不法投棄を誘発する仕組みに問題はないのか。
かつては不要テレビを「廃品回収」に出すと何がしかの金品が手に入ったものだ。それがいつの間にかタダになり、リサイクル法の施行により数千円のカネが要るようになった。
廃品回収業者はテレビを引き取るときに数千円を要求し、引き取ってもらう者はそれなりの負担をしなければならない。それなら「不法投棄」して負担を回避しようと考える不心得者が出るのはやむを得ないだろう。
不要となったアナログテレビを「廃品回収」に出すと何がしかのカネが手に入る、というのなら「不法投棄」はおそらく起こらなかっただろう。罰則や負担金を課す、というのは法律を作る者にとって簡単なことだ。業界も業界が負担するよりも消費者が負担するのを望むだろうから、リサイクル法がそうした方向で制定されたのも理解できる。しかし、それなら「不法投棄」する不心得者が出るのも予測しなければならなかった。日本の全世帯がこの7月24日を区切りとしてデジタルに一斉に切り替えるなら、膨大な数のアナログテレビが不要として廃棄される。それを処理する施設の処理能力が十分でなければ、やはりアナログテレビは世の中に溢れかえることになる。
なぜ全国一斉でなく、地域ごとに数ヶ月の時間差を設けてデジタル化を実施しなかったのだろうか。その間に政府は全国の回収業者が十分に各地の廃棄アナログテレビを正規の廃棄ルートに乗せるべく指導しなかったのだろうか。そしてリサイクル法のリサイクルたらしめるべく各種金属の回収プラントを造って備えておくべきではなかっただろうか。地デジへの切り替えを国家プロジェクトと考えなかったとすれば安易な行政にはそれ相応の結果が伴うと心すべきだろう。