デフレ対策にまずは大胆に増刷すべきだ。
経済成長なきインフレは問題だが、インフレなき景気悪化はそれ以上に問題が大きい。日本の通貨当局と財務省はそのことに気付かないで、あるいは気付いていても国家財政の累積債務に目を奪われて、悪性インフレに見舞われるのではないかとの強迫観念に囚われてズルズルとデフレ基調の経済を20年も許容している。その間に給与が下がらなかった公務員は天国の状態にあったが、給与の切り下げと非正規社員への転落を余儀なくされてきた国民にとっては出口の見えない閉塞状況の中にあった。
安倍氏の経済政策ブレーンが誰かは知らないが、少なくとも財政規律を重視する官僚上がりの似非・学者でないことだけは確かだ。下方に対して硬直的な財政しか知らない官僚たちにはデフレ経済は悪いことではない。しかし山のような累積赤字を抱える国家財政から見るとデフレは放置していても実質赤字が膨張することを意味する。
円がインフレになれば経済・景気にはプラスに働く。個人支出もインフレ基調なら物価が上昇することが予想されるためモノを買うようになる。その最たるものは土地だ。土地は腐らないため買い手は出来るだけ購入を先延ばしし、買う時も必要最低限だけになる。今年よりも来年の方が地価が下がる環境では土地取引が活況を呈すことはない。
円がインフレになれば為替相場も円売り圧力が高まり超円高が解消へと向かう。経済学者の中にはインフレがとめどなく加速しハイパーインフレになるかのようなことを心配する人がいるが、日本の経済基盤はそれほど脆弱なものではない。内需拡大は対GDP比14㌫の海外取引しかない現状では限界だ。今後は外需拡大を求めるしかない。米国などのブーイングは気にせず果敢に対外輸出振興策を政府は取るべきだ。韓国の対GDP比52㌫までは行きすぎだが、かつての20㌫程度に回復させるべきだ。日本は加工貿易で国民を養って来た国だということを忘れてはならない。
デフレ経済下に増税するのは病気で弱っている患者に重りを担がせるようなものだ。安倍氏にデフレ対策でマネーサプライ増を進言したブレーンならそうしたことは分かっているはずだ。重ねて書くが、給与や年金が下方に硬直的な官僚たちにとってはデフレ経済は悪いものではない。ただ赤字国債は額面が同じだとしても実質的に赤字が膨張するが、それも国民に負担させれば良いと割り切れば何でもないだろう。民自公がやった「消費増税」がいかに公務員天国を前提にしたものか明らかだろう。ふざけるにも程がある暴挙を民自公はやったのだ。
インフレで国民所得が増えなければ益々貧困になるのは歴然としている。国民所得を増やすには企業が貯め込んでいる内部留保260兆円を給与に回すような税制を考えなければならない。銀行もそろそろ純損失繰越控除がなくなるころだから、税に払うよりも給与支給額を増やすほうが良い税制を考えるべきだ。
各種控除を廃止して貧乏人から税を取ることばかり考えてきたここ10年来の税制を転換すべきだ。個人の可処分所得を増やさなければこの国の力強い経済成長はありえない。縮小経済の悪循環から拡大へと舵を切ることが出来るのか、安倍政権の経済ブレーンに期待するしかない。