リオオリンピックの陰で深刻な事態は進行している。

<東京電力福島第一原発の汚染水対策として1~4号機を「氷の壁」で囲う凍土壁について、東電は18日、凍結開始から4カ月半で、なお1%ほどが凍っていないと原子力規制委員会の検討会に報告した。地下水の流れを遮るという当初の計画は達成されておらず、規制委の外部有識者は「破綻(はたん)している」と指摘した。

 東電の報告によると、3月末に凍結を始めた長さ約820メートルの区間の温度計測点のうち、8月16日時点で99%が零度以下になったが、地下水が集中している残りの部分はまだ凍っていないという。東電は、セメントなどを注入すれば凍らせられると主張した。

 凍土壁の下流でくみ上げている地下水の量は、凍結開始前とほとんど変わっていない。外部有識者の橘高(きつたか)義典・首都大学東京教授は「凍土壁で地下水を遮る計画は破綻している。このまま進めるとしても、別の策を考えておく必要がある」と指摘。検討会は、上流でくみ上げた場合の地下水抑制効果の試算などを示すよう東電に求めた>(以上「朝日新聞」より引用)

 ローマ市民を「パンと見世物」で充足させている間に、政治が堕落したのを彷彿とさせる連日のオリンピック報道だ。それしか日本で報道する価値のある出来事は起こっていないかのような錯覚を覚えさせる。
 しかし実際は朝日新聞の報じる「当土壁はツイン完全凍結せず」といった放射能汚染水を出さない、という福一原発事故による放射能漏れを遮断する基本的な「土木工事」すらままならないという低レベルな事態が起こっている。

 このブログで当初から「凍土方式」では駄目だと何度も書いた。なぜなら凍土方式は矢板を打つなどの大型重機の入らないトンネル内の漏水に対処する「応急措置」に過ぎないからだ。
 しかし地下水を止めるのは一年や二年のことではない。廃炉を完全撤去する場合は完全撤去の工事が完了するまでの三十年程度か、あるいは石棺化した場合は殆ど永遠に、地下水を止める堰でなければならない。凍土方式は液体窒素をパイプで地下に注入して凍らせ、それを堰として地下水の流入を止めるというもので、一年や二年といった短期の場合には適しているが、数十年ということになればパイプの劣化や液体窒素を送り続け循環させるという膨大なコストを考えれば現実的でない。

 しかしなぜか東電や政府はこの現実的でない「凍土方式」を選択して結局失敗した。この間五年以上も経過し、放射能汚染された地下水はダダ漏れに太平洋に流れ出ている。
 その太平洋の放射能汚染は深刻な事態を引き起こしているはずだが、この国のマスメディアは「放射能汚染水は湾内に留めている」という政府発表を無批判に報道している。簡単な理屈で、溶解した原子炉の傍を流れて汚染されたすべての放射能汚染水をその下流の井戸で汲み上げられるものではない、と考えるのは常識だ。汲み切らなかった地下水は海へ流れ出ている、と考えられるが、日に日に海へ流出している放射能汚染水が湾内にすべて留まっている、というのなら一体湾内の汚染水はどの程度の量になっていなければならないか、単純に考えても解るはずだ。

 つまり放射能汚染水は福一原発の湾内に留まっている、という政府発表は嘘で、太平洋は日に日に放射能汚染水で汚染されている、と考えられる。「凍土方式」を選択した東電や政府の責任は重大だ。その間の経過した時間と、かかった数百億円もの経費と、日々の放射能汚染水の漏洩といういう損失を誰が被るのか。
 繰り返し繰り返しオリンピックの決勝シーンを垂れ流すのも結構だが、マスメディアの役目として果たすべき任務は他にもあるはずだ。国民に対して「凍土方式」が破綻しているのをキッチリと報道しないのはマスメディアの「死」を意味する。

 福一原発の放射能汚染水は「完全にコントロールされている」とオリンピック招致国際会議で安倍氏が大ウソを吐いたのは何年前のことだっただろうか。現在も地価汚染水すらコントロールされていない、ましてやメルトダウンした核燃料の取り出しどころか、その所在すら明確でないという事態を安倍氏は正確に国際社会に説明すべきではないだろうか。なぜから、放射能汚染物質の漏洩は日本だけの問題ではなく、地球規模の大問題だからだ。
 その基本中の基本たる地下水の流入を止める単純な土木工事で失敗しているという事態に対して、東電も政府も正確に誠実に公式発表しないという不誠実さはどのように考えればよいのだろうか。

 日本国民も「パンと見世物」に驚喜乱舞している場合ではない。その陰で一体何が起こっているか、目を見開いて身の回りの現実を見詰めようではないか。


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