引いて足せば同じこと、ではない。

 安倍氏が「景気は回復している」「アベノミクス効果だ」と、どんな詭弁を弄しても、18ヶ月連続実質賃金減少や11月の対前年消費支出減少など、景気は完全に後退局面に入っている。だからなのだろう、政府は3.5兆円の経済対策支出を決定した。
 算数では引いて足せば同じことだが、しかし税と財政支出に関する限りそれは全く異なる。消費税で富裕層からも貧困層からもすべての国民に8%の税を課して負担させ、その対策として財務官僚が握っている権力の一環たる財政出動を行使する。つまり税や負担金で財務省へ入る金額が増加すればするほど財務官僚の各省庁や政治家に対する権力は強くなる。しかし消費税を負担させられるのは駄菓子を買い求める子供や、介護用品として紙おむつなどを買い求める老人たちなど、すべての国民に『平等』に重くのしかかるのだ。

 消費税は「応能負担」の原則に反する、逆累進性の強い「不平等な」税だ。財務官僚はこうした子供や老人や貧困者たちからも税を毟り取って、自分たちの裁量で予算編成の元になる「概算要求」を政府に突き付ける。官僚たちにとって予算が多ければ多いほど権力は強まる。
 官僚たちの理想郷は法人や国民の所得のすべてが国庫に入り、それを国民一人一人に割り振る社会だろう。そうすればすべての国民は官僚とその下請けたる政府に頼らなければ生活さえままならない。官僚にとってわが世の春だ。しかし国民にとってはわが世の地獄だ。

 安倍政権は3.5兆円もの景気・経済対策の政府支出を行うくらいなら「消費増税が誤りだったから、5%に戻す」と政策変更をしないのだろうか。さらに輸入物品の円安による価格上昇で物価が上昇しているのなら、底の抜けたバケツのような円紙幣ダダ漏れの金融緩和を収束させようとしないのだろうか。
 すでに対ドル円相場は120円を超えている。これ以上の円安は国内景気にとって好ましくない。経済成長なきインフレはスタグフレーションに他ならず、アベノミクスとは景気後退させる経済政策だったと結論付けるしかなくなるだろう。

 それでも来年から法人税を2.5%引き下げるという。安倍政権は国民を痛めつけて、利益を上げている法人をさらに優遇して「内部留保」を詰込ませようとしている。法人税引き下げが労働分配率に作用するという因果関係は全く何もない。むしろ法人税を引き上げる方が『利益を税に持って行かれるのなら社員に分配しよう』という労働分配率上昇の動機づけになるだろう。
 安倍氏の政策は国民の生活の観点からみると精神分裂症そのものだが、官僚や法人や自民党の観点から見ると見事に整合性が取れている。なぜなら法人税引き下げの効果か経済団体から自民党への政治献金が激増しているからだ。官僚も「経済対策」と称する予算執行権力を発揮出来る。自分のものでないカネをふんだんに乱費できるのはさぞかし快感だろう。そして経済対策と称して自分たちの基金と称する別荘がまたひとつなり増えれば万々歳だ。国民が実質賃金連続18ヶ月低下しようと、官僚・公務員給与は増加させたから全く関係ない。
 算数では「引いて足せば同じ」だが、税と政府支出の関係は引いて足しても同じではない。こうした馬鹿げた政策と馬鹿げた政治を国民は選挙で信任したということに気付くべきだ。


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