野放図な派遣業の緩和により「タコ部屋」「ピンハネ」が横行する。

<東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う福島県楢葉町での除染作業に作業員を派遣し、労働者派遣法が禁ずる業務に従事させたとして青森県警は7日、同法違反の疑いで、建設会社社長で青森県大間町議の佐々木信彦容疑者(37)=大間町大間内山=ら4人を逮捕した。県警によると、容疑をおおむね認めている。

 4人の逮捕容疑は2013年11月から14年2月までの間、楢葉町で国の直轄除染を受注した下請け業者に自社の従業員計11人を派遣し、表土はぎ取りなどの建設業務をさせた疑い。

 労働者派遣法は、労働者の安全に責任を持つ観点などから、建設業務への派遣を禁止している。

 除染作業に当たった派遣労働者から14年5月、青森労働局に相談があり発覚。労働局がことし6月に県警に告発していた>〔以上「共同」より引用〕

 そもそも派遣業者は「ピンハネ」ではないのか。派遣労働者を登録させて、人手を必要としている企業の要請により派遣労働契約を締結して登録している人を派遣し、その対価からピンハネした残額を派遣登録者に支払う。どこが以前禁じていた「タコ部屋」「ピンハネ」と異なるというのだろうか。
 かつて許可した派遣業とは「通訳」や「ITキーパンチャー」などといった特殊で特別な技能の持ち主に限られていた。しかし現在では単純生産労働者までも派遣の対象とされ、以前は三年を超えて同一人を使用する場合は正社員とすることという縛りがあった。しかし現在はそうした縛りもなくなり、派遣社員は永久に派遣社員として労働現場とは別の派遣業者との雇用関係で勤労に従事するという責任の所在の不透明な立場に身を置き続けることになる。

「同一労働同一賃金」という大原則があると同時に、「同一労働現場同一雇用契約」というかつて存在した大原則が崩壊して、日本の労働者の立場は大きく毀損された。それにより企業の内部留保は最大となっているが、労働分配率は依然として低下したままだ。
 企業が最大利益を手にして、経営者が株主に認められて膨大な報酬を手にする、というのは欧米の考え方だ。日本の企業経営者はかつて企業の社会的責任や地域への貢献ということに心を砕いていた。それにより地域文化は地域行に負うところが大きかった。

 平気で地域貢献に背を向け相次いで企業が生産拠点を海外へ移転させるようになって、国内産業の空洞化は急速に進んでいる。そうした風潮を助長しているのも簡単に労働力の調整が出来る派遣労働者の増大によるところが大きいだろう。海外展開とは無縁な銀行の窓口業務従事者でさえ、多くは派遣労働者だという。
 連合などがこうした事態に対して闘争を挑まないのはなぜだろうか。彼らは正社員からなる労働組合員で構成され組織だから、派遣労働者問題は自分たちと関わりのないものだとでも考えているのだろうか。そうだとしたら愚かというしかない。派遣業法が緩和されるのと並行して、日本の労働分配率が低下しているという現実を危機感をなぜすべての労働者で共有できないのだろうか。それとも組合専従は別の感覚の持ち主なのだろうか。

 危険な現場に派遣されているのは除染労働者だけではないだろう。福一原子炉解体が始まれば、大量被爆により労働者が短期間しか労働従事できなくなり、大量の代わりの労働者が必要となるのは火を見るより明らかだ。
 そうした福一原発で働く人たちの多くは派遣労働者だ。高額な労働報酬を東電が支給しても、儲けるのは「派遣業者」だけという現実を政治家諸氏は御存知なのだろうか。被ばく線量が一定に達すれば派遣切りになると判れば、故意に被ばく量の申告を低くして、以後の人生を放射能による健康被害に苦しむことになる。それを保障するのが正社員の安定した雇用関係ではないだろうか。派遣業法の野放図な規制緩和によりこの国で何が起こっているのか、国民はマスメディアに頼ることなく自分の耳目で知るべきだ。


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