未来への投資を「バラ撒き」と酷評した日本のマスメディア。

 「子は宝」と古の山上憶良はうたったが、千数百年後の子孫は果たして「子は宝」だと心底思っているのだろうか。公的支出で欧州諸国と比較して公共事業費は倍以上に達しているにも拘らず、子育てに関する支出は1/3ほどでしかない。つまり現代の日本は山上憶良ほど「子は宝」だと思っていないようだ。


 


 日本社会から元気が失われると「子育て」意欲も減退した。特殊出生率は1.32まで落ち込み、やっと民主党政権でフランスの少子対策をお手本にして子供手当が実施されると、1.39まで回復した。それでも人口を維持するのに必要な2.01までは程遠い状態だ。


 


 去年は一年で21万人も人口が減少した。団塊の世代が寿命を迎える10数年後には年間100万人以上も人口減社会になる。そして同時に去年が105万人と戦後最低の出生数だったが、キチンとした手を打たなければ今後も最低の出生数を毎年更新するのが常態化するだろう。


 


 少子社会の問題は悲劇的だ。それは何も小難しい論理を弄ぶ必要はない。地方の限界集落を見れば如実に分かるだろう。耕作放棄地はアッという間に原野へ戻る。廃屋は10年と経たずしてシロアリの巣窟と化し、棟が崩れて背丈より高い雑草の中に埋没する。細々と暮らしの匂いのする家屋を訪ねても、老人世帯や独居老人ばかりだ。


 


 都会でも巨大な高層団地やマンションが老朽化したまま老人ホームのようになり、洒落た公園や各施設に維持・管理する手が回らないため廃墟のようになるだろう。


 もしかすると我らの子孫が赤錆びたレインボーブリッジが崩落するのを目撃するかもしれない。道路は安全性に問題のあるトンネルや橋が放置され、通行禁止箇所が国道や高速道路にも随所に出て、日本経済全体が沈滞化するだろう。


 


 いかに財務省が国民から税を絞り取ろうとしても、人口が半減すれば税収は1/3以下になるだろう。既に若者は車離れしている、ガソリン消費が減少すれば道路財源も減少する。維持・管理が出来なくなるのは当たり前だ。エコノミストの暇潰しのための「成長の限界点を探る」どころの騒ぎではない、少子社会が続けばこの国は終焉を迎えるしかないのだ。


 


 自公などの野党やバカな評論家や腐り切ったマスメディアが民主党の子供手当を「財源なきバラ撒きだ」と批判しブッ潰したが、未来への投資を怠った国家に未来はない。少子対策こそが決定的な成長戦略だと、なぜ経済学者や財務官僚たちは理解しなかったのだろうか。


 とりわけ罪深いのはこの国のマスメディアだ。民主党を政権から追い落とすために子供手当を徹底して批判した。そして民主党が大敗をきすと、やにわに少子対策が必要だとの論調に切り替えた。民主党叩きの急先鋒だった産経新聞までもが少子社会の危機を書き始めた。これほどご都合主義の新聞もないだろう。押し並べてこの国のマスメディアは不真面目だ。政局ごっこを煽り、すべての政策を政局で論じてしまう。この国の長期戦略がその眼中にないかのようだ。


 


 自公政権は子供手当や高校無償化に所得制限を設けようとしている。どのような意味を持つのだろうか。なぜ国家として国民の税を用いて「少子対策をやるゾ」「高等教育を国民にあまねく施すゾ」と誇らしく謳わないのだろうか。所得制限を設ければ本来の崇高な政策理念は変質し、それらの政策はすべて貧困対策でしか語れなくなる。政策導入当初の国家意思が何処かへケシ飛んでしまう愚かさに、自公の卑しい政治家たちは気付かないのだろうか。


 所得制限を設ける議論をするぐらいなら、なぜ、むしろ高所得者にかつての累進税率の一部なりとも復活させようとしないのだろうか。応能負担の原則を社会に徹底する方が国家施策としては上等で、社会政策として整合性が取れるのではないだろうか。


 


 自公が補正予算10兆円で公共事業を「国土強靭化」と称してバラ撒こうとしているが、マスメディアは申し合わせたように一切批判しない。この国のマスメディアは政権交代で財源問題も棚上げしたかのようだ。


 わくら葉が枝から落ちる寸前、風に靡いてユラユラしているように、この国のマスメディアも政局ごっこでユラユラと政策を取り替える。しかし少子対策は最低でも10年のロングスパンで論じるべき政策だ。それを数年と経たずして政権交代で論旨を変えるなど、あってはならない変節だ。そうした変節こそが官僚迎合との批判を免れ得ない。大衆迎合のポピュリズムの方がまだしも健全だ。そうは思わないだろうか、全国紙の主筆と称するお歴々よ。



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