飼い慣らされた日本から自立するとき。

 小沢一郎氏の政治課題の最終章は何だろうかと考えていた。


 田中角栄氏がロッキード事件で一敗地に塗れてから、小沢氏は師の公判を欠かさず傍聴したという。いうまでもなく田中角栄氏は米国議会の公聴会で語られた事実によって罪に問われた。いわば米国によって告発されたのだ。


 田中角栄氏はなぜ米国の逆鱗に触れたのか。それは米国の頭越しに、勝手に中国との国交正常化を果たしたからだ。日本が米国から自立して中国と国交を回復し国際舞台に飛び出ようとしたからだ。しかし、その前にニクソンは日本の頭越しに中国訪問を行っていた。


 


 多分に田中角栄氏の政界失脚には米国の影が見え隠れする。いわば米国発の告発に日本の司法が便宜を与え、米国の描いた筋書き通りに事は運ばれて被告人となった。そのようにしか思えない。いつの日にか日本人が1945年からの米国による支配に関して詳細な日本現代史の研究をする日が来るだろうと期待するしかないが。


 


 小沢氏はそうした現代史の日米の鬩ぎ合いを目の当たりにしてきた。小沢氏が見てきたのは生半可な抒情ではなく、一人の稀有な庶民宰相を抹殺した非情な米国の国益擁護と抑圧された日本の現実ではなかっただろうか。


 米国が最も注視し懼れている日本の政治家は小沢一郎氏だ。彼は米国の恥部から暗部まで知り抜いている。よって米国とサシで渡り合える政治家は小沢氏だけだともいえる。


 


 小沢氏がなぜ中国を重視するのか、というと師の影響もあるだろうが多分に米国へのアンチテーゼではないだろうか。中国に比重を移したかのように振る舞うことにより、米国を牽制するという手法だ。


 小沢氏は米国に湾岸戦争の莫大な戦費の割勘を支払った男だ。米国のプラグマティズムと表裏一体となっている厚かましさも熟知している。米軍再編に際して日本に突きつけられた勘定書きの中身まで検討しうる唯一の日本の政治家でもある。


 


 諸々のことを考えると、米国と米国人が小沢氏の代表選出馬を歓迎しないのは火を見るよりも明らかだ。小沢氏が日本の首相になれば手強い交渉相手になると、米国人は知り抜いている。


 先の大戦を考えてみると良い。米国は日本が米国を研究する数百倍も敵国となる日本を研究していた。当然のこと、現代日本の目ぼしい政治家も研究済みだ。世界戦略とはそうしたものなのだ。まず人の研究から入る。なぜなら世界は人が動かしているからだ。


 


 米国政府要人はおしなべて小沢氏を褒めないだろう。できれば日本の政治風景から消えてなくなってもらいたいと念じている。そうすればあと数十年も日本を米国の意のままに扱えるからだ。そうした仕組みはGHQで日本に進駐している間に徹底的に日本国内に創り上げている。その代表が「日本国憲法」だ。


 


 しかし少しずつだが、日本人は日本を守るのは日本人だという国家としての基本原理に気付きつつある。それは日本骨抜きの装置として与えた憲法が「戦争放棄」という世界に唯一の平和憲法ではなく、世界に唯一の非常識な憲法だと気付きつつあるからだ。すでに小沢氏は十数年前から日本を「普通の国」にすべきだと提唱しているが。それを米国は怖れているのだ。


 


 さて、日本の民主党員と民主党国会議員は経済や国際金融や国際政治に素人の菅氏を選ぶのか、以上のような小沢氏を選ぶのか、重大な岐路に立っている。いや、自民党離党以来やっと小沢氏が首相になる決意をしたからには、日本は彼を首相にしなければならないのだが。



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