対米関係でトランプの米国に深入りは禁物だ。
安倍氏は10日にトランプ大統領とホワイトハウスで会い、会談した後にフロリダへエアフォースワンでトランプ氏と伴に移動してトランプ氏所有のゴルフ場でゴルフをするという。連泊するホテルもトランプ氏の所有するものだという。
異例尽くしの厚遇だが、トランプ氏は用心した方が良い。激情に任せて相手を平気で罵る御仁のようだ。同盟国のオーストラリア大統領と電話会談中にオバマ前米国大統領が約束した移民の引き受けを迫られて激怒し、45分の会談予定を僅か20分で電話を切ったという。
メキシコの大統領とは国境に築く壁の2兆円を超える費用負担の件でメキシコ大統領は負担を拒否し、会談する予定をキャンセルしてしまった。メキシコはカナダとともに米国とNAFTAを結ぶ「自由貿易圏」を形成する友好国だ。米国の安全保障にとっても必要不可欠な国に違いない。
そのメキシコ大統領をレスペクトしない態度は傲慢不遜というべきだろう。相手の立場も配慮しながら冷静に交渉する、という大人の知恵を持たない、ビジネスライクに国際関係を考えるのは極めて危険だ。
世界のどの国も一国だけで自己完結する国はない。どの国も必ず他国と国際関係の中で取引(交易)を行い、人事交流を行い、友好関係を維持している。独裁政権の北朝鮮ですら国交を開いていない国は僅かに26ヶ国で、166ヶ国と国交を結んでいる。
米国がいかに大国といえども、米国一国だけでは成り立たない。世界各国と友好関係を結ばなければ米国の安全は保てない。ブッシュJRの時代から中東で紛争を繰り広げたため、米国は紛争疲れに陥っている。やっと英雄・米国に拍手を送っていた米国民も「他所の世話焼きはいい加減にしようや、それより米国民のことを考えてくれ」という世論に支持されて大統領になったトランプ氏は国内志向の政治を優先せざるを得ない。
トランプ氏の外交は対立から融和へと舵を切り、対ロ、対中政策を転換するのは明白だ。ニクソンショックの二の舞が起こる確率は高いとみるべきだ。
一緒に会食してゴルフをしても、国際関係をビジネス感覚で判断して切り捨てることも意に介さないだろう。千切れんばかりに尻尾を振っていればポチの頭を叩かないだろう、と安倍氏は考えているのだろうが、世界を股に掛ける辣腕の不動産業者には通用しないだろう。
このブログで何度も書いてきたが、米国はプラグマティズムの国だ。終戦後の米国の覇権に役立つと思えば平気で原爆を都市に投下しても平気な国だ。その後に一言も謝罪していないどころか、様々な言い訳を用意して正当化までしている。
単眼の単細胞外交ではダメだ。徳川家康並みの権謀術数を日本の首相は身に着けるべきだ。