10%先延ばしが信用を失うのか。

 読売新聞朝刊を拝見して驚いた。第四面に慶応大学教授の土居某氏が寄稿している記事を読んで、だ。彼は「10%延期は信用を失う」と題した論を展開している。
 ただ、待って欲しい。消費増税10%実施を先延ばしして国際的な信用を失う、というがそれは国際的な何の信用なのだろうか。日本国債売却の信用を失うというのなら、日本国債は海外金融市場でそれほど消化されていない。僅か数%に過ぎないから、たとえ信用を失ったところで大したことはない。

 それよりも国内景気に悪影響を及ぼす方が重大ではないだろうか。8%増税でかつての5%増税時よりも酷い個人消費の落ち込みを見せていることに鑑みて、8%増税の景気に及ぼす影響は5%増税時よりも大きく長く尾を引くと考えるべきだ。そこに10%増税を予定通り来年10月から実施して、この国の景気が持つと思っているのだろうか。
 土居某氏の専門は何か知らないが、少なくとも国民の生活を第一に考えるなら10%増税は当分考えない方が良い、という結論に到らないとは驚く。しかも小見出しにある通り「悪影響 金融政策で対処可能」とはなんという勘違いだろうかと仰天する。金融政策は日銀のバケツの底が抜けたような異次元金融緩和はそろそろ限界に達して、金融引き締め局面に入らざるを得ない状況だ。

 円安も一服しているが、再びドル引き締めが具体化してくると円は底が抜けて投げ売り状態に売られないとも限らない。ハゲ鷹投機家たちは日本国民の多くが苦しもうと知ったことではなく、自分たちの短期的な最大利益実現に向かって行動するのみだということを忘れてはならない。
 さらに小見出しで土居某氏は「社会保障改革 アピール不足」と訴えているが、8%増税時に7万人の保育増員を果たし、10%では子育て予算に7000億円が投じられる、というのが国民にアピール不足だというのだそうだ。しかし増税してその大部分は社会保障以外の部分へ回されていることを国民は知っている。社会保障への予算配分はオコボレのような付け足しでしかない。

 財源がなければほかの歳出を削ってでも財源確保すべきが社会保障費だ。観点の狂ったマスメディアは社会保障費の半分は税で補填している、などという主客転倒した解説をしている。本来なら全額税で実施すべきが社会保障の性格のはずだ。それを他の税を投入するのは批判しても、社会保障のために消費税を増税する、という税配分の二重基準で社会保障費を語る時に、マスメディアの解説者たちは自己矛盾を感じないのだろうか。
 土居某氏もマスメディアに対するのと全く同じ批判が当て嵌まる。すると土居某氏もマスメディアと同じタチの病気に罹っているとしか思えない。税を社会保障に投入するのは消極的だが、消費税を投入するのは積極的だというのなら、小税で徴収した税額の何パーセントが社会保障費に注ぎ込まれているのか明らかにして評論すべきだ。

 そして寄稿文の最後に付け足しのように「増税分を子育てや年金に」と書いている。年金は格差のある現行年金で本当に良いのか、国民的な議論を起こすべきだと私は考える。子育ては増税なくても増額すべきは火を見るよりも明らかだ。少子社会がいかに悲惨な状態にこの国を導くのか、普通の創造力のある人ならだれでも容易にわかることではないか。


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