中身が伴わなければ、

 久しぶりに孫を連れて午前に地方都市のショッピングセンターに出かけた。老夫婦の最大の楽しみといえば孫と出掛けることだ。そこで少し早い昼食を摂ろうとしてショッピングセンターの饂飩屋に入った。
 勿論、多くは期待していないし私も食通というには程遠い。食べ物に関しては女房の出す食事に文句をつけたことは記憶にある限りではない。ただ女房の証言では新婚間もない頃に出汁に関して多少何か言ったらしい。私の記憶にはない。

 だが久し振りに饂飩屋でカチッときた。西日本の出身の私が関東の赤出汁にも耐え、毎朝独身寮で出される朝食の藁の腐敗したような納豆にも耐えた私でもさすがに箸が進まなかった。
 私は卵丼定食を注文した。女房は卵が余り好きでないため、家庭料理で卵を使用したものは殆ど出ない。だから外食では勢い卵を使用した料理を注文するようになる。

 とじた卵も掛かった出汁も文句はないものだった。しかし一口食べて箸が止まった。ご飯がダメだった。いかにも昨日炊いたご飯を保温で一晩寝たモノであると主張する鼻を衝く臭いに吐き気がした。
 いやしくも御代を頂戴して食べ物を提供する商売だ。和食でご飯がダメなら何を頑張ってもすべてぶち壊しだ。私は箸を置き、その丼を持ってカウンターへ行った。

「済まないが一口食べてくれないか」と言った。私が箸を付けたのはほんの一口分で、丼の300°を超える残りに箸を付けていない。「昨日炊いたご飯を今日使うのを責めるのではない。ただ、その場合には保温温度を下げないとかご飯に臭気が付かないような工夫をすべきだと思う」と一言申し上げた。
 饂飩屋だから出汁は美味いはずで、その出汁を使った卵丼も美味いはずだと期待したが、無残にも私の期待は裏切られた。かつて東京で暮らしていた当時、今は焼けて廃業となった「神田藪蕎麦」で味わった丼物を地方都市のショッピングセンターの出店に期待したわけではないが、残念な思いに変わりはない。

 地方都市は舐められている。文化講演などでチョットテレビで売れた弁護士や東南アジアの第三だか第四だかの大統領夫人が訪れて『文化市民大学講演』をやっつけ仕事のようにやってしまう。聞いていて腹立たしい思いに駆られるが、聴衆が満足しているのなら私が会場で波乱を起こす必要もない。
 ただ地方都市は舐められていると実感することが多い。中身の伴わない連中が大きな顔をして東京から乗り込んでくる。それは行政の都市造りコンサルでも同じことだ。東京のシンクタンクが他の地方都市でも使った『地方都市再生プロジェクト』を表紙と中の数値を変更してコピーしたものを配布して『分析資料』と称して数千万円のカネを懐に入れている。

 実は地方都市も定年退職した専門家が帰郷して静かに隠棲している。しかし地方都市の公務員たちはどのような切欠から採用されたのか想像するしかないが、玉石混合の世間から玉を嗅ぎ取る能力が絶望的に欠落している連中ばかりだ。
 それは地方都市の有権者にも責任の一端がある。なぜなら彼らが市町村長を選び、地方議会議員を選出しているからだ。殆ど思考の訓練を積んだことにないような人たちが大きな顔をして地方を牛耳っている。だから容易くマスメディアの世論操作プロパガンダにコロリと参ってしまう。

 私は趣味としてヘタな時代物小説を書いている。時代は江戸末期の天保年間から弘化・嘉永へと到る頃で、舞台は多くの場合本所・深川だ。だから一度は本場の『深川丼』を食べてみたいと願っている。今度上京したら、江戸博物館近辺の老舗食べ物屋に入って食してみたいと思う。
 しかし、その反面、ご飯が昨日炊いた保温もので嫌な臭いのするものでは何もかもがブチ壊しになるが、との懸念が湧いている。が、それでも浅蜊を焚いた深川丼に限りない憧憬を抱いているのも事実だ。


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