原発耐性検査の茶番を憂える。

  関西電力が大飯原発3号4号機で実施したストレステストの結果の評価をめくり経産省の原子力安全・保安院は専門家の意見を徴して「妥当」とする判断を下したという。


 福一原発の爆発放射能漏れのメカニズムが実地検証による解明がなされていない段階で地震や津波の予測をコンピュータ解析して「安全だ」と判断したそうだ。それは果たして妥当なことなのだろうか。


 


 まず、現在も経産省内に原子力安全・保安院なる組織が存在していることに驚きを覚えた。福一原発事故に対して全く当事者能力を発揮しなかったどころか、SPEEDI情報の速やかな開示による地域住民の被爆を未然に防ごうという姿勢すら見せなかった。その確信犯的な犯罪行為の断罪すらないまま、保安院の組織としての欠陥の検証もなくストレステストを妥当と「判断」したとはいかなる基準に従って判断したというのだろうか。


 


 大飯原発は従前よりも4倍も高い11.4メートルの津波にも耐えられるとしているようだが、福一原発は津波による致命的な損傷もさることながら、地震により原子炉内の細管が破断していたのではないかと疑われている。


 つまり爆発放射能漏れという原発にあってはならない、発電装置としては致命的な欠陥事故が起こったことを「安全・保安院」は看板を下ろすほど責任を痛感していなければならないはずだが、依然として経産省内に存在して大きな顔をして「妥当だ」とストレステストの判断を示している。この傲岸不遜にして自信過剰な体質こそがこの国と国民にとって危険ではないだろうか。


 


 そして「専門家」の意見を徴して「耐性判断をした」というが、どのような専門家を呼んでどのような意見を徴したというのだろうか。原発反対者たちがその会議を傍聴させるように求め、排除する当局との間で揉めて開催が3時間も遅れたという。一旦原発事故が起これば専門家の間で被害が留まるのではなく、専門家でも何でもない地域住民が被爆することを考慮するならストレステストの判断に加わらないまでも会議は公開すべきではないだろうか。その会議で何が議論されどのような事実からどのように判断したのか、情報は専門家や役立たずの「安全・保安院」の専有物ではなく、むしろ地域住民にこそ開示されるべきだ。そしてその情報は直ちに原発30キロ圏内の地方自治体や県に報告されているのか、情報の在り様についてSPEEDIの例もあるように、地域住民の安全第一に公開され迅速に運用されるべきだ。


 


 それにしても原発再開を安易に進めるべきではない。専門家と称する人たちもどれほど福一原発事故を予測していただろうか。予測していなかったとしたら、停止すべきと助言していなかったとしたら、専門家たちの目は節穴だったことになる。事故が起こって判断基準のハードルを上げるのなら専門家でなくても出来る。素人でも簡単に事故から原因を辿れば対策は取れる。しかし、原発事故は決して起こってはならない事故だったのだ。その福一事故原因の究明も済んでいない、まだ原子炉建屋内に入って原子炉を直接診断すらしていない状況で何が究明できるというのだろうか。


 


 福一原発事故では高度な知識が必要でない部分の、常識的な欠陥があったことも指摘されている。第一に非常電源の発電機が地下にあったこと、第二に配電盤が地下にあったことなどだ。第三に予備電源を検査でケーブルを取り換えるため外しただけで、新しいケーブルを接続していなかったこと等々。専門家が立ち入るまでもない、常識の範囲でもおかしいと思う決定的な措置が原子炉の直近で複数行われていた事実を「安全・保安院」はどのように判断するのだろうか。


 いかに科学技術の粋を集めようと、いかに専門家の助言を得ようと、いかに専門家による定期点検を繰り返そうと、その報告書を「安全・保安院」が徴しようと、手抜かりと杜撰さは現場にこそある。


 霞ヶ関の安全地帯でのうのうとしている高給取りの官僚たちに原発を動かす責任は取れない。第一彼らは実際に業者たちを現場で督励して安全点検作業をやったことがないのだ。官僚たちが丸投げした点検作業の報告書作成を丸投げされた外郭団体が業者の作業報告書を丸々コピーしていて「コピーしていない、妥当な作業だ」と記者会見で強弁していた。


 


 欠陥だらけの官僚組織をまず正すのが「原子力ムラ」の仕事ではないか。そして停止と廃炉へ向けて原発を安全にこの世からなくすために自分たちが現地へ赴いて炭鉱のカナリヤとして作業を見守るべきだ。



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