安全委員会の非合理的欺瞞性。

 大飯原発の運転再開を巡って、野田首相が再開の「安全性」を野田氏が「責任」を持つとして折紙をつけ、地元福井県の判断にかかっていた。その福井県の「原発の安全性」を判断する専門家たちの「安全委員会」は「安全性が確保されている」と判断して県知事へ報告したという。


 


 たとえば全国の河川には流域住民の生活と命を守るために堤防が構築されている。その設置基準は概ね30年に一度とか50年に一度といった過去の大雨のデータに耐えうるように設計されている。しかしその設計の根拠となるデータを超える大雨が降れば危険水位を超えて地域住民に避難を勧告しなければならない。


 


 原発も過去のデータから「安全性」を確保しているとされるが、それが過去何年のデータを解析しているのか、が問われている。福島県の福一原発では過去千年の古文書を紐解けば今回の程度の地震と津波は予想され、一部の学者により数年も前から危険性が指摘されていた。しかし東電も政府の安全性を審議すべき委員会も取り上げることはなかった。45憶年の地球のすべての歴史を検証しろといっているのではない、たかだか地球にとっては一瞬に過ぎない千年程度の歴史をキッチリと古文書を当たって調べて欲しいといっているに過ぎない。それと併せて未発見の活断層を徹底して調査すべきはいうまでもない。そうした手を尽くした上での「安全」報告なのだろうか。


 


 福井県の「安全委員会」の委員とはどのような人たちによって構成されているのか寡聞にして知らないが、原子力の専門家ばかりを集めても仕方ないことは福一原発事故で判明している。その反省に立って福井県でも「安全委員会」メンバーに地震学の専門家や建築構造学の専門家や電気の専門家たちも集めて多角的な「安全性」の議論を積み重ねて結論を出したものだろうか。


 


 当然、東電から福一原発事故の原因検証資料や事故に到った詳細な因果関係を解析した「福一原発事故調査資料」を取り寄せて大飯原発の「安全性」の確保に資するべく検討した上でのことなのだろうか。


 そうではなく過去の「安全委員会」の審査の繰り返しに過ぎないとしたらこれほど国民をバカにしたバカな委員会はないだろう。


 


 合理的な科学する姿勢と大きくかけ離れた、電力事業の経済合理性を基準とする合理的判断をしたとするなら、福一原発事故を教訓とすべき合理性を欠く欺瞞性に満ちた判断だといわざるを得ない。しかしこの国の首相は愚かにも「私の責任」で大飯原発再稼働を了とするから認めて欲しい、と国民に向かって演説した。到底科学的合理性のある演説とは言い難い、従って放射能漏れ事故を起こせば野田氏の「私の責任」で何ができるのか、という合理的説明もない責任論とは「欺瞞」そのものだと非難しなければならない。


 


 その政府・首相の非合理的欺瞞性に裏打ちされた「責任」論の上に立った「大飯原発再稼働」要請を受けた福井県の「安全委員会」の非合理的欺瞞性に満ちた「再稼働判断」で関西地区住民のみならず、日本の国家とすべての国民生活を危機に陥れる「可能性」のある原発再稼働を判断した。この国は基本的なところで狂っているとしか思えない。


 


 福一原発を襲った規模の津波に対して耐えうる防潮堤を「これから造る」とし、放射能漏れ事故に対処しうる放射能遮蔽機能を備えた「免震棟」もこれから建設する、と文言で書かれただけで「安全だ」と判断するという科学的根拠とは何だろうか。それらの施設が完成するまで大地震や津波が起こらないでくれ、と神仏に祈ることなのだろうか。


 


 そして根本的な「福一原発放射能漏れ事故調査」の報告はまだ何も出来ていない。それどころか、溶解して原子炉を破壊して漏れ出た核燃料が何処にあるのかすらまだ分かっていないし、放射能漏れ事故の直接原因すら何も分かっていない。


 津波による全電源喪失が原因だというのは嘘で、地震が起こってすぐに福一原発の職員は原発運転室に鳴り響く各種アラームによりパニックに陥り、一部職員は職場から逃走したと週刊誌などに証言が多数掲載されたではないか。彼らの大部分は地震直後に現場を放棄して、家族ともども原発から遠隔地へ避難しようとしたのではなかっただろうか。


 つまり津波による全電源喪失が放射能漏れ事故の「始まり」でないことは判明している。原子炉内部の細管破断か、直接的な事故原因はまだ何も分かっていないということが判っているだけなのだ。


 


 昨日、福井県の非合理的な欺瞞性に満ちた「安全委員会」による安全判断が下された。これほど狂気じみた原子力行政が延々と半世紀近くもこの国で演じられてきたということを国民は怒りとともに心に刻み、原発再稼働に根強く反対しなければならない。


 電気が不足する事態の引き起こすかもしれない「危険性」と原発事故により放射能漏れ事故が起きるかもしれない「危険性」とを比較すれば、どっちを選択すべきかは明々白々たる事実ではないだろうか。


 不幸にして甚大な災害に見舞われて大飯原発が放射能漏れ事故を起こさないと誰も保証できない。、野田氏一人が溶解した原子炉の中に飛び込んでも、責任の一端も取れないこともまた明らかだ。とれるわけもない「責任を取る」と歌舞伎役者さながらに見栄を切るバカな首相にこの国の未来を預けてはならないことも、また明らかだ。



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