国民一人一人がこの国の「骨格」を考えよう。

 ここ二十年の間に、日本は国家としての骨格を転換しようとしているように見える。それまでは19世紀マルクスの出現以前の『原始資本主義』の人道上許されない様々な人権抑圧的な社会に対する反省から、社会主義や共産主義という考えが出て来て、『修正資本主義』という考え方が広まり、戦後日本もそうした『修正資本主義』を様々な社会制度に取り入れて来た。その最も特徴的な制度が『社会保障』を国家が制度として実施していることだ。

 原始資本主義は産業革命により労働生産性の飛躍的向上により、生産手段を持てる者と労働力を提供する労働者との間に決定的な格差を生じさせた。当然、当時の英国社会に労働者を守るべき法律もなく、貧困層に対する社会的な保障制度もなかった。
 だから富める者は更に富み、貧困層は生まれながらの貧困層を拡大して行った。1%に満たない『資本家』たちが99%以上の労働者の労働力を産業革命により出現した『労働力の拡大機器』を使用させて効率的に物品を生産させて、更により多くの富を手にした。

 彼ら一握りの資本家たちが政治を牛耳り、『自由競争』と『自己責任』を是認する国家の骨格を造り上げた。しかし新思潮として登場した社会主義はそうした放任自由主義とでもいうべき社会の在り方を見直し、資本家たちが企業を運営出来て生産財を売って莫大な利益を手に出来るのも、もちろん『資本』があることもさることながら、企業が企業活動を可能ならしめる治安や企業が消費する水などを供給する地域社会を総称する『土地』と、そして労働力を提供する『人』によって企業は成り立つとする思潮が社会に広まり敷衍した。それにより資本の暴走を抑え、資本家たちの社会的責任をより多くの納税により負わせることにした。

 社会保障制度は『原始資本主義』のあった様々な非人道的な側面に対する反省から発生し、平等主義の上にに成り立っている。なにも金持ちだけが人らしく生活できれば良い、という社会であってはならない、誰もが人として生まれたからには等しく人としての権利を有する、というが戦後日本の社会の骨格を形成している思潮だ。
 いかに広大にして豪華な豪邸に住もうと、人として存在できるのは一部屋だけであり、同時にすべての部屋で寛げるわけではない。そして人として眠るのは一つのベッドであり、豪邸のすべてで眠るわけではない。そうした実態を昔の人は「起きて半畳、寝て一畳」と表現していた。その考え方の根本には『色即是空』という、形あるものはすべて無に帰す、という諦観があった。昨今の「豪邸拝見」というテレビ番組では豪邸を手にした者が人生の成功者とする風潮がある。それがいかに薄っぺらな考え方かをテレビ制作者は恥とともに悟るべきだ。需要があるから供給する、という理屈はテレビ番組制作者の根本理念としては余りに皮相というしかない。

 しかし米国を信奉する新自由主義者がこの国に根付き、まず終身雇用制度を破壊し、次に労働界の秩序破壊に乗り出している。その合言葉は『自由競争』と『自己責任』であり、その様は19世紀マルクス登場以前の『原始資本主義』を想起させるものだ。
 徹底して1%に奉仕(この場合の1%は企業経営の資本家たちではなく、さらに悪質な単なるハゲ鷹投機家たちを指す)する社会を是認し、99%の労働者はいつでもレイアウト(この場合は一時待機ではなくクビを意味する)できる企業経営者にとって便利な代物になり下がっている。

 しかし生産財を国有化した社会主義や、生産財のみならず土地までも国有化し徹底した万人平等主義を貫徹したはずの共産主義国家では新たな利権・特権階級を生じさせた。それは官僚たちだ。
 社会主義国や共産主義国では官僚が新たな支配者として国民に君臨している。当然、社会主義の制度を社会に取り入れた修正資本主義国家でも新たな支配者として官僚たちが国民に君臨し支配している。その最たるものが官僚の勤労者平均所得に倍する報酬であり、高額年金を支給している共済年金の存在だ。そしてそれらを監視すべき政治家たちはバッジをつけるや忽ち官僚たちに取り込まれて官僚たちの手先となり御用聞きとなる。アベノミクスなどと中身のない文言をほざいている現政権ですら、やっていることは対前年比増の拡大予算を組み続けているだけだ。それは官僚に奉仕しているだけだ、という現実をマスメディアも一切報道しないし取材などを行ってメスも入れないし触れようともしない。国家財政や地方財政が『危機に瀕している』と報じ出して以来、天下りは減少したのかそれとも増大したのか、それすらもマスメディアは報じようとしないし、政治家たちは官僚たちを見張ることをやめている。それどころか国民には増税を強いているが、官僚たち公務員給与は8%以上も引き上げた。

 この国の骨格をどうするのか、政治家たちから聞こえてくるのは国民の広範な議論を通して憲法を改正しようというのではなく、憲法はお飾りとして祭り上げ、自分たちで勝手に『解釈改憲』を行うという、国家としてあるべき立憲主義を放棄する愚かな方向へ行こうとしている。それをこの国最大のマスメディア(昨日の読売新聞の社説をご覧頂きたい)が是認するに到って、日本のジャーナリズムは死滅したと慨嘆するしかない。
 この国のマスメディアは戦前は軍部に協力し、戦後はGHQのポチとなり、独立以後は反日勢力の最右翼となった。元々真のジャーナリストを目指す人たちはもこの国のマスメディアにとっては都合の悪い人たちに過ぎない。だからテレビを下ろされ、新聞紙面から追放される。残るは官僚・政府の広報を任じるマスメディアだけだ。

 この国の骨格を国民一人一人で真剣に考えよう。それぞれの国家観を持って憲法改正を国会議員に要求しよう。チンケな解釈改憲などクソ喰らえだ。そんな小手先で集団的自衛権を扱って、本当に良いと思っているのだろうか。世界に対して恥ずかしいとは思わないのだろうか。自民党の幹事長は米国へ出掛けて『自衛隊を米軍の先兵にするぜ』とアナウンスしている。恥ずべき政治家の最たるものではないか。政治家の手から憲法を取り戻そう。安倍氏は「日本を取り戻す」を合言葉にして選挙を戦ったが、その言葉とはつまりそういうことだったのか。安倍政権の欺瞞性はここに露わになった。一日も早く打倒し、国民一人一人がこの国の骨格を考えて憲法を改正しよう。


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