地域のことは地域で決める。

<11日に投開票された知事選で、国政転身のために辞職した古川康前知事(現・衆院議員)に代わる新しいリーダーに無所属新人の元総務省過疎対策室長・山口祥義さん(49)が選ばれた。古川前知事が初当選した2003年4月以来の保守分裂選挙。山口さんは自民党の支持団体「県農政協議会」や同党の一部県議らの支援を受け、いずれも無所属新人の前武雄市長・樋渡啓祐さん(45)(自民・公明推薦)、九州大教授・島谷幸宏さん(59)、農業・飯盛良隆さん(44)を退けた>(以上『読売新聞』引用)

 佐賀県知事選挙で武雄図書館に全国展開の本屋を指定管理人に定めて、スターバックスを併設するなどの話題を集め、自公党本部の支援を得た樋渡前武雄市長を退けたのは意味のあることだ。かねてから武雄市方式の図書館運営のあり方には異論があった。
 図書館はただ単に閲覧者を集めれば良いというものではない。現在は何処の図書館も定年退職後の老人たちで溢れている。それはそれで良いのだが、もっと利用して頂きたいのは地域の小中学生ではないだろうか。それなら本屋による運営は本来のあり方とは外れるし、ましてやスターバックス併設は図書館本来のあり方と大きく乖離するものだ。

 スターバックス併設により「読み聞かせ」や「読書会」ゴーナーの部屋が潰されたと聞いている。ボランティアや司書たちの活躍により根付いていた「本と子供たちを触れ合わせる」場が縮小されては元も子もない。素より、図書館は営利を求める場ではない。費用対効果は確かに運営の要素の一部をなすだろうが、それがすべてであってはならない。
 小学校にも英語教育を導入するというが、表現すべき内容も未熟なまま外国語言語教育だけを先行させるのは感心しない。国語の読解力と表現力が備わらなければ微妙な心の襞や繊細は自然を表現する言語としての日本語が砂地に吸い取られるようにして欠落していくのではないかと危惧せざるを得ない。算数や理科などが苦手な子供たちは、実は算数や理科などの理解よりも読解力不足が原因だといわれている。

 そうした図書館のあり方もさることながら、佐賀県知事選挙は地方と国会議員が大きな顔をする本部との軋轢であった。そして地方が本部に反旗を翻して見事に勝利した。この意義は大変大きい。
 地方自治体でも平成の大合併により大地方自治体が誕生した。それが一つの地方自治体を形成するのはいかに荒唐無稽な地勢であれ規模であれ、地方自治体として一つの議会ですべての案件を決議していく。そうすれば議員数の多い都市部の意見により周辺部の元町村のことまで決められてしまう。

 合併の時点では「新市は人口集積、都市機能理集積を図る」という行政用語で誤魔化されていたが、合併後は住民に解り易い「コンパクトシティー」や「行政効率」という表現に改められた。これも読解力不足による悲劇だ。「集積」とは一ヶ所に集める、ということであって、他の地域からすべてを集める、ということを意味していなかったのだ。
 それが最初から解っていて合併に周辺町村がこぞって参加するとは思えないが、現実にはこぞって参加を決議して合併し、今では役場や小学校の消滅した周辺部は過疎化を加速している。合併後十年以上も経て、周辺部住民の多くは「騙された」と無念がっているが、時既に遅しだ。

 中央官僚や国会議員が勧めることは必ずしも地方住民のためになることばかりとは限らない。改革には「痛みを伴う」とシタリ顔で諭す人もいるが、痛みを背負わさせる人の立場に立ってモノを言えといいたい。
 地方交付税は総額で減額されているが、国家予算は対前年比増を未だに続けている。増額するのは医療費や年金などの社会保障費が毎年1兆円ずつ増えているからだというが、前年比増は1兆円どころではない。社会保障費を言い訳にするのはやめてもらいたいし、社会保障費が増加しているのなら、なぜ減額すべく「カルテの電子化一元管理」などの抜本改革をしないのだろうか。年金に関しても暮らせない国民年金加入者並みに、すべての年金を一元化して一度引き下げてみてはどうだろうか。それから年金改革の議論を始めるのが本筋ではないだろうか。国家財政が破綻しては国民年金レベルの年金額すら支給できなくなるだろうから、国家財政破綻を避けるための緊急避難だと説明すれば良いだろう。

 その場合には官僚や公務員給与も抜本的に改められなければならない。国民がこぞって困窮しているのに、タックスイーターたちだけがノホホンとして暮らしていて良いはずがない。もちろん政治家たちの歳費も一般勤労者並みに引き下げることだ。そして浮いた財政は国債償還と個人所得減税の財源へ回すべきだ。


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