伝家の宝刀「憲法違憲審査権」は錆びついているのか。

 安倍政権の暴走が止まらない。それを後押ししているのはマスメディアだ。<与党は24日の協議会で政府から閣議決定の最終案の提示を受け、文言修正など詰めの作業を行う。自民党は週内の与党合意を目指すが、公明党内の調整が難航して与党合意が翌週に先送りとなる可能性もある>(以上『産経新聞』引用)とあるように、与党協議の推移を推理物のテレビドラマでも見るような感覚で報じている。それは産経だけではなく、この国のすべてのマスメディアに共通な報道姿勢だ。

 報ずべきは安倍政権が行おうとしている閣議決定による『解釈改憲』が憲法違反でないか否かではないだろうか。解釈改憲が可能だとするなら、何のための憲法かという憲政の根本にかかわる大問題となる。
 あらゆる国際紛争に武力の行使を用いないとした定めた日本国憲法に対して、安倍政権が行おうとしている憲法解釈では、政府が必要と認めれば自衛隊は世界の何処へでも行って活動できるということになる。それも武力の行使を含めてだ。それが憲法の規定に反するのは国語学者の登場を願うまでもなく、普通に憲法を読めば日本国民なら誰にでも解ることだ。

 政府が憲法を勝手に解釈だけで変えることは大変危険だ。それは国家存立の根幹にかかわることだからだ。何も集団的自衛権の武力行使だけの話ではない。思想信条の自由を侵しかねない『特定秘密保護法』などという情報開示の時代と逆行する法律を定め、基本的人権にかかわる『労働の対価』を時間ではなく成果で決めるという『残業第ゼロ法案』を決めようとしている。
 労働時間よりも結果で労働の対価を決める成果主義とはいかにも妥当性があるようだが、成果とは一体何かを考えれば労働の一方的な強化といえなくもない危険な側面を持つことを見逃してはならない。単独のプログラマーが請け負って一定の成果を出すためにシステムを構築するのと、ホワイトカラーが会社の中で働く環境で成果を出すべき、というのとでは全く異なる。ブラック企業がこの国に蔓延する事態が出来しないとも限らない。しかも公務員はその対象から外すという飛んでもない法案だ。国民は真剣な怒りを安倍政権に浴びせなければならない。

 株式投資を促進するためとして配当の税は源泉分離の20%課税となっている。株式投資であれ、労働の対価であれ、所得に変わりはなく、すべては平等に税負担をすべきだ。つまり所得の種類を問う必要はなくすべて総合して課税し、税負担は応能として高額所得者はその高額な部分では高税率の所得税を支払うべきだ。
 一時所得として単年度の所得課税とすべきではない、とする不動産所得の分離課税は一理あるような話だが、高額所得者に対しては有利な税制になっている現実に目を向けるべきだ。彼らに応能負担を分離課税によって軽減する必要があるだろうか。

 政策にはそれぞれの目的がある。税制にもそれぞれの目的がある。しかし本来の目的と乖離し、一部の人たちのエグゼクティブ課税になっているとしたら問題とすべきだ。株式投資による配当は源泉分離としてまで優遇促進すべきだろうか。株式の保持は企業支配の手段と化しているのが現実だ。
 どうしても、と言うのなら一般投資家とハゲ鷹によるM&A目的の株式売買とは明確に分けるべきだ。それが非関税障壁だというのならTPP参加はこの国にとって途轍もなく危険だと認識すべきだ。外国投資家の日本の株式市場への資金投入がすべて善だと考えるのは誤りだ。

 違憲立法審査権を持つ最高裁はまだ一度も伝家の宝刀を引き抜いていない。引き抜かないまま、鞘の中で錆果てようとしている。最高裁判所は司法の府として一体何をやっているのだろうか。ただ最高裁判事として就任して首相と同等の報酬を手にして恙なく勤め上げて天下りする他の省庁の官僚たちと同等な『上がり』のお飾りのような地位に過ぎないのだろうか。この国の三権分立を形骸化させて、日本国憲法を最も蔑にしているのは、実は憲法の番人の最高裁判所ではないだろうか。その証拠に安倍政権の解釈改憲を報道するマスメディアが『違憲立法審査権』に抵触するかもしれない、などという危惧を一切報じていない。閣議決定すれば後は与党が多数を握る国会でスイスイと成立するから問題ない、との報道ばかりだ。国民も最高裁の『違憲立法審査権』により集団的自衛権が違憲だとされるとは誰も考えていない、国民の眼中から最高裁は消え去っているようだ。それでも三権分立は機能しているといえるのだろうか。


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