偉大なる『アナクロニズム、マンネリズム』映画があった頃。

 それはテレビ番組から始まった。クドイほどの『お人好し』が『アナクロニズム』な人情劇を繰り広げる下町の人たちの描写に心を打たれた映画シリーズがあった。
 いうまでもない『男はつらいよ』だ。その第一号作品を少年の私は映画館で観た。しかし、それが50作近い日本を代表するシリーズものになろうとは思わなかった。

 後々様々な評論家が『男はつらいよ』を評論し、映画監督や出演者たちを褒め称えた。しかし、何処か醒めた目で、評論家たちの胡散臭さにソッポを向いていた。最初、彼らはどのように評していたか、私は知っていた。
 偉大なる『アナクロニズム』であり、『マンネリズム』を評論家たちはそれほど評価しなかった。登場する俳優も当時の二枚目というのでなく、むしろコメディアンたちのドタバタ喜劇という類に近かった。しかし、それでもシリーズが回を重ねても色褪せなかった。

 偉大なる『アナクロニズム』は下町の当時の世相でもあった。消え行く下町がそこにはあった。既に夜汽車に乗った『集団就職』はなく、合理化や効率化の旗印の下、家庭経営のような職場は消えていこうとしていた。
 しかし日本の高度経済成長は『アナクロニズム』というべき終身雇用制度の下に成し遂げられたことを忘れてはならない。単純再生産にこそNC制御装置つきの生産機器は有効かも知れないが、日々の弛まざる『改善』や『進歩』とは無縁な職場だ。人の職人技を否定する職場に次元を超越する『発明』も『発見』もない。世界を目標とした企業や職場は世界標準の罠に嵌ってしまうことに経営者は気付いておくべきだ。

 テレビがつまらなくなって久しい。チャンネルを回しても同じような芸人が登場して、同じような楽屋話をして時間を潰している。発想も意匠も、何処かで見たような『焼き直し』に過ぎない。それはまさしく単なる『アナクロニズム』であり、往年の映画が二枚目スターに寄りかかって碌な物語や演技を観客に提供しなかった斜陽産業を彷彿とさせる。
 テレビ業界から『本』を書く人たちが去ったのだろうか。それともテレビが安直な視聴者を意識しすぎて『本』を必要としなかったのだろうか。伝説となるテレビドラマが今後ふたたび登場することがあるのだろうか。

 喜劇役者の死とともに『男はつらいよ』は終わってしまった。『私のおじさん』で主人公の幻影を社会人になった甥がプラットホームで見るシーンがある。涙が出るほどの切なさに心を打たれる。それが偉大なる『アナクロニズム』と『マンネリズム』の終着駅だった。
 時代とともに意匠は変化するかもしれないが、本質は何も変わらないのではないだろうか。江戸時代の職人技を超える技量を持つ職人が現代の日本にどれほどいるというのだろうか。時代とともに進歩していると考えるのは早計だ。確かに私が叩いているキーボード付きのPCは劇的に進歩した。まったく別次元の時代を生きているという実感を持つ。

 しかし、それでもキーボードを叩く人間が屑なら、屑の瞬間拡大生産がなされるだけだ。PCの進歩があればこそ、こうして私が地方の空の下で書いた文章が瞬時にしてすべての人たちに開示される。感謝しても仕切れない。
 だが、だからこそ偉大なる『アナクロニズム』を忘れてはならないし、うんざりではなく次回作を期待される『マンネリズム』が成立するモノが必要なのだ。政治家が下手な番宣役者のように『三本目の矢』はコレコレですと、首相がいかに宣伝しようと政策の本質に国民が不在なら、何の意味もない。ただ経済の数字合わせをどのようにするかの処方箋ゴッコを繰り返しているだけだ。今のどのチャンネルを回しても同じような芸人が楽屋話をして退屈な時間潰しを競演しているのと何ら変わらない。

 玄葉氏が海江田氏に対抗して民主党代表戦に出馬するという。ただし、その出馬の弁が『再び政権を担う党になるようにする』というのでは馬鹿な生徒会長ですら口にしない所信表明に過ぎない。
 なぜ民主党が信を失ったか。自民党の真似をしたからだ。民主党のアイデンティティーを失ったからだ。自民党の猿真似なら、自民党の方が良いのは当たり前だ。民主党はなぜアイデンティティーを失ったのかを未だに反省していないようだ。それでは残念ながら党の再生はありえない。どうぞ勝手に瓦解してください、私の愛した民主党は既に『消費増税』を提唱し、TPP参加に舵を切った段階で自殺してしまった。馬鹿な政治家たちが揃いも揃ったものだ、と涙が出る。なんのために有権者は民主党に政権を獲らせたのか、彼らの蚤ほどの脳味噌では理解し難いようだ。これほど手酷く頭を打ち付けても、覚醒しないようではこのまま頓死するしかないだろう。民主党は民主党としての偉大なる『アナクロニズム』と『マンネリズム』を取り戻すべきだ。財務官僚ではなく、国民は何を願っているか、を知るべくアンテナを高く上げることから民主党の政治家は始めるべきだ。


このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。