米国が対中政策で常に日本の側に立つとは限らない、と覚悟しておくことだ。
核の脅威すらちらつかす北朝鮮問題で、米国が最初に訪れたのは中国だった。北朝鮮をこれまで食料や経済で支援し、ここまで増長させた原因は米国と中国だ。
その両国が北朝鮮の金政権に対していかなる決着点を確認しあったのか、韓国政府と日本政府には知る権利がある。なぜなら北朝鮮の暴走で最も被害を蒙るのは韓国と日本だからだ。
中国と米国は対北朝鮮で利害を一部共有している。それは米中対立の緩衝地としての北朝鮮だ。中国の陸続きの隣接国家で米軍が基地を置いている国はない。しかし北朝鮮が消滅すると米軍基地のある国と中国は初めて陸続きに国境を接することになる。
中国の安全にとって由々しき事態になることは避けたいだろう。米軍基地のある国と国境を接することは米国の脅威に身を晒すことでもある。いつなんどき米国の特殊部隊が中南海を急襲しないとも限らない。
実は北朝鮮の金政権を排除することは米国にとって何でもないことだ。中東の宗教戦争を背景にしたイスラム国家相手の軍事進攻はイスラム系テロリストの世界への拡散を招くだけで、爆弾テロが米国内で日常化する事態を招きかねない。
しかし北朝鮮の金政権は宗教的背景による政権でもなければ国民の信をも既に失っている。満足どころか常に国民を飢餓の瀬戸際に放置して「国威」のためにミサイル打ち上げや核開発などに狂奔している異常な政権を国民が支持していないことは容易に想像できる。
そんな金政権を米国が特殊部隊か、ステルス爆撃機で物理的に排除することは簡単なはずだ。それを実施しないのはひとえに中国の存在にかかっている。
しかし遂に中国も北朝鮮の金政権に見切りをつけたかも知れない。そうすると、後は金政権以後の北朝鮮をどうするかの話し合いだけだ。米中両国の国益にかなう形で金政権排除後の北朝鮮のあり方を話し合ったかも知れない。
つまり金政権排除後の北朝鮮全域を南朝鮮による統一国家として韓国民により治安を確保するも、米軍基地を一切置かない。しかもこれまで中国が手にしてきた北朝鮮の開発利権を認めて資源・経済開発を容認すること。
などを米中は話し合っているとしたら、後はどのようにして金政権を北朝鮮から排除するかという方法だけだ。金一族の中国への亡命を認めるのか、それとも米国の急襲部隊で一族虐殺を実行するのか。
金政権は「無慈悲」という言葉が好きなようで、繰り返し使用しているが、金政権の自国民への「無慈悲」さは周知の事実だ。韓国との共同経済特区・開城工業団地の存在により、そこで働く5万人を超える北朝鮮国民は韓国の豊かさを具体的に知ってしまった。その知識の波及はわれわれの想像を超えるものがあるはずだ。
金政権の揺らぎ振りの裏返しが強硬姿勢だとしたら、北朝鮮国民による「無慈悲」な攻撃が金政権打倒に現れるかもしれない。瀬戸際外交を続ける金政権はまさしく瀬戸際の剣が峰に立っているのではないだろうか。