菅氏の責任なのか、

 ここ十日ばかりの暑さにはうんざりだ。その影響なのだろう、7月4日から10日までの1週間に熱中症で病院に搬送された人が前年同期の897人から5倍以上の4520人に達し、うち8人が死亡していることがわかったという。だがそのことと菅氏が「脱原発依存」談話を発表したことと関係があるのだろうか。


 


 どのような状態で熱中症になったのか仔細に検証する必要があるが、万が一「節電」の呼び掛けに従順に応える余りエアコンをつけないで室温が高くなり体温上昇を招いたとしたら菅氏のせいではない。原発停止による電力不足を煽った東電と、それを無批判に報道し垂れ流した大手マスコミの共同正犯だ。


 


 何年か前、夏の猛暑と高校野球中継で東電が電力不足寸前になったことがある。格別に原発が停止したからではなく、東電が地域独占企業として正確な電力需要予測に基づく責任ある供給体制を実施していなかったからに過ぎない。


 その時点で地域独占体制を大手マスコミは批判すべきだった。電力不足を招いた「地域独占」体制とは何かと、問題を提起すべきだった。しかし大手マスコミは本質的な議論に切り込まなかった。それどころか相変わらず「オール電化住宅は素晴らしい」とする電力会社の宣伝広告を掲載し続けた。


 


 電気消費を促す施設の拡販に電力会社は血眼になり、電力不足を招いていては世話はない。しかし大手マスコミは単なる電力不足を報じるだけでなく、その原因が「原発停止」にあって国民の暮らしを快適なものにするには電気が必要だが、放射能被害防止のためには原発は抑制すべきか、といった馬鹿げた議論を展開して根本的な「発電責任」を誤魔化してきた。


 


 明快に解っている事実ではないか。原発は福島第一原発放射能漏れ事故が起こるまでもなく、最終処分場もその処分方法も確立されていない状態で放射性廃棄物を垂れ流している時点で「即時停止」すべきものだった。爾来10万年も故郷の山や川を汚染する可能性が潜む最終処分地を誰が喜んで引き受けるというのだろうか。あり得ない結論を延々と先延ばしして、各地の原発施設と六ヶ所村に放射性廃棄物の山を築いて発電し続ける危険性を喚起してこなかった大手マスコミの責任たるや重大だ。現に、福一4号機は停止中だったが電源切断により深刻な放射能漏れ事故を起こしたのだ。


 


 菅氏が「脱原発」発言をしたことにより電力不足に陥ったのではない、慢性的に「地域独占」企業が責任感を喪失していたに過ぎない。だから簡単に「計画停電」を発表したり、「節電」を呼び掛けたりした。だが実態はどうやら東電には他社へ電力を回すほど余力があるらしい、ということが分かってきた。実際に東電は2003年夏を原発なしで乗り切っていたという事実が判明している。


 


 マッチポンプという言葉がある。「大変だ、大変だ」と騒ぎを起こして「こうこうこうすれば良い」と騒ぎを鎮静化して得意満面の顔をする輩を指す言葉だ。そういう意味なら日本の大手マスコミはマッチポンプ以下だ。「節電、節電」と列島中で騒ぎを起こして、後は知らん顔をして、熱中症で人が亡くなると菅氏が悪いという。そこにどのようなマトモな論理があるというのだろうか。


 地域独占体制は一企業の電気供給計画を受け入れるしかない、という状況を国民に強いる体制でもある。その結果として節電を呼び掛けなければならない状態が生じたのなら、節電を呼び掛けることもさることながら、電気不足を招いた地域独占体制が良いのか、という根本的な議論を始めなければならない。それが健全な評論というものだろう。


 


 小沢氏を卑劣な疑惑捏造で散々貶めた、歪みきった大手マスコミに多くは期待できないが、国民のために報道機関が存在するというのなら国民のための議論をすべきではないだろうか。東電をはじめ、電力会社のために立場に立った論点でこの国の何が変わるというのだろうか。それとも大手マスコミの論陣を張っている連中の頭は戦争直後のショックから立ち直っていないで、いまだに戦中の電力国家管理体制が棲息しているのだろうか。


 いや、まさしくそうなのだろう。戦前戦中は「軍部」の大本営発表を垂れ流し、戦後はGHQの広報機関となって日本的なもののすべてを否定して回った。そして日本を骨抜きにして米国隷属を余儀なくさせる報道に終始してきた。その結実の一つが「菅氏が無能だから熱中症で人が死んだ」という報道だ。まともな論理が何処にあるというのだろうか。



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