計氏との扱いが大きく異なるのはなぜだろうか。

 権力者の個人的な情実が国事に関わるとは考えたくない。日本は法治国家であって、前近代的な人治国家ではないと思っている。しかし最高権力者が憲法でも勝手に「解釈改憲」して違憲立法でも何でも平気でやってしまう人物だ。かれなら「ボクちゃんの知り合いだからよろしく」と秘書たちに指示して情実政治をやりかねない。彼にとって立憲主義など「絵に描いた餅」ほどの意味もなさないのだ。

 そして愚かな最高権力者の情実政治を許容する自民党と公明党の国会議員たちもすべて同罪だ。彼らが首班指名し賛成したから安倍氏が総理大臣になっているのだから。
 国会議員の2/3以上が自公勢力で腐り切っている、と考えれば日本全体の2/3以上がくさっていることになる。だから各界で想像を絶する不祥事が相次いでいる、と考えられなくもない。名門企業東芝経営陣が腐り切っていたのには驚いたし、堅実経営で知られた名門企業の不祥事が相次いでいるのにも暗澹たる思いがする。日本はこのまま腐っていくのだろうか、と。

 方法は何であれ、認可されればすべてO.Kだ、ということにしてはならない。学生が入学して学んでいるから新設された加計学園獣医学部は存続する、と考えるのは余りに不謹慎だ。
 それとも情実政治のモニュメントとして今治市の丘に「加計学園」の看板を掛けた建物を残すというのも良いかも知れない。日本はそれほど腐っていたのだと、国民が忘れないために。

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