暮らしを下支えするセイフティ・ネットの一体化が必要だ。

  自民党麻生政権下で派遣切りが問題となった時に、若者でも暮らしを支えるために「積極的に適用する」とした指針が出されて以来、若者に対する生活保護の適用が拡大されたという。


 セイフティ・ネットの設定により生活破たんを防ぐのは悪いことではない。しかし現行の生活保護のあり様には必ずしも賛成できない面もある。まず財産を持つ者に支給されないことだ。地方では捨て値でも売れない田畑や屋敷は幾らでもある。それでも地域社会の崩壊を防ぐために耕作放棄できない田はある。用水路と排水路のために「瀬越し」の田は放棄できない。そのために生活保護の対象とされない生活困窮者は放置されたままだ。


 


 都会の生活困窮者と田舎の生活困窮者とは性質が異なる。都会には仕事を選ばなければ仕事はいくらでもある。田舎にはそれまであった縫製工場や中小企業までも親会社が海外移転したことにより従って海外へ移り、職場そのものがなくなっている。かつて地方自治体は工業団地を造成して競うように工場を誘致した。国もその動きを加速するように都市から地方へ移転する会社を税制で優遇した。


 今は円高で「海外へ移転する」ことを評論家たちは勧めている。国までも円高を放置して輸出産業が国内から消滅することを願っているかのようだ。


 


 農林業従事者には国民年金加入者が多い。老齢化に伴い仕事が出来なくなり年金に頼らなければならないが、その年金の平均支給額が4.6万円ではどうにもならない。どうやって暮らせというのだろうか。さらに高齢化により病気がちになっても医療施設までは遠く、たとえ行ったところで自己負担が重くのしかかる。


 都市部でも高齢者の生活困窮者は餓死するしかない状態だ。国民年金加入者は「自営業者」が多いから年取っても働けるだろう、という議論もあるが町の商店街がどんな状態か見てもらいたい。どうやって暮らせというのだろうか。


 


 しかも国民年金の加入者で「自営業者」の割合は3割程度だという。後は派遣社員やパート社員だという。今後も正規社員の様々な人件費の企業負担が増大手することから、正規社員の採用が減少して非正規・派遣社員が増えることが予想される。そうした厚生年金の仕組みにしたのは政府だ。今も破綻が見えて来た共済年金を厚生年金におんぶさせて企業負担を上げざるを得ない構造になりつつある。


 現行の国民年金以外の年金は「現役時代の保険料に比例して支給する年金形態」を維持するつもりだろうか。それも現役時代の5割支給を目指すというのだろうか。子育ても終わって余生を送るのに年額300万円を超える年金が本当に「社会保障」として必要なのだろうか。少子社会の対策として高額年金部分はカットして子育て世代にもっと厚く配分すべきではないだろうか。


 


 社会保障は最低限度の「文化的にして最低限の暮らしを送る」セイフティ・ネットであるべきだ。現役時代に高給取りだった連中が年金で優雅な暮らしが送れるように「保障」しようとするから高齢者の増大以上に年金会計が膨張するのだ。


 社会保障たる年金は医療費のそれと同じように、保険料は「応能負担」であるべきだが、支給は「最低一律」であるべきではないだろうか。医療保険は応能負担で高額所得者は高額な医療保険料を負担している。しかし医療機関に罹ればすべて一律の、差別のない医療に浴している。年金だけを「保険料」に比例して手厚くしなければならないという議論が一向に改まらないのはなぜだろうか。しかも今では「財産権だ」などと珍妙な理屈まで展開している。それなら国民年金が一律60歳支給から65歳支給へと先延ばしにされた5年間の幻の年金は「財産権」の侵害ではないだろうか。


 


 保険料に比例した高額年金が議論されるのは高額所得者が集まって年金制度を議論しているからだ。つまり高給官僚たちが基本的な制度設計の絵を描いているからだ。


 年金制度改革は貧乏人を集めて議論すべきだ。最低の暮らしを保障するのが年金の原理なら、そうすべきではないだろうか。自民党総裁が年金の最低支給額一律引き上げに対して「社会主義社会だ」とバカな批判をしているが、そもそも社会保障という概念は社会主義の産物だ。


 自民党が神のように崇める資本主義社会は弱肉強食の社会で、その弊害を埋めるために社会主義の良い面を採り入れたのが現代の先進諸国で用いられている社会保障だ。だから最低保障の一律支給が本来的なあり方だ。


 


 生活保護の切り下げよりも適用の厳格化と、若者に対しては職業斡旋の「現物支給」を法制化すべきだ。特に外国人に対しては職業斡旋を柱とすべきだ。高齢者に対しては生活保護費よりも最低支給額を引き上げた一律年金で対応するのが本来的なありようだ。現行の満額支給ですら生活保護費よりも少ない国民年金とは何だろうか。政治家たちは手厚い「議員年金」を保障されているから、国民年金の議論が分からないのかもしれない。やはり、年金制度の議論は貧乏人の老若男女にさせなければならない。



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