犯罪報道のあり方。

<高畑裕太さん事件についての弁護人の説明

今回、高畑裕太さんが不起訴・釈放となりました。

これには、被害者とされた女性との示談成立が考慮されたことは事実と思います。しかし、ご存じのとおり、強姦致傷罪は被害者の告訴がなくても起訴できる重大犯罪であり、悪質性が低いとか、犯罪の成立が疑わしいなどの事情がない限り、起訴は免れません。お金を払えば勘弁してもらえるなどという簡単なものではありません。

一般論として、当初は、同意のもとに性行為が始まっても、強姦になる場合があります。すなわち、途中で、女性の方が拒否した場合に、その後の態様によっては強姦罪になる場合もあります。

このような場合には、男性の方に、女性の拒否の意思が伝わったかどうかという問題があります。伝わっていなければ、故意がないので犯罪にはなりません。もっとも、このようなタイプではなく、当初から、脅迫や暴力を用いて女性が抵抗できない状態にして、無理やり性行為を行うタイプの事件があり、これは明らかに強姦罪が成立します。違法性の顕著な悪質な強姦罪と言えます。

私どもは、高畑裕太さんの話は繰り返し聞いていますが、他の関係者の話を聞くことはできませんでしたので、事実関係を解明することはできておりません。

しかしながら、知り得た事実関係に照らせば、高畑裕太さんの方では合意があるものと思っていた可能性が高く、少なくとも、逮捕時報道にあるような、電話で「部屋に歯ブラシを持ってきて」と呼びつけていきなり引きずり込んだ、などという事実はなかったと考えております。つまり、先ほど述べたような、違法性の顕著な悪質な事件ではなかったし、仮に、起訴されて裁判になっていれば、無罪主張をしたと思われた事件であります。以上のこともあり、不起訴という結論に至ったと考えております。

平成28年9月9日
弁護士 渥美陽子
弁護士 小佐々奨

※高畑祐太さんは、心身ともに不調を来していることから、しばらくの間入院されるということです。報道関係者の皆様におかれましては、上記の内容を鑑み、過剰な報道は慎んで頂きますようお願い申し上げます。>(以上「弁護人の声明文」より引用)

 高畑某が「婦女暴行」容疑で不起訴となったことから、事実関係はおそらく弁護人が声明を出した通りだったと考えられる。つまり最初から女性の意思を無視した暴行なら示談があったとしても起訴されるのは確実で、罪が軽減されるものでしかない。
 それが不起訴になったということは、犯罪性が極めて問い難い事案だということだ。当初は弁護士が声明で述べている通り、合意の上で始まり、途中から高畑某が暴走したと考えられる。それにより女性は「暴行された」と認識したのだろう。

 そうすれば「歯ブラシを持ってきてくれ」と女性をおびき寄せて、強引に部屋へ引っ張り込んだ、という警察が当初説明した事件経緯はウソだったということになる。それを一切疑いを持たず高畑某を犯罪者として報道したマスメディアの「推定無罪」の人権意識は一体どうなっているのだろうか。
 警察や検察が垂れ流した「捜査情報」を真実であるかのように報道した責任は一体どうなるのだろうか。高畑某のマスメディアにより侵害された人権はいかにして回復するつもりだろうか。高畑某が受けた精神的・経済的損失を償うことが出来るのだろうか。

 同様の警察・検察の「捜査情報」を垂れ流して人権攻撃を延々と三年有余も続けたことがあった。言わずと知れた小沢一郎氏への「政治とカネ」プロパガンダ事件だ。それにより小沢氏は掴みかけた首相の椅子を諦めざるを得なくされた。
 それに対してマスメディアは一切謝罪も補償も賠償も行っていない。あたかも検察の捜査情報をそのまま垂れ流したのだから、マスメディアには責任がないかのように素知らぬ顔をしている。果たしてそれで良いのだろうか。

 私は陸山会の収支報告書の虚偽記載の経過が明らかになった時点で、土地取引で決済と登記との日付が異なるのは実務では多々あることだと指摘した。だから当初から検察情報は「捜査経過の故意の漏洩」に当たり、それをマスメディアがダダ漏れに報道するのは「推定無罪」の人権擁護の立場を逸脱したものだと批判してきた。
 今回も高畑某の「推定無罪」の原則は守られず、捜査情報の漏洩をダダ漏れに報道したマスメディアの程度の低さに呆れるばかりだ。そして「不起訴処分」となった今、マスメディアはいかにして責任を取るのだろうか。テレビでシタリ顔で「高畑某には以前からそうした性癖があった」などと評した俄か評論家たちはいかにしてテレビという公器で発言した責任を取るつもりだろうか。

 この国のマスメディアは腐り切っている。そしてマスメディアによって食っている連中も腐り切っている。高畑某が逮捕された段階では事件性も事件の経過も何も分かっていない。ただ「被害者」の告発と警察の「捜査情報」があるだけだ。
 それらをマスメディアが報道すれば被害者の発言と警察情報をすべて是認して、裁判官にでもなったつもりで国民は高畑某を勝手に裁いてしまう。いわば偏った情報で集団リンチを仕出かしたのだ。

 マスメディアにはそうした危険性がある。それは異なる立場を一切報道しないで国民を誤った方向へと誘導する、という危険性だ。英国のEU離脱はグローパル化を是認する立場からすれば飛んでもないことだ。「ヒト、モノ、カネ」を国境をなくして自由に移動させるのがグローバル化だから、英国のEU離脱はそれに反する。
 しかし圧倒的英国民は「ヒト、モノ、カネ」の自由化よりも「国民の生活が第一」の政治を望むのが当たり前だ。1000兆円を超える国債残は「国」の借金ではなく、「政府」が国民から借りた借金だ、という事実一つとってもマスメディアは一切報道しない。複式簿記で国家経営を表現すれば簡単に判ることでも、マスメディアはそうした作業をして見せることすらしないで、財務官僚たちの増税圧力の道具と化した「1000兆円を超える国債残」を国民に支払え、と勘定書きを国民に回して恥じない。

 高畑某の「婦女暴行」は不起訴になったが、マスメディアによる高畑某への犯罪解決は始まったばかりだ。「推定無罪」を無視して高畑某の犯罪をあげつらったマスメディアや登場したコメンテータたちはいかにして毀損した高畑某の人権を償うつもりだろうか。そして犯罪報道により高畑某が受けた精神的・経済的損害を償うつもりだろうか。


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