余寒の候、河津桜を観る。

 既に日差しは春爛漫そのもので、弱弱しかった立春以前のものとは様変わりだが、吹く風は氷水のように冷たい。早春賦という歌唱を思い浮かべながら、河津桜の名所へ出掛けた。
 日本国民は桜が好きだが、その桜は多くの場合ソメイヨシノに限られている。ソメイヨシノが花開く一月も前のこの時期に満開を迎える桜が河津桜だ。その花はソメイヨシノが白っぽいのに比して、桃花のように赤みを帯びている。遠くから一望すると桃の花山のようだ。

 故郷には宇野千代女子が好きだと発言したことにより名が広まった薄墨桜がある。ソメイヨシノよりも更に儚げに白い、背景の陰を透かして薄墨色に見える桜だ。
 他にも先に葉が茂る山桜があるが、里山を染める桜でソメイヨシノよりも僅かに遅れて咲く。こうして桜花を一月以上に亘って観賞できるのも様々な桜があればこそだ。いかに華々しい桜だといってもソメイヨシノ一種しかなかったとしたら、桜の世界は寂しいに違いない。

 しかしさすがに寒かった。河津桜を愛でる人出はあったものの、一様に足早に園内を眺めて回って屋内へ逃げ込む。桜花の下で酒を酌み交わすには時節が余りに早すぎる。まさしく桜花を眺めるだけの花見は河津桜だけではないだろうか。
 冬枯れの野山の味気ない景色の中で華やいだ一隅が浮かびあかっているのを遠くから見つけた「春の歓喜」は一層強く心を動かす。「ああ、咲いている」と思わず声が出るのも河津桜ではならだ。

 

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