根本のところで箍が外れ始めた社会。

<ニューヨーク・タイムズ紙によると、ISは今年初めから、西洋の支持者に自国でテロを起こすことを促す戦略に転換。ソーシャルメディアなどを使い、社会に不満を持つ世界中の若者らに支持を拡大しているとみられる。
 米ジョージ・ワシントン大の研究グループが発表した報告書によると、ISに関係する容疑で15年は米国内で56人が逮捕された。01年以来、テロに関連する年間の逮捕者としては最多で、報告書は「前例のないペースで(ISの)リクルート活動が進んでいる」と警告していた。
 11月のパリ同時多発テロを受け、米捜査当局も警戒を強めていた。だが、サイード・ファルーク容疑者(28)は犯罪歴がなく、捜査当局の監視対象でもなかった。テロを起こす可能性があるとみていた人物と電話などで連絡を取っていたが、相手は重要な監視対象ではなく、最後の接触からも1カ月たっていた。この程度では捜査網に引っかからないのが現状だ。
 また、妻のタシュフィーン・マリク容疑者(29)が、ISのバグダディ指導者に忠誠を誓うメッセージを別名でフェイスブックに書き込んでいたことが判明。FBIが、背景などを調べている>(以上「毎日新聞」より引用)

 先進欧米社会の国民の中に澱のように溜まっている「不満」に点火させ爆発させるきっかけをISがソーシャルネットを使ってメッセージを送っているという。そうするとIS関連のテロを中東帰国者で識別しようとしている治安当局がテロを事前に防止するのはますます困難になる。
 国民の「不満」はいつの時代にもある。最貧国では「飢え」という不満があり、先進諸国では国民の多くが拡大化する「格差」という不満が発火点に達しているようだ。いつでも発火して他の人を傷つけ殺害するのを躊躇しない、という極めて危険な水域に達しているという現実を政治家は見るべきだ。

 先進諸国の「不満」は政治である程度解決できる。国民相互間で拡大する格差を是正するにはそうした処方箋は既にある。日本にも格差是正のために所得税には超過累進所得税が制度としてあり、極めて厳しい規制により構築されていた派遣業法が存在した。
 しかし自公政権は個人消費を直撃する消費増税を実施し、さらに増税すると「確約」している。それに引き替え、景気とは一切かかわりのない法人減税を実施して実効法人税率を来年は20%台に引き下げるという。その財源として赤字企業にも課している「法人割」の税を増税するという。安倍自公政府は確実に赤字企業潰しを始めたと判断するしかない。

 米国には「銃社会」に対する確かな「拒否」反応が起きている。大量殺人を誰でも起こす可能性を「銃」は与えている。決断さえすれば、自らの命を投げ出しさえすれば、何の謂れもない他人でも身内でも誰でも、引鉄を引くだけで瞬時にして殺害できる。そうした理不尽さに米国民の多くが嫌悪している。
 しかし全米ライフル協会は銃社会で自らの身は自らが守れ、相手が銃を撃ってきたら撃ち返して殺害することが安全確保の道だ、と主張している。それは国家としての米国の主張と酷似している。

 日本の場合は米国のケースと根本的に異なる。日本は銃社会でないが、高度密集化した人口を37万㎢の国土が抱え込んでいる。十分なメンテナンスがなければ密集化した交通網はたちまち凶器と化す。三年前の笹子トンネル天井板崩落事故は記憶に新しいところだが、最近では新型山手線電車が不具合を生じて1日からの運行を延期した。
 かつての日本では考えられないことだ。笹子トンネル事故では三年たった今も責任者が司法で裁かれていない。新型車両投入準備が完璧でなかったという事態はかつてのJRでは考えられないことだ。新幹線でも事故に到らないが列車部品の落下事故が多発している。それもかつては考えられない事故だ。

 責任の所在が不明確化する「丸投げ」がそうした事故を誘発しているとしか考えられない。現場で働いている労働者のほとんどがJR社員ではない。下請けの下請けなどで、多くが派遣労働者だ。部品の規格や作業動作の意味をしっかりと叩き込まれることもなく、彼らは機械的に一連の作業に従事しているのだろう。
 そろそろ新幹線の路床は耐用年数を過ぎて多くの高架橋がモルタルなどの剥落を起こしている。それはトンネル内部でも同じことだろう。首都高も走ってみれば継ぎ接ぎだらけでマトモな高速道路とは言い難い。安倍氏は600兆円GDP実現へ向かって経済成長だ、とぶち上げたが、そうした勤労者余力がこの国の何処にあるというのだろうか。

 人口は年間25万人減だが、勤労人口は百万人規模で減少している。そこで外国人労働者移民というが、日本国民のどれだけの人たちが外国民移民を歓迎しているだろうか。そもそも日本国民の文化は欧米人の文化と異なり、外国移民労働者に家政婦などとして使役できるだろうか。
 多くの外国人労働者移民を受け容れたスウェーデンやドイツやフランスがどうなっているか、元々移民国家の米国社会がどうなっているか、我々は子細に検討すべきだ。そうすれば外国労働者移民策に用いる予算があるならば「子ども手当」を充実する方が未来の日本にとって必要だと分かるはずだ。

 米国政府や日本政府が目指しているのは1%への奉仕であり、企業への奉仕だ。それでは国民間格差が一層拡大し、国民に「不満」が鬱積するだけだ。日本が進もうとしている国家・社会モデルの米国は根本のところで間違っている。そして安倍自公政権もチマチマとした軽減税率議論にうつつを抜かして、財務官僚に対前年比増の国家予算を未だに組み続けられて、「予算が足らない、増税だ」と洗脳されて国民イジメに狂奔している。この国の政治も根本のところで間違っている。


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