年金格差を放置したまま、厚生基礎年金の徴収期間を45年にする厚労官僚の四肢滅裂さ加減。

 政府が経済団体に停年延長を60才から65才に延ばすように要請しているかと思ったら、厚労省が厚生基礎年金の徴収期間を45年にする案を検討中だという。社会保障の財源の半分が税金投入部分だから財政負担を少しでも軽くしたいとの思惑のようだ。
 しかし税の徴収は国民の「命と財産の保全のため」という大原則がある。社会保障費は総額で100兆円だが、その約半分は保険料や掛け金で賄っている。残りの50兆円を税金から繰り入れている。

 本来なら消費増税部分を社会保障費にすべて回すなら一般会計からの繰入金額が増加がして、相対的に保険徴収や掛け金割合が低下するはずだ。しかし安倍政権は「羊頭狗肉」政権さながらに消費増税部分を法人減税や公共事業の財源に回してしまった。
 国民にとっては保険料で徴収されようが税で徴収されようが、公的負担であることに変わりない。一体いつまで国や地方は大福帳会計で国民の目先を誤魔化すつもりだろうか。税負担が大きいから社会保障費を削減すべきだ、という主客転倒した議論は大福帳会計だからこそ一般会計に矮小化された議論だ。

 そもそも現行の社会保障制度そのものに問題はないだろうか。医療費や介護保険などは「負担は応能で、支給は一律」という社会保障制度の大原則が貫かれている。たとえば高給取りの人は高額な医療保険を徴収されているが、入院する際にはみんなと同じ大部屋だ。個室を望むなら差額ベッド料を支払わなければならない。つまり医療保険支払いはすべての人に対して一律だ。
 しかし社会保障制度の中で年金制度だけが異なる。まず国民年金と厚生年金と共済年金という制度そのものによる格差が存在する。しかも各年金制度の中でもさらに掛け金の多寡により支給金額に大きな格差が存在する。年金だけが保険会社が運営する保険年金制度であるかのような不平等がまかり通っている。

 官僚や政治家たちは「各制度にはそれぞれの歴史がある」などと意味不明な説明に終始して三制度と制度内の格差を存続させようとしている。なぜ「それらは社会保障」だという原点に戻って議論しないのだろうか。
 社会保障とは富の再配分による貧困層の救済だ。高齢者は国体的・能力的に概ね働けないから公的負担で「保障」しようとする制度だ。それが勤労者平均年俸を上回る年金を手にして、毎月のように海外旅行する「年金世帯」がある半面、生活保護以下の年金しか手にできないで飢餓状態にある高齢者が存在している現実を官僚も政治家もマスメディアも評論家たちも真面目に議論しようとしない。あたかも国民年金受給者たちは切り捨てた国民であるかのように。

 そうした格差撲滅こそが社会保障制度の基本理念だったはずだ。何度でもいう、社会保障制度とは一律支給であるべきだ。それ以上の年金を望むなら個人で保険会社の年金保険の商品に加入して掛け金を支払えばよい。
 社会保障制度たる公的年金で生活保護以下の支給しかできないというのは大きな矛盾だ。それで社会的なモラルが維持できるとは思えない。だから国民年金徴収率が激減し6割を切っているが、徴収率を上げようとして地方自治体が掛け金を支払わない人たちに「免除制度」の申請を勧めているため、実際に国民年金制度加入者全体に対する徴収率はさらに低下するはずだ。

 2009マニフェストで民主党は7万円一律支給を謳ったが、マスメディアなどに少し批判され叩かれるとアッサリとマニフェストを丸めてごみ箱に放り込んでしまった。なんという愚かな政治家たちだろうか。彼らが獲得した議席を生かせなかったというのは政治家として失格だというのと同義語だ。
 再び年金の一律支給を掲げる政党が出現するのを待つしかないのだろうか。この国の社会学者たちはこの国の社会保障の中で年金制度だけがいびつだと批判しないのはなぜだろうか。彼らが高額年金取得者の立場を維持したいがために沈黙しているのだろうか。官僚たちが決して共済年金を議論させず問題化させようとしないのと同様に。

 今後もこの国は官僚による官僚のための政治が続き、評論家たちもその路線上でだけコメントを述べ続けるのだろう。そうしないとテレビを干され、旨味のある儲け口を奪われるから。
 テレビ番組内で展開されるチマチマとした矮小化された議論だけを国民は聞かされて、根本的な問題が提起されない欺瞞に満ちた日常に「何かおかしい」と思いつつ公的負担増を是認し続けるのだろうか。


このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。