危機管理のこの杜撰さは何だろうか。
福一原発の事故原子炉への通水装置などの電力がすべて落ちたという。やっと昨夜復旧したようだが、19日に停電事故が起こってから3時間も東電から報告が来なかったというのは異常事態だ。
福一原発はかつて野田首相が能天気にも「収束宣言」したような、低温常態化しているわけではない。絶えず通水して冷却しなければ温度上昇が起こって再臨界するかも知れない不安定な状態にあるのだ。
外部電力で賄われている福一原発内の電力がすべて落ちたのは配電盤の不具合のようだが、通常の配電盤なら容量のある限り一部が機能停止しても他の配電盤が賄う「安全装置」が働く仕組みになっている。だから普通の生活で停電に見舞われることは極めて少ない。
しかし福一原発の配電盤は非常復旧用のものがトラックで運ばれた状態のまま使われていたという。この2年余り、原発事故復旧担当者たちはいったい何をやっていたのだろうか。
福一原発は明日や明後日で収束するものではない。今後何十年もかかることは容易に想像される。それなのに肝心要の電源の配電盤がトラックに積まれたままの非常用を使っていたというのは何だろうか。
東電の事故処理に当たっている者たちに限らず、管理監督すべき立場にある者たちはどのような「安全基準」で事故処理に当たっているのだろうか。電源にして、この状態なら後はどのような状況か想像に難くない。
未だに構内をのたうちまわっている蛇腹のビニールホースで送水し、それらも剥き出し状態のままなのだろう。放射性物質除去装置にしても本格的なプラントを建設しているわけでもなく、簡易タンクを塩ビ管で接続した簡便な装置で対応しているのではないだろうか。かつてバケツで放射性物質溶液を汲みこみ、臨界事故を起こしたような杜撰な対応をしているのではないだろうか。
たとえば原子炉の所在場所は動かないし、放射能汚染水処理も今後年十年も続くのなら、なぜ放射能遮蔽物でコーティングした鉛管に蛇腹ビニール管を置き換えないのだろうか。汚染水処理装置の周囲を放射能遮蔽板で取り囲み、処理に当たる作業員が浴びる放射能を少しでも減らす努力をしているのだろうか。
そうした事故処理の恒久化対策と作業員の安全管理が徹底されない政府の「原子力安全対策」とは一体何だろうか。この国はかけるべきところへ予算をかけないで、どうでも良い「原子力安全委員」に多額な年俸を支給する。作業現場の放射能低減装置に十分な予算を回さないで、東電幹部は多額な年俸を手にしている。国民はおかしいと思わないのだろうか。政治家たちはおかしいと思わないのだろうか。再度爆発事故を起こさないまでも送水停止がどんなに危険かを原発事故処理に当たるものは共通理解として共有していないようだ。その証拠がトラックに積まれたままの非常用配電盤を2年以上も使っていたことから明らかだ。
この国の政治家や官僚や企業のエリートといわれる人たちは腐っている。安倍氏も「日本を取り戻す」などと意味不明なことを喚くより、日常的な「安全」を取り戻すことに全力を傾けることだ。この国マスメディアは殆ど伝えないが、東京ですら放射能被曝と無縁ではない。ましてや福島県は「帰宅」を急ぐよりも「疎開」を積極的に展開すべきだ。帰宅可能地域を福一原発から30キロ圏から20キロ圏に狭めたことが犯罪的な行為だったと判明した時には遅いのだ。国も県も市町村も、地域住民を放射能被曝させるために働いているわけではないだろう。なぜ正確な放射能汚染情報を国民に提供しないのだろうか。この国のマスメディアも腐りきっている。その成果が風が吹けば簡単に揺れるトラックに積まれたままの非常配電盤の故障だ。