安定か暴走か、ではなく

 半世紀以上に亙る自民党を中心とする政権がこの国を経済的に繁栄させた半面、この国を理念なきご都合主義の国に貶めてしまった。その最たるものが米国追従の外交と、この国の安全を米国に依存し続ける防衛体制にある。そのために国民から国を守る気概が失われ、経済最優先の考えと生活が身に染みついた。


 そうした55年体制と決別したのが去年に夏の総選挙だった。国民が国民の手によって戦後初めて本格的な政権交代を果たした劇的な民主主義の結実だった。


 その新政権の首相となった鳩山氏が辺野古沖への移設を拒否して普天間基地を国外へ、最低でも県外へ移設しようとしたのは至極当たり前のことだ。そもそも千人前後の米軍海兵隊が沖縄からいなくなれば極東の平和が脅かされる、とするのはまやかしだ。現実にその部隊が軍事作戦を展開しているのは専ら中近東とアフリカだった。極東の何処へ行ってどんな作戦を実施したというのだろうか。


 


 日本の防衛に直接関与してこなかったとしても、沖縄に米軍海兵隊がいることが抑止力だとする論を言う人がいる。しかも軍事専門家と称する人たちもいるわけだが、本当なのかと疑いを持つし釈然としない。海兵隊の役割とは防衛が任務ではなく、別名「殴り込み部隊」といわれるように、敵を海から急襲して上陸進攻する陸軍を助けるものだ。よって米国本土よりも海外に大部分の部隊が展開し、日本でも岩国などに米軍海兵隊の部隊がいる。


 


 鳩山氏はそうした海兵隊の実態を国民に論理的に説明して「海外移転」を実施すべきと国民を味方につけて米国に迫るべきだった。そうした手順を踏んでいれば大マスコミも「軍事的に素人だ」と鳩山氏を決めつけ、素人が米軍再編に口を出すな、既に日米軍事専門家同士で協議決定済みの案件だと、碌な解説記事すら出ないまま轟々たる鳩山バッシングのうちに沖縄県民の希望を打ち砕いた。日本の大マスコミは反鳩山キャンペーンの嵐の裏側で何を国民の視線から隠したのか、今はうまくいったとほくそ笑んでいるかも知れないが、歴史は必ず真実に光をあてる。やがて大マスコミの国民に対する背信行為は明らかになるだろう。


 


 しかし、とにかく「学べば学ぶほど…」と鳩山氏は変節した。当初掲げた日本を真っ当な国にするとした意図をあっさりと放棄した。そして自民党政権が米国と合意した線で再決着した。菅氏もそれを前提として普天間基地移設を図るとしている。政権交代を果たした民主党をしても自民党の轍を変えることはできなかったということだ。それほど日米の軍事防衛利権は深い轍を刻んでいるということなのだろう。


 だからさっそく米国は菅政権にグアムへ米軍移設の勘定書きの割り増しを支払えと要求してきた。民主党政権も自民党政権と何ら変わりなく今の日米軍事構造でコントロールできると自信を深めた証だ。


 


 国内問題は肥大化した官僚利権の解体をいかにして行い、国民に奉仕する公務員本来の姿に立ち戻らせるかだ。これほど巨額な予算を編成して国民が政府の手を実感できずにいたのは世界の七不思議に数えられるだろう。やっと国の子育て支援の手が感じられる子供手当などの直接支給が始まったと思ったら「バラ撒き」批判の嵐だ。官僚が反対するのなら理解できる。防衛予算ほどの巨額な歳出にも拘わらず、直接支給のため官僚の利権肥大化にほとんど寄与しないからだ。それほどの巨額予算を伴う制度事業なら2ケタの外郭団体が形成され、3ケタの天下り先が確保できなければならない、とするのが官僚の常識だからだ。


 官僚の意を汲むかのように大マスコミが批判の先頭に立ち、御用評論家が大声を上げ、自民党をはじめとする自民党から剥げ落ちた連中が非難の合唱に加わっている。そして民主党議員中からも信念のないポピュリズム議員が見直しを言及し始めた。


 


 自民党政権下の官僚制内閣により官僚利権は肥大した。その有様は目に余る。たとえば本来なら福祉政策で行うべき部門へ国民の志を頂戴する、ということで始まった「赤い羽根」は半ば義務的に各自治体から自治組織へ割り当てられ、その会計はブラックボックスと化している。同じようなものは業界団体などの法人組織として幾らでもある。たとえば法務省の「むつみ会」なるものの実態は何なのか。公務員がとことん国民を食い物にするのはそろそろ止めた方が良い。中国ほどではないが、日本でも公務員に対する怨嗟の声は高まっている。


 


 去年の夏に果たした折角の政権交代を、衆参ネジレ状態にして機能不全にするつもりなのか、それとも民主党に力強く公務員改革を行えとエールを送るのか、が問われる選挙だ。民主党が自治労の推薦を受けているから公務員改革はできない、とする議論は正鵠を得ていない。国民に等しく投票する権利があれば、公務員を利して多くの国民を敵の回す愚を民主党は選択しないし、だからといって自治労が自民党へ乗り換えることもあり得ないだろう。国の未来は国民の選択にかかっている、と選挙管理委員会のような言葉で結ぶしかないが。



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