税は何のために徴収しているのか。

 世間には愚かな評論家が大きな顔をして平然と見当外れな解説をするものだと感心した。夕刻のテレビニュースで来年四月から老人医療費の自己負担が現在70歳の1割から2割に増となり、介護保険料の自己負担も1割から2割に増となることを報じた後で「現在でも社会保険に繰り入れている税負担が44兆円だから、消費税を10%にしても14兆円程度だから到底足りませんね」と驚いてひっくり返るような解説をしていた。
 その評論家というか専門家は税から一銭も社会保障費へ繰り入れしないで国民の社会保障を保険料と消費税だけで賄うのが正しいとでもいうのだろうか。それなら税は一体何のために徴収しているのだろうか。消費税も税の一部ではないのだろうか。

 なぜこの国の官僚や政治家や評論家やコロンテータたちは押し並べて「税と保険料」を区分して論じるのだろうか。それらは国民からすれば公的負担であって、税も保険料も少しも変わらない。ただ納付先が税務署か社会保険事務所かの違いがあるだけだ。そうした相違が存在するのも、この国の愚かな会計制度に原因があるのであって、複式簿記なら国庫への納付金として一元化されてしかるべきものだ。
 だから保険料と税金からの繰り入れをどの程度の割合にするのかの議論はあり得ても、社会保障費のすべてを保険料と消費税で賄うべきだとするのは論外だ。そうした基本的な解説すらしないで、「税からの繰り入れをすべて消費税で賄えば30%にもしなければならない」とノタマウ愚かな評論家までテレビに登場して来るのだ。

 税の使途は国会で決める。毎年毎年対前年比増の予算を組み続けるこの国の官僚や政治家は高度経済成長が終焉し、日本は基本的に人口減のダウンサイジングの時代に突入していることから目を逸らしている。愚かなのか故意なのかは別にして、人口減の少子社会対策を放置したまま政治だけが高度経済成長の延長線上にあるのは狂気の沙汰だ。このまま行けばこの国の公的純負担率が天井知らずになるのは明らかではないか。
 すでに日本の公的負担率から公的支給率を差し引いた「純公的負担率」は17%と欧州諸国が14%ないし15%なのと比較して高負担になっている。この「純公的負担率」をこの国のマスメディアは意図して報道していない。ただ公的負担割合が39%程度だといって欧州の50%からスウェーデンの75%と比較してまだまだ低いと財務官僚のようなコメントを報道している。それは恰も日本の消費税が来年四月ですら8%でしかないと、欧州諸国の消費税がおしなべて20%ないし25%と比較して低いと宣伝しているのと同じ騙しの構図だ。なぜ騙しなのかというと、欧州の消費税は生活に必要な食料品や医療費や教育費に関しては英国は非課税だし、スウェーデンなどですら7%と日本の8%よりも低いのだ。そうした軽減税率の適用をこの国のマスメディアは殆どスルーしているのはなぜだろうか。これを騙しといわずして何だろうか。

 日本国民は今よりも少しは目を見開いた方が良い。街頭インタビューなどで「国も赤字で大変なのだから、少しぐらいの負担なら仕方ないかな」などと寛容なコメントを述べる能天気な国民を見かける都度強い怒りを覚える。それはその本人に対してではなく、国民をそこまで洗脳したこの国の官僚や政治家やマスメディアに対しての怒りだ。
 国家財政が破綻の危機に瀕しているのならなぜ歳出削減に全身全霊を奮って努力しないのだろうか。なぜ政治家は議員定数削減などの国会改革を実施しにいのだろうか。議員特権をすべて返上して、公務員の各種手当をすべて見直すことをしないのだろうか。なぜ民間労働者に準ずるとしている公務員給与などを民間に準ずるものに即座に改めようとしないのだろうか。それに人事院が抵抗しているとしたら、なぜ人事院を廃止し、公務員のすべてに例外なく労働三権を与えないのだろうか。政治家が思い切ったダウンサイジングに踏み出さない限り、国民の負担は天井知らずになって行くしかない。それが政治だというのなら、この国にはボンクラ政治家しかいないと言うしかないだろう。


このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。