順番が違うぞ。
野田氏が小沢氏と来週にでも会って話し合うと決めたことで、自民党が態度を硬化するという。野田政権を解散へ追い詰めるというのだ。何とも分からない。
これまで自民党は幹事長たちが民主党内の対立をことさら論って「小沢氏を切ってくれば増税について話し合う」とコメントしていた。党内基盤の弱い野田氏を民主党の中で不安定な立場に追いやって、自民党に縋らなければ何も出来ない状態にして「消費増税と引き換えに解散」させようとする作戦だ。つまり自民党にとって「消費増税」も解散へ追い込む道具の一つでしかないということだ。
しかし問題なのは野田氏だ。この期に及んで小沢氏と話し合うのは順序が逆ではないだろうか。小沢氏の協力を得たいのなら「消費増税」を決める前に会って、小沢氏の了解を先に得てから宣言すべきだ。あるいは党内で民主的手続きを経て、議員総会を開いて「消費増税」を議論し、多数決を取って民主党の意思を確認して、それに従うべきだった。岡田氏や安住氏などが「党内で決めたことだから小沢氏はそれに従うべきだ」と勝手なことを言っているが、政策決定手続きをキチンとしないで、前原氏が「自分に一任してくれ」と喚いて会議を打ち切ったに過ぎない。それとも代表選で野田氏が消費増税を打ち出していたから、それで決まっているのだ、というのは違うだろう。公党であるなら最初から党内で民主的手続きを踏むべきだった。
またまたお節介な欧米の格付け会社が日本国債の格下げをしたとニュースが報じているが、その格下げの原因が「消費増税」の見通しがつかないからだという。しかし格下げになった所で日本の株価が下がり日本国債の金利が跳ね上がったか、というとそうしたことは起こらなかった。格付け会社の格付けが投資家たちに影響を与えなかったが、米国追従のジャーナリストやエコノミストたちには影響を与えたのは間違いないようだ。つまり格付け会社とはそのような、投資的な存在ではなく極めて政治的な存在だということが判明しただけだ。
野田氏は6億円以上も官房機密費を使って何をしていたのだろうか。参議院の無所属やかつての民主党議員や自民党で増税容認派たちと接触して秘かに官房機密費を配っていなかったのだろうか。そうした駆け引きをして参議院で多数派を形成して来なかったとしたら、この半年以上、野田氏は無能・無策に過ごしてきたことになる。それで無能・無策で小沢氏と会談するというのならガキの使いだ。成果は何も上がらないだろう。
政治が国民の幸福を求める為にあるのなら年間3万人以上も自殺しているこの国の病理を治癒すべく努力するのが政治のはずだ。それを財務官僚たちの幸福のために政治をするのなら勝手に立ち枯れて仕舞うしかないだろう。おそらく小沢氏は野田氏の「消費増税」に手を貸さない。自民党も解散を確約しなければ賛成に回らないだろう。野田氏の選択肢は既に目の前から消えている。消費増税に命をかけると宣言したが、野田氏が命をかけるべきは国民の幸せのための政治ではなかったか。順序が違えば、芝居は喜劇にも悲劇にもならない。ただただ観客の顰蹙を買うだけだ。