小沢外しは危険だ。
菅新内閣の組閣が進んでいるようだが、その主導権を前原氏のグループが握っているようだ。結果として挙党体制は困難で小沢外しが如実になっているようだ。前原氏が主導権を握ればそうなるだろう、とある事件を思い出して、何とも厭な気分になった。
郵政選挙で民主党は大敗し、岡田代表が辞任しその後を継いだのが前原氏だった。若くて斬新な政治家と期待されたものだが、さっそく永田氏の偽メール事件で躓いた。
偽メール事件とは郵政選挙で時の自民党幹事長とライブドアの堀江氏との間で交わされた政治資金を巡るメールとして永田氏が国会で取り上げた問題だった。
永田氏も若くて将来を嘱望された政治家だったが功を焦ったのだろう、偽メールを掴まされた。根拠のない偽メールを片手に正式な委員会で公党の幹事長の責を問うたのだから、メールがガセだと判明した責任を取って永田氏は国会議員を辞した。しかし永田氏の入手したメールの真偽も検証しないで委員会追求にゴーサインを出した前原代表は「ちゃんとした証拠がある」と強弁し結果として永田氏を追い詰めた。
過去を穿り返して問題にするのは、永田氏がその後に自殺したこともさることながら、責任ある野党第一党が国会で追及すべきは政権与党の政策であり利権構造だったはずだ。下手な検察ごっこのようなことを国会でせよと、国民は国会議員に期待していない。それは大衆週刊誌に任せればよいことだ。そうした格調の低いことで将来ある若手議員を失ったことにたいする反省が前原氏に見られないことだ。
八ッ場ダムにしてもしかり、高速道路料金にしてもしかり、明確な理念と碁で言う打ち筋の見通しもないままに見切り着手して暗礁に乗り上げたままだ。前原氏の欠陥はポピュリズムに走ることだ。東京都知事が「都民の水瓶だ」と言えば、八ッ場タ゜ムに貯水予定の水を汲んで持って行くぐらいの行動力がなければだめだろう。そうすれば到底飲用に適しないと分かるはずだ。
高速道路無料化も首都圏や都市圏で論議するから変な結論しか出ないのだ。多くの地方都市では狭い国道を通過するだけのトラックが爆走している。環境と安全面からその町の通過車両は生活に密着した国道を走るのではなく高速道路を走ってもらいたい。しかも地方都市で収穫した野菜や魚を安価に早く安全に輸送するために高速は無料の方が良い。
そうしたことすら議論が進まないまま、前原大臣は八ヶ月余り何をしていたのだろうか。その程度の政策能力でも党内で議論をするのは得意かも知れない。しかし、他党との政権協力とか知事会相手に限られた予算配分を説明するとか、そうした泥臭い地味な議論をして相手に納得してもらうことができるのだろうか。
小沢氏一派を排除して、民主党が成り立つのか、心静かにして考えるが良い。そして小沢氏の何が問題なのか、小沢氏の何を恐れているのか、じっくりと考えればそれだけ自分たちが未熟なのだと思い至るだろう。
政権ごっこで自分たちが仕切るのだと小沢氏を排除したため、結果として小沢氏が党を割ったらどうするのだろうか。その時には菅氏の手から政権はなくなる。自民党は喜んで小沢氏と手を握り復権するだろう。最悪のケースだが、政治家は最悪の場合も想定して政権構築しなければならない。
外科医は手術前の血液型検査を自分でするという。間違えたら患者の命がなくなる。それほどの他人任せにしない慎重さは政治家にも求められる。前原氏は自分で小沢氏に会ってじっくりと話し合ったことがあるのだろうか。検察とマスコミにより喧伝されて作り上げられた虚像に振り回されるのではなく、波乱万丈の政界でしぶとく生き残ってきた真の実力者と会うのは将来の糧になるだろう。政権から小沢氏を排除して、参議院選挙では民主党の為になるかもしれないが、国家と国民のためになるのかどうか慎重に検討しなければならないだろう。