政治家に屈するマスメディアは偏向報道そのものだ。

<朝日放送(大阪市)は16日までに、二つの情報番組でコメンテーターを務めていた藤井聡・京都大大学院教授の出演を当面見合わせることを決めた。一方、「大阪都構想」を掲げる大阪維新の会(代表・橋下徹大阪市長)は16日、藤井氏の出演は政治的な公平性を求める放送法に反すると、放送倫理・番組向上機構(BPO)に申し立てた。

 藤井氏は5月の住民投票の際に大阪都構想に反対の立場で発信を続け、反都構想の急先鋒(せんぽう)として知られる。朝日放送広報部は「11月の大阪府知事・大阪市長のダブル選の投票日まで間もなく1カ月となることから、16日までに藤井氏と話し合いをし、出演見合わせを決めた」と説明。大阪維新の申し立てについては「出演見合わせの決定とは無関係」としている。

 田島泰彦・上智大教授(メディア法)は「(放送局の対応は)政党などの主張をそんたくしたように見える。公平性の確保には多様な意見を紹介すればいいわけで、出演見合わせという萎縮の方向はメディアとして好ましくない」と話した>(以上「毎日新聞」より引用)

 政府や地方自治体もマスメディアのスポンサーとして報道機関に各種の宣伝を依頼している。つまり政府や地方自治体は存在自体がマスメディアに一定の影響力を有していることは否めない。
 マスメディアがそうした行政権力を握る政権与党や地方自治体の首長たちの意向に自然と配慮する傾向にあることを自覚して、むしろ「行政権力」に対して批判的な論理を展開することが有権者に対して公平な報道機関のあり方ではないだろうか。

 それでなくても地方自治体は広報紙を自治体組織を使って毎月配布して地方自治体の考え方を宣伝している。そこには地方自治体への公平・公正な批判の目は全く存在しない。宣伝のやりたい放題だ。
 マスメディアは地方自治体が全戸に配布している行政機関の広報紙に対抗すべく地方の情報を収集して分析し批判すべきだが、そうした活動は全国紙の地域版にほとんど見られない。多くは出来上がったハコモノの賑々しい落成式とその写真ばかりだ。

 たとえば40年前に大三セクで建設した「駅ビル」を解体したとする、その跡地に再び「新駅ビル」を建設する、という広報だけを「ニュース」として掲載するのではマスメディアとしての役割は殆ど放棄しているといわざるを得ない。なぜ建設後たった40年で解体する事態に到ったのか、その原因は何かを検証しないで、解体する駅ビルと同程度かそれ以上の床面積のビルを「市の玄関口の顔」として必要だ、という情緒的な理由の地域エゴだけで実施した場合、再び駅ビルは閑古鳥の巣食う場となり、投資した費用対効果のない施設に成り果てるだけだ。

 三角屋根の駅舎を解体して駅ビルを建設した昭和40年代から昭和50年代にかけて、駅ビルに飲食店や商店のテナントが入り、御客で賑わっていたが、やがてお客の数が減少しテナントが次々と撤退して無駄な空間だらけの幽霊屋敷になって行った原因をしっかりと検証しなければ新駅ビルを建設してもお客は戻ってこないだろう。
 しかし全国紙などのマスメディアは地域版にすら、しっかりとした検証記事は皆無だ。ただ「地域住民の声」だからとして市長が新駅ビルの建設を決断したという紹介記事が出るだけだ。市長は駅ビル建設を事業主体として決断するが、自分のカネを出すわけではない。地方債を起債して市民の税金を使うのだから、自分のポケットは傷まない。そして行政をチェックすべき議会もほとんど機能していないのが全国地方自治体の現状だ。

 行政やマスメディアは鉄道駅周辺の「昼間人口」の減少になぜ着目しないのだろうか。地方都市の駅周辺が寂れてシャッター通りになっている根本的な原因は「昼間人口の減少」にある。つまり地方都市から各企業の支店や出張所が相次いで撤退したからだ。
 格好の例がNTTだ。あなたの町の駅前の一角にかつての電電公社ビルが建っていないだろうか。しかし現在はNTTの窓口すら閉鎖されて、かつていた数百人の社員も広域圏の一支店に集約されて、地方都市からいなくなってはいないだろうか。そうした事例が保険会社や各種企業の営業所が閉鎖されて、雑居ビルの上階は空室になっている、というのが地方都市に共通した風物詩ではないだろうか。

「昼間人口」が減少すれば購買力が減少するのは当たり前だ。そして「昼間人口減」は飲食街の「夜間人口減」をももたらす。そうして地方都市は衰退し、減少した利用者数に合わなくなった駅ビルはスカスカの幽霊屋敷になってしまうのだ。
 かつての繁栄だけを追い求めて「夢よ再び」と規模だけは旧駅ビルを上回るガラス張りの新駅ビルを建設しても、病理の根本を治癒していない地域活性化の処方箋は建設業者の瞬間的な活性化だけで花火として輝いてすぐに闇夜に戻る。そうした結末の見えている公的事業を、しかし批判するマスメディアは皆無だ。

 大阪都構想が行政区分の変更だけの代物で、市が消滅した代わりにより多くの区が出現するという「モグラタタキ」ゲームと同じ現象でしかないことを、なぜ看破しないのだろうか。それを看破して舌鋒鋭く解説しているのが藤井教授だ。橋下氏は「政治ごっこ」の遊び道具と化した大阪都構想を弄繰り回して安倍自公政権へ向くべき国民の批判の目を逸らしているだけだ。そうした意味で、橋下氏の「大阪維新の会」は自民党の補完政党だ。
 大阪府民は「いい加減にしいや」と怒るべきだ。橋下氏が大阪を引っ掻き回しだしたここ数年間、大阪の行政は大阪復活の狼煙となっているのかを検証すべきだ。ABC放送が橋下氏たちの意向により藤井氏に一時休憩を申し渡したのであれば、マスメディアに対する権力者たちの介入だと批判の声を他のマスメディアは一斉に上げるべきだ。安倍氏とその仲間たちは自分たちに対する批判の存在を許さない独裁者の傾向が著しい。それは民主主義にとって危険極まりない。


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