保険に名を借りた目的税。
英国の医療費全額無料と異なり、日本の医療費は医療保険と税の繰り入れと窓口負担で賄われている。介護も「介護保険」という名の目的税と一般財源からの繰り入れと利用時の個人負担とで賄われている。つまり日本は何やかやと名目を変えながら、大部分を国民負担で実施している。
年金も「年金保険」という目的税と一般財源からの繰り入れで賄われている。この場合は現役時代の加入年金制度により天国と地獄ほどに待遇に開きがある。
かたや満額支給でも暮らせない年金「国民年金」があり、厚生年金や共済年金は国民年金を「基礎年金」としてそれに上乗せされる格好で支給される。つまり完全なる格差が年金にははじめから存在する。
それに対して国民は不満を並べ立てるでもなく、国民年金の人たちは飢えて死のうと「仕方ない」と諦めているか、生活保護にすがって生きるしかない。暮らせない社会保障とは一体なんだろうか。
しかしこの国のマスメディアが国民年金を問題にするのは極めて稀だ。なぜならマスメディアで働く人たちは厚生年金制度に加入しているし、年金受給想定額もきわめて高額だから現行制度が維持されることにしか関心が向かない。平均支給額5万円足らずの国民年金はマスメディアにとってどうでも良いことなのだ。ましてや生活保護世帯の受給額削減が実施されようと、彼ら厚生年金受給者は関係ないため生活保護費削減にさしたる飢えへの危機感を抱くこともない。
この国のマスメディアは高額共済年金制度加入の官僚たちの機関紙に堕しているため、最下層の国民年金や無年金者たちの対策に目が向かわない。自分たちさえ良ければそれで良いのだ。
政治家たちも全く当てにならない。デフレ経済下で「消費増税」を議論して国会で議決するような狂気の沙汰を演じて少しも「おかしいな」と思わない連中たちだ。そして闇雲にインフレになりさえすれば良い、と十年一日のごとく景気対策といえば財政出動との処方箋を実行する能天気な連中だ。紙幣を増刷すればインフレになり、それを以ってデフレ経済から脱却だ、というのなら国民生活が悪性インフレに苦しもうと知ったことではないということだ。
当初は「税と社会保障の一体改革」と歯の浮くような文言を並べていたが、消費増税が可決されると政治家たちは口にしなくなった。それでも国民の代表だというのだから笑ってしまう。一体この国の政治は誰のためにあるのか、国民はいい加減マスメディアの洗脳マインドコントロールから醒めなければ身包み剥がされてしまうだろう。