「消費税を上げない理由を探す方が難しい」(政府要人)というのなら上げて景気を失速させれば良いだろう。
未だ政府発表の年率換算3.8%の成長が感じられない経済環境で、2020オリンピック東京招致が決まったから「消費税を上げない理由を探す方が難しい」と能天気な御託を並べる政府要人のいる政府とは碌なものではない。
2020東京オリンピック招致の決定で早くも幇間評論家が150兆円の経済効果だ、と囃し立てるお調子者がいるが、彼が掲げている数字は向こう7年間に東京で消費される公共事業などの総額を云っているだけだ。
誰にでも簡単に解ることだが、2020のオリンピック開催までは日本国内の実益は何もない。ただ借金をしたり基金を取り潰したりして公共事業をセッセとやるだけだ。それも1964年当時のように新規高速道路や設備を建設するのではない。一部臨海部と銀座を結ぶ新交通システムが出来るようだが、ほとんどは現在ある社会インフラの手直しでしかない。
つまり投資対効果で見た場合の投資係数は1を上回って、公共事業に費やした金額以上の経済効果が国民にもたらされる類のものではないことだ。しかし回るカネがすべて「経済効果」だというのはコップの中の経済を論じているだけだ。日本の「純益」として手に出来るのは2020のオリンピック開催までは何もないという現実を見なければならない。
そうした冷静な思考回路もなく、ただ拍手喝采して「これで消費増税をやめる理由はない」などと見当外れの発言を恥ずかしげもなく行う経済閣僚とは何だろうか。彼は小さな町工場の資金繰りすらやったことのないボンボン政治家ではないかと思わざるを得ない。
スポーツ大臣を新設するだとか、2020オリンピック総合プロデュースに引退表明したアニメ監督を就任させてはどうだろうかとか、マスメディアは足の踏み場もないほど躁状態に陥っている。つい先日まで深刻な顔をして「消費増税」しなければ日本国債は暴落する、とのたまっていたのはどうなったのだろうか。
景気上昇のアンセルと景気冷却のブレーキと両方を一遍に踏んでどうなるのか。自動車などの機械工学ではブレーキの方が勝るように製造されている。さて、景気ではどちらが勝つのか、安倍氏は実際にブレーキを踏むつもりなのだろうか。そうすればスタグフレーションのスパイラルに陥ってオリンピックどころではなくなると危惧するのは私だけだろうか。