社会保障改革は差別の固定化であってはならない。

  現行の三種類存在する年金制度が果たして最善のものなのか、という検討からまず始めなければならないだろう。パーセントの議論こそあれ、いずれにせよ税の投入により維持してゆくしかない年金制度なら「税」の持つ意味をも制度設計に勘案しなければならない。年金「保険」制度による職業別、所得別による年金支給額の差別を今後とも続けるのか、それとも税による国民に等しく「基礎的生活保障」とするのか、という議論もしなければならない。


 


 官僚と大マスコミによる刷り込みにより、国民は消費税による社会保障は国民が等しく広く負担する「安定財源」だとして、社会保障の原資とするのに適している、という思い込みがある。が、小手先の手直しで済ませるのもそろそろ限界で、「そもそも」といった原点から考えなければならないだろう。


 まず社会保障は大きく分けて二種類あることから議論しなければならない。一つは医療関係であり、もう一つは年金だ。医療関係は不思議な制度になっていて、個々人の医療保険支払額は所得税の額により大きく異なる。それを厚生官僚は「応能負担」という言葉を発明して国民に説明した。負担する能力のある者は多く負担して負担する力のない国民をも支える、という考え方だ。もう一つは「介護保険」にみられるように負担が所得によって異ならない定額保険負担制度だ。


 


 医療関係は支給に関しても年金と大きく異なる。所得が多く、従って多くの保険金を支払っている人たちがより多くの医療保険の支払いを受けるのではなく、症状と医療に要した金額により保険金支払いの多寡が決まってくる仕組みになっている。当然といえば当然だが、そうしたことに多くの保険金を支払っている者から異議は提起されていない。


 


 しかし年金は実に様々な考え方が現行年金制度を維持するために官僚たちの都合主義によって持ち込まれている。共済年金と厚生年金は現役当時の保険金支払いの多寡により年金の多寡も決まってくる、ということになっている。現役当時の50%支給を国は維持しようとしているようだ。単純に考えるなら、現役当時50万円の所得があった者は25万円の年金が支給されるということだ。


 その一方で国民年金は定額負担金制度となっていて、国により支給される年金は満額ですら6万7千円で、平均支給額は4万6千円となっている。国民年金は現役当時の支払保険金が定額のため、受給年齢になっても定額だという。


 共済と厚生年金は現役当時の50%支給を目指すが、国民年金は「自営業者」や共済年金・厚生年金に加入していなかった人たちだから暮らせない年金で当然だということなのだろうか。


 


 年金制度が悪しき差別年金だというのは共済年金受給者や厚生年金受給者にも不満がある。なにも少ない給与に甘んじていたわけでもないのに、定年退職後までも少ない年金で暮らしていかなければならない「不平等」感が払拭できないだろう。現役当時に抱いていた「なんであいつが部長で俺が係長なのだ」という不満は死ぬまで年金支給額の多寡で続くことになる。これが制度として十分な年金の在り方だろうか。さらに、共済年金と厚生年金の平均支給額の大きな乖離も挙げなければならない。官民差別を統一しないで財布だけ一つにする「年金一元化」には賛成できない。


 


 低所得者に対して逆進性のある消費税を社会保険に充当するのが「適切」な税制と保険制度の在り方なのだろうか。医療関係は極めて平等に制度設計されているが、こと年金に関してはこれほど官尊民卑にして暮らせない国民年金の放置は断じて容認できない。第一、低所得者に負担感の重い消費税を高額な年金受給者の原資として投入することには違和感が大きい。


 さらにいえば、北欧の消費税は日本のそれと比較して税率が高いという議論に対して、スェーデンの消費税の国税に占める割合が21%と、日本の消費税が国税に占める割合とほぼ同じことを上げなければならない。なぜそうなるのかというと、北欧の消費税は生活するのに必要な食料や教育や医療といった基礎材に対しては非課税か、たとえあったとしても極めて低率に設定されている。それに対して日本はすべての品目・サービスに対して5%課されている。それにより日本国民が負担している消費税は北欧の国民が負担している消費税と大差ない課税になっているのだ。


 


 そうした問題点を全く議論しないで「消費税こそ国民に平等な税」という刷り込みを官僚や大マスコミはやめなければならない。


 本当に根本的な年金の在り方を議論すべきだ。老後の年老いた人たちの「生存権」を担保できる年金として、生活できる年金としての在り方を「応能負担」なのか「受益者負担」なのか、厚労官僚たちが発明したバカな保険制度を説明する言葉の意味と使用方法を国民はじっくりと吟味すべきではないだろうか。



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