TPP大筋合意はJA北海道だけでなく、すべての国民の問題だ。

 TPP大筋合意で抗議の声を上げているのはJA北海道だけだが、TPPは農産品、ことに酪農製品関係者だけの問題でなく、すべての国民の大問題だ。なぜなら米国のハゲ鷹投機家たちが狙っているのは日本の年額40兆円近い医療保険制度そのものだからだ。
 その医療保険制度を破壊する手掛かりはまず混合医療にみられる。富める者はより高度な医療が受けられ、貧する者は医療の恩恵に浴することなく死を待つだけ、という社会の到来だ。米国はオバマ大統領が「オバマケア」と称する公的皆保険制度を導入しようとしたが、保険会社を中心とする反対と彼らが資金提供してマスメディアで「自由な社会」「結果責任」という米国民の好きな言葉をちりばめたプロパガンダを全米規模で行って世論操作に成功して導入阻止を果たしている。

 次に標的にされるのは間違いなくテレビ放送電波だ。テレビキー局を僅か数社で独占している現行制度は「独占禁止法」に反し、米国資本の新規参入を阻んでいる、との論理で攻めて来るだろう。その時になってテレビ局の支配会社・全国紙が慌てて反対に回っても遅い。ISD条項を発動されれば政府も無傷では済まないだろう。
 投資家が不利益を被った企業だけでなく、相手国政府の責任までも問えるのがISD条項だ。しかも、その提訴を審査するのは世界銀行の一部局だ。世界銀行の総裁は歴代米国人で独占され、米国有利の判断が示されるのはこれまでのISD提訴の裁定から明白だ。現行年金制度も米国保険会社の「年金保険」の商売を邪魔する非関税障壁だ、とISD条項により提訴されれば損害賠償と制度改変を迫られる可能性は高い。

 米国社会がそっくり日本に持ち込まれることを日本国民は覚悟すべきだ。生活保護費の支給ではなくフードスタンプの支給になるのも覚悟すべきだ。貧者からも徹底して搾り取る社会が米国社会だ。金持ちはさらに金持ちになる社会だ。
 新聞各社の「再販制度」もISD条項に対象にされることも覚悟すべきだ。そうした日本独特の制度はすべてハゲ鷹投機家たちの金儲けの対象とされることを予測しておかなければならない。全農は米国穀物メジャーの要請により解体したが、米国穀物メジャーは解体されていない。そうした「不平等条約」がTPPの正体だ。

 無批判にTPPが批准されると自動車や家電などの輸出が促進される、という20年も前の旧モデルで論評するテレビMCやコメンテータには驚く。これほどの円安でも輸出が伸びなかった理由は解っているではないか。国際分業とグローバリゼーションの名の下に企業の海外展開が促進されて、既に国内製造部門は大きく空洞化している。米国で販売している国産車は米国生まれだ。TPP参加国で日本の自動車や家電品を購入する購買力のある国は米国以外にない。それならTPPに参加しても輸出が伸びると期待する方が愚かというべきだろう。
 その代り、日本を格好の農産品輸出国と見ている農業大国は米国の他にオーストラリアやニュージーランドなどがある。日本は攻撃される産業の方が圧倒的に多いことを知るべきだ。TPPに参加して良いことは殆どないことを経済評論家諸氏は知っていて、ステレオタイプの「自動車や家電品は輸出が伸びる」とテレビで大嘘を平気で吐いている。彼らがいかに腐り切った御用評論家か推して知るべきだ。

 農産品の輸入は国内農業生産者を農業から撤退させることになる。既に高齢化している生産者たちは農機具を措いて、年金暮らしに入るだろう。それは日本農業の安楽死を意味する。
 テレビなどのマスメディアは「輸出農産品」というレアケースを懸命に宣伝するが、それで日本の農業が国の自給率を引き上げることにならないのは明らかだ。農産品の、とりわけ穀物の自給率は安全保障に直結する。安倍自公内閣は世界で武力行使することがが安全保障に必要だと「戦争法」を強行成立させたが、それは日本国民の命を直接的な危機にさらすことに他ならず、TPP参加は餓死の危機に日本国民を常に曝すことに他ならない。それは目に見えない米国支配が日本国民の全員に完璧に行きわたることだ。これほど怖いことが他にあるだろうか。TPP大筋合意はJA北海道だけでなく、すべての国民の問題だ。


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