一日も早いカルテの電子化と国家管理を
病原汚染された輸血によるC型肝炎や血液製剤によるHIVなどの感染が問題となって久しい。かつては問題として認識されていなかったことが感染源として突き止められ、患者救済がまたれている。医師や医療機関も全知全能ではなく、時々の医療水準で全力を尽くした結果として、新たな病理の原因となってしまった。国家による医療情報管理が徹底してなされ、あらゆる事態に即応できる態勢がとられるようにならないものかと思う。
医療情報という個人情報の中でも最高にシリアスな部分に該当するため、カルテの電子化と国家管理が遅々として進まないのも理解できる。しかし、この問題を先送りしていては各医療機関がバラバラに持っている医療情報が一体的に利用することはかなわない。つまりカルテの電子化は個々人の情であると同時に、医療行政全般の情報でもある。国家として国民のカルテが利用できるなら、毎年爆発的に増大する医療費に対して的確な手が打てる可能性がでてくる。
それと同時に今後予想される新型インフルエンザなどの感染症に対して、カルテの電子化が実施されていれば日々刻々に全国の情報が国のしかるべき機関にもたらされることになる。国家として対応すべき強力な感染症対策に対して的確な手を打つ際の情報としてこれに勝るものはないだろう。
ぜひとも全国の医師と医療機関、それと厚労省は縄張り意識を乗り越えてこの問題に取り組んでいただきたい。そして皮相な人権団体も個人情報の国家管理だとして反対するのではなく、運用すべき事項と禁止すべき事項を法律にきちっと限定列挙して官僚だけではなく民間見識者も含めた管理・監視委員会で運用実績を検証する仕組みを作っておかなければならないのは言うまでもない。
最後に、こうした提案には莫大な資金が必要だとするのは間違いで、現代の高度に発達したIT機器を利用すればそれほど大掛かりな装置は必要としないことも書き添えておこう。現在多くの各医療機関では既にWinXPを使った電子カルテを利用しているし、ほとんど全国をスーパーハイウエイが網羅している。あと出来ないとすれば、医療従事者と国民の意識の問題だけだ。