主客転倒の議論だ。

 大飯原発稼働で「国民の生活を守る」と眦を決した野田首相の言葉に驚いた。甚大な地震と津波が引き金になったとはいえ、福一原発放射能漏れ事故で原発は地域のみならず世界に被害を及ぼすものだと改めて日本国民は認識したはずだ。


 原発はいうまでもなく電気を作る装置だ。電気は現代社会の隅々まで供給されて、国民生活の利便性に寄与している。それのみならずライフラインの一環として国民の命を担っていると言っても過言ではない。


 


 しかし、それでも首相の「国民の命を守るため」に大飯原発を再稼働する、と発言するのには違和感を覚える。福一原発事故は福島県の国民の命を危険に曝し、広範な地域を放射能で汚染し、世界の海へ汚染水をダダ漏れに垂れ流し、今も汚染は止まっていない。


 それでも「国民の命を守るため」に原発再稼働をする、という。なんだか主客転倒していないだろうか。原発は電気を作る装置に過ぎない。電気が足りないというのなら、節電に励めば良いし、去年から電気不足が分かっていればなぜ発電装置を手当てして来なかったのだろうか。


 


 同じことは「消費増税」議論にもいえることだ。消費税率を上げれば税収が増える、という保証は何もない。いや、これまでの橋本政権時の税率引き上げの時の経験から推測すれば、消費増税は確実に景気後退要因として作用し、現在のデフレ下の経済情勢では間違いなく景気悪化を招くだろう。つまり消費税率を上げればこの国の国民経済を破壊し、税収減と超円高をさらに更新させる方向へ作用するのは明らかだ。


 増税を目指すのならデフレ経済を克服し円高を是正し、景気を良くすれば良いのだが、野田政権は金の卵を産む鶏を殺してしまいかねない、主客転倒の議論に終始しているとしか思えない。


 


 主客転倒現象は他にもある。その最たるものはこの国の仕組みそのものだ。憲法では「主権在民」と規定され、国民が主権者だとされているが、どうやら主権者は官僚であって、主権者国民によって民主的に選ばれた政治家たちは官僚たちのシモベとなって官僚利権の増殖と温存に奉仕している。


 原発再稼働も「原子力ムラ」の利権構造温存のために何が何でもやらなければならない、という要請に野田政府が従ったとしか思えない。万が一の事態が起これば関西圏が壊滅する位置の原発を稼働することにどのような正当化する論理があるというのだろうか。日本全国の原発は「安全だ」と政府も学者も評論家も大手マスコミも数十年に渡って宣伝し続けて来たのではなかっただろうか。原発反対運動者たちを「非国民」扱いにしてきたのではなかっただろうか。


 


 何らかの思惑があって、それを誤魔化すために「国民のため」という接頭辞をつければ何でもOKという風潮は良くない。未来の国民のための消費増税、国民生活を守るための原発再稼働、国民のためのTPP参加、国民のための日米合意遂行・辺野古沖移設、等々、何にでも「国民のため」という接頭辞をつければ良いかのような雰囲気にさせられるが、賢明な国民になるためにはしばし立ち止まって考えよう。ハテナ主客転倒していないだろうか、と。



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