TPP対策で本腰を入れるべきは輸入関税を既得権としてぬくぬくとしていた天下りたちの一掃ではないか。
たとえば輸入食肉にかけていた関税を財源とする「畜産振興財団」には1兆円を超える留保金が唸り、農水官僚たちの天下りとして業界団体に睨みを利かしていた。コメなどの700%を超える関税を財源とする特会や輸入小麦などの関税を財源とする特会にも、お決まりの団体がぶら下がって官僚たちの別荘と化していた。
TPPで聖域なき関税障壁撤廃ならそうした別荘は一掃されるし、各種団体に巣食っていた連中はメシの食い上げとなるだろう。だから農家と一緒になって官僚たちも必死に「聖域なき」はダメだとマスメディアを使って騒ぎ立てている。
しかしTppの本質的な問題は官僚たちの天下り先が消滅するか否かではない。米国の一部企業と投機家たちによるこの国の実質的な支配にこそある。
何度でも書かなければならないが、米韓FTAを他山の石として見るべきだ。韓国はFTAによってどうなっているのか、韓流の腰フリダンス娘たちの動向を伝えるのには熱心だったこの国のマスメディアはFTAにより韓国内で60本を超える法律を改定させられていることを丸で伝えようとしない。
韓国に主権がないかのような事態に陥っているというのに、二国間協定のFTAよりもさらに厳しいTPPへ参加すべきとマスメディアは大応援団を形成している。なぜTPPに仕組まれたISD条項を子細に報道しないのだろうか。それは「非関税障壁撤廃」に名を借りた米国流の統治を参加国に強制する仕組みに過ぎない。
聖域なき関税障壁の撤廃にも賛成できないが、官僚たちの食い物にされている関税収入とそのバラ撒きにも賛成できない。
たとえばガットウルグアイラウンドで一部輸入制限が撤廃された見返りに、電電公社株の売却益7兆円を農業対策としてばら撒いたがどのような効果があったかは実に疑わしい。
札束で頬を張るのが自民党の伝統的な政策のようだが、TPPでも同様な手法を使うつもりなのだろうか。それならガットウルグアイラウンドの結果をまず明らかにしてからにして欲しいものだ。