国力とは経済力だが、富の分配が一極集中するような社会であってはならない。

 安倍政権は政権支持率は景気によって決定すると考えているようだ。だから見せかけの景況感でも上昇させることに躍起になって来た。総裁に就任した当初から安倍氏に対する期待は民主党政権に対する失望の裏返しで強いものがあったが、その失望とは具体的なものではなかった。


 いわばマスメディアが報道により醸成した世間の空気に過ぎなかった。確かに株価は低すぎ、円は高すぎた。しかし金融政策は政府だけの問題ではない。国際金融環境にもよるし、一部投資機関の動向にも大きく左右される。


 


 安倍政権は発足以前から幸運に見舞われた。一時期のユーロ諸国の破綻危機は遠退いたように見えたし、米国経済も堅調さを取り戻したように見えた。だから円は安くなり、日銀の異次元金融緩和と相俟って投機家資金が国債から株式市場へとシフトした。よって安倍政権への期待感からアベノミクスは「うまく行く」とのマスメディアによる宣伝効果は国内の景況感を盛り上げた。


 しかし景況感はあくまでも景況感だ。「のような感じ」で実体経済が良くなるわけはない。ただ「騙すなら死ぬまで騙して欲しい」という安物の流行歌のセリフような願望がマスメディアの煽り文句を増幅させていたに過ぎなかった。


 


 今は世界経済の三極の動向は民主党政権当時と大した変化はない、という実態が共通認識になりつつある。ユーロ経済圏内の二、三の国の経済は相変わらず破綻の瀬戸際にあり、それぞれの国は緊縮財政を断行し財政再建の対策を取っているが国民は必ずしも緊縮政策を支持してはいない。ユーロ圏内で一人勝ちしているドイツが他の国々の面倒をみるのは当たり前ではないか、という不満が渦巻いている。


 米国の経済もオバマしのグリーンニューディールと称した内需拡大策が破綻し、ドル安による「失業の輸出」策も必ずしも効果を上げなかった。むしろ超金融緩和策により米国債の信認は低下し引き受けているのは忠実な属国の日本と米国を組み伏せようとする思惑で買い続ける中国しかない状態になっている。米国財政の壁は消えたわけではなく、この7月にも大きな壁が立ちはだかっている。


 


 そうした実態が明らかになり、日本の円がやはり世界で最も安定して通貨だという認識が投機家たちに蘇り円高が戻って来た。それにつれて長期利率の上昇した日本の国債へと投機家資金が逆も取りし始め株式市場は急速に冷え込み始めた。もっともハゲ鷹たちは乱高下する不安定な相場こそが稼ぎ時だから故意に株式相場や為替相場を乱高下させているという面も否めない。


 


 安倍氏は政権の命運を経済運営にかけるというのなら目先の相場に一喜一憂してはならない。景気を牽引するエンジンとして役不足なチマチマとした経済政策を打ち出すのではなく、ドーンと大幅な海外移転していた企業のUターン減税を思い切って行うべきだ。


 2万数千社もの中国へ進出した企業は全体として進出した動機を喪失しつつある。中国の労働環境からかつてのうま味はなくなり、労働争議の頻発と賃金の上昇と政府による反日暴動への誘導策がいつ再燃するか分からない危険性は拭えないままだ。しかも中権経済はいつ何時地方政府の破綻から国全体のバブル崩壊が起こってもおかしくない状況にある。


 中国経済がバブル崩壊すれば中国政府の国内治安維持は困難になるだろう。現在ですら1000人規模以上の民衆による暴動が年間8万から10万件もあるとされている状態だ。つい先日、中央政府幹部たちによる資金持ち出し組が米国内のある都市の近郊に移り住む準備をしていると配信されたが、その規模が家族や一族を含めると100万人に達するというから驚きだ。中南海がそっくり米国へ移転するのではないかと思われるほどだ。


 


 中国へ進出した日本企業経営陣がそうした中国の状況が分からないわけはない。米国企業の多くがすでに米国内へと回帰したのも承知しているはずだ。それでも中国内に多くが止まっているのは企業利益の持ち出しを禁じられているため中国から撤退出来ないでいるのだろう。その一端は交渉下手な日本政府の責任でもあるが、日本企業の経営判断の甘さにもある。企業利益の帰属の確認を求める提訴を中国政府に対して起こして、企業存続の体裁を取る最低限の駐在員などを残してさっさと撤退することだ。


 企業にとっては二重投資になるかもしれないが、中国進出に見合う資金を政府は緩和された資金で面倒を見れば良いし、黒字倒産にならないようにUターン投資減税で面倒を見れば良い。それらが経済成長の主力エンジンになるのであって、主力エンジンが稼働すれば女性参画社会や正規社員の増加などの諸課題は拡大経済の下で解決されるだろう。


 


 デフレ経済の元凶は企業の海外移転だったと総括しない限り、日本経済の再生はない。日本のマスメディアが日本国民の利ために存在するのなら、徒に企業の海外移転や行楽者の海外旅行を煽らないことだ。まず日本の経済を拡大・成長路線に乗せるために主力エンジンを稼働させる環境を政府は真剣に考えるべきだ。目先や鼻糞の議論はどうでも良い。秋まで待っている暇もない、主力エンジンを稼働させようではないか。それは今だ。



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