消費増税よりも富裕層や資産への課税強化だ。

  社会不安要素の最大のものは貧困層の存在と大きな格差だろう。日本は貧困層に対して生活保護を支給することにより、適切な制度運用がなされる限り餓死することはない。しかし格差は小泉政権下で拡大されたまま、未だに縮小とする動きが鈍いのはなぜだろうか。


 安倍政権に代わってから、いよいよ消費増税導入が日程として見え始めたためか、富裕層に対して軽減されたままになっている最高税率を40㌫から45㌫に引き上げる議論が政府与党でなされているようだ。ただし、3000万円以上に適用すべきとする公明党に対して、自民党が「そうすると富裕層が海外へ流出してしまう」として反対しているようだ。


 


 富裕層が海外へ流出するというのなら流出させればよい。現在でも一部富裕層は海外へ住所を移して一年の大半を日本国内で過ごし、日本の所得税を支払わないという「法の抜け穴」を利用しているようだ。


 だが、日本国内で生じた所得に対して日本国が税を課すのは当然の権利であり、それに対して納税するのは日本国内で経済活動を行う者の義務だ。便宜的に住所を外国へ移して、一年の大半を国内で経済活動を営んでいる場合には所得税が補足されないという法の網の目は潰さなければならない。


 


 年間3000万円を越える部分とは月額に直すと250万円を越える部分ということになる。本当に250万円を越える部分に税率を40㌫から45㌫へ、僅か5㌫上げただけで海外へ流出する動機になるのだろうか。年間所得が250万円にも満たない多くの派遣社員にも、誰かれなく無差別に5㌫の消費税を10㌫に上げようとしている税制議論の中で、何という富裕層に対する気配りだろうか。


 


 祖父母から孫への教育費贈与を大幅に軽減しようとしている議論もマヤカシに過ぎない。それは言葉の上では孫への贈与だが、実際に本来負担しているのは親だから、つまり子供への「相続財産」の一部無税化に過ぎない。それを孫一人当たり1000万円にするか1500万円にするかと議論しているようだが、一般的に子供より孫の数のほうが多い。現在相続税の基礎控除は5000万円に法定相続人の数を1000万円に乗じたものの合計金額になっている。それに新たに孫の数に1000万円か1500万円を乗じた金額を更に控除するのと同じことだ。つまり富裕層減税の最たるもので、個人の努力によらない「遺産」により資産を獲得する人たちを優遇しようとすることが、社会が要請している格差縮小の議論とどのように整合性を得るのだろうか。


 


 小手先の税制議論や思いつきの議論は全体像を見えにくくする。かつては「直間比率」が問題とされて、それが悪しき間接税のチャンピオン「消費税」の導入の口実に利用されたが、現在国税に占める消費税の割合が欧州諸国と遜色ない22㌫前後に達しているにも拘らず、今度は無視するかのようにそうした議論は皆無だ。


 税率だけを比較して欧州諸国よりも日本の消費税は低い、とバカな主張をしていた評論家たちも次第に現状が認識されるに従って沈黙してきた。実際は欧州諸国は生活必需品や医療費や教育費には極めて低率の消費税を課すか或いは無税となっていて、日本のすべての消費に対して5㌫課す方が高負担にすらなっている。


 


 そもそも公的負担割合、ということを一時期評論家たちは口にして、日本は39㌫程度だからスウェーデンのような75㌫の国よりは大いに低く、公的負担は45㌫まで良いのだ、などと愚かな議論に息巻いていた。しかし比較すべきは公的負担割合よりも、それから公的給付を控除した純公的負担割合を問題とすべきではないだろうか。そうすると日本は17㌫となり、14ないし15㌫の範囲におさまっている欧州諸国よりも日本国民は高負担となっている。だから評論家諸氏は「公的負担割合は低い」などというバカな発言をしなくなったが「日本国民の純公的負担割合は高い」という統計は無視して国民に教えようとしない。それはマスメディアも共同正犯だ。


 


 国民から毟り取ることのみに血道を上げるよりも、国はいかにして国民を格差なく富ますかに心を砕くべきだ。それが政治の本筋で、経済成長なき増税はデフレ不況の大きな種でしかない、という経済原理をもっと理解すべきだ。平成の世の政治家たちは都の高殿に登られて庶民の暮らしに心を寄せた仁徳天皇の故事に倣わなければならない。



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