この国をどうしようというのか。
子供手当を「ばら撒きだ」と批判する人たちに問いたい。特殊出生率が人口再生可能な2.07を下回る「人口減社会」が本当にこの国の将来に資するのか、という問いを。
少子化はすなわち人口減社会であり、絶えず対前年比較で子供の数が減少し続けるということだ。つまり少子化とはある程度まで減少するとその時点で自動的に人口減が下げ止まって、そこからは人口が維持できるということではない。止めどなく人口が減少し続けるということなのだ。
現在は死亡者数も出生者数も約100万人前後で拮抗しているが、去年は127000人ほど死亡者数が上回り日本の人口は減少した。ちょっとした市が一つ消えた勘定だが、それが団塊の世代が死亡する時期に差し掛かると、単純計算では団塊の世代は年間250万人も生まれているからそれだけ減少するが、生まれる数は100万人を下回る可能性が高い。つまり150万人以上も日本の人口が減少することになる。日本から政令指定都市が毎年一つ消えるのと同じことになるのだ。
人口減社会は国民総生産も当然減少するし、国民の公的負担総額も減少することになり、そのうち公的施設の維持管理費が必要とされる金額を賄えなくなる事態が必ずやってくる。
この国は能天気にも単式簿記を実施する北朝鮮と並ぶ世界でも少数国の一つだが、そのため公的施設の減価償却資産の総額すら的確に掴めない。つまりこの国と地方自治体の減価償却費の総額が年間幾らになるのかが分からないから、何とかやっていけると気にかけていないようだ。しかし人口減による公的負担総額の減少の右肩下がりのグラフと、ドンドン造り続けている道路や橋梁などの減価償却資産の維持・管理費の右肩上がりのグラフとはいつかは必ずクロスする。それ以降の未来の日本国民は維持・管理の行き届かない膨大な公共施設を抱えて苦労しなければならなくなる。
官僚たちは公会計が「継続性の原則」や「総額主義の原則」の適用される複式簿記に移行すれば、これまでの別財布「特会」を取り上げられ、連結決算により離れや関連団体の会計までガラス張りになるのを嫌って大福帳以来の「歳入・歳出」会計を続けている。いわば小遣いの「金銭出納簿」程度のものでこの国の会計を記帳しているのだ。
税務署へ中小企業のオッサンが金銭出納帳を持って行って「税務申告」しようとすると、複式会計を実施するように指導を受ける。そのため会計係を雇ったりしなければならなくなるのだが、税務署は国民を指導するよりもまずは身内の「公会計」を指導すべきだ。
高速道路の無料化も地方の観光地振興対策として望まれていたが、鉄道無料パスをもらっている政治家諸氏には理解不能のようだ。子供を連れて大きな荷物を持って移動するには車が至極便利だし高速道路料金を除けば鉄道運賃より安価だ。その分だけでも地方のホテルや旅館に宿泊できるし、飲食に地方で消費できる。東京近辺の寂れていた観光地が高速道路1000円乗り放題でどれほど一息ついたか、御用評論家諸兄は講演旅行ばかりのアゴ・アシ付きでは実感として分からないのだろう。
やや改善したとはいえ、去年の特殊出生率は1.39とまだまだ人口減社会のままだ。子供手当を「ばら撒きだ」と批判する人たちは日本国民の人口を減らせるだけ減らして、日本を何処か人口大国へ売り飛ばそうとしているのではないかと疑いを抱くほどだ。
「子は宝」とは昔の言葉ではなく、現代日本にとって最も必要な政策課題なのだと分からない政治家に、日本の未来を語る資格はない。