国家戦略そのものの検証機関を確保せよ。
菅氏の経済政策の指南役を任じている経済学者が提唱しているのは「増税と景気回復と経済成長は同時に可能だ」とする極めて経済学者の中でもユニークな理論を展開している人のようだ。
しかしこれまで増税と景気回復が同居した例はなかったが、その経済学者はいつ増税するのかタイミングが違うだけだと主張している。つまり景気が回復して増税するのも、今増税して景気を回復させるのもほとんど変わらないというのだ。
そもそも景気が回復すれば増税の必要がない。自然増収があるからだ。反対に現在のように景気が悪い時には税は減収して歳入欠陥が生じる。直接課税の法人税や所得税が景気の影響をじかに受けるからだ。
だから菅氏を指南している経済学者は間接税(消費税など)の比率の高い欧州諸国モデルを想定しているとしか思えない。しかしそれでも、増税は多少ともデフレ効果をもたらし景気回復にマイナス要因でしなかいのは確かなことだ。
国家戦略を立てて政策を決定するのは政治の在り方として悪くないだろう。むしろ政治主導を謳うのなら官僚をも納得させられる戦略が必要だ。しかしその戦略が間違いのないものか、何処で検証しているのか戦略策定段階が国民に目に見えないのはいささか心もとない。それが特定のユニークな論理をお持ちの方を指南役として任せるというのは不安感を拭えない。
世の中には注目を集めようとことさら奇抜な論理を展開する学者がいる。反対に世間の常識とされている論理に矛盾を感じていても、異論を挟むほどの勇気がなく幇間のような意見を述べる学者もいる。この世は玉石混交だ。どれが石でどれが玉かを見分ける目が必要だ。
菅氏はユニークな「増税は景気を良くし経済を成長させる」という理論を展開する学者を指南役に迎えたようだ。まさしく財務省が泣いて喜ぶような指南役だ。