イランが国家体制崩壊の危機か?   

<12月31日 (AP) ー イランでは今週、自国通貨リアルが対米ドルで過去最低水準に急落したことを受け、3年ぶりの大規模な抗議活動が発生した。 29日に撮影されて拡散した映像には、首都テヘランの路上で抗議する市民の姿が映っていた。同日、中央銀行総裁が辞任した。 
 テヘラン中心部の市場付近では、映像に警察や治安部隊を押しのけ、石を投げる市民の姿が映っていた。
  メディア報道によると、30日にはペゼシュキアン大統領が実業家グループと面会し、彼らの要求に耳を傾けたという。
  ペゼシュキアン大統領は「政府は問題解決と社会状況の改善に向け、あらゆる努力を惜しまない」と述べた。また、抗議者との対話のためエスカンダル・モメニ内相を指名した。  国税庁長官も、政府が企業に有利な税制改正を行い、納税遅延に対する罰則を撤廃すると表明した。
  政府は冬季のエネルギー消費管理のため、31日に官公庁と銀行を休業すると発表。これに2日間の週休とさらに1月2日の宗教上の祝日が続いて、4連休となる>(以上「AP通信」より引用)




イラン通貨急落で大規模抗議  対米ドルで過去最低水準に」との見出しに驚いた。かつて「イラン・イスラム共和国の内情、嫌われている体制は瓦解するか?」との論説を英国誌エコノミストが掲げたことがあった。

トランプ大統領はテヘラン市民に「直ちに避難せよ」と呼びかけている。
 イランのイスラム革命体制は腐敗、堕落、破綻しており、市民から嫌われているとよく言われる。
 では、体制は近いうちに崩壊するのだろうか。
 イスラエルは衝撃と畏怖作戦を容赦なく続けている。6月16日には「テヘランの制空権を完全に掌握した」と述べた。
 翌17日には米国のドナルド・トランプ大統領がテヘランの人々に「直ちに避難せよ」と呼びかけ、市外に向かう道路ではすでに数日前から車が数珠つなぎになっている。街の商店はシャッターを下ろした。
 ソーシャルメディアには、バーベキューにされた肉の絵文字を使って母国の軍幹部らの暗殺を祝うイラン市民も現れた。
 こうした屈辱は革命体制の軍事戦略の失敗を浮き彫りにし、これを機に反乱やクーデターが起きて混乱が生じ、国家が生まれ変わるのを望む向きもある。
 しかし、侵略者には屈せずに抵抗するのがこの国の基本的な対応だ。
 それに、戦いが長期化して一般市民の犠牲が増えれば、非常に愛国心の強い国では世論が盛り上がる可能性がある。
 イランでそうなれば、革命体制の延命や核爆弾開発努力の強化に至ることもあるだろう。
支配者と被支配者の間に広がる大きな溝
 イランの内側の脆さは、以前にも攻撃を招く要因になったことがある。
 革命後の混乱の最中にあった45年ほど前には、イラクのサダム・フセインがイラン・イラク戦争を始めた。戦いは8年に及び、数十万人が犠牲になった。
 この戦争ではイランの革命体制は弱くなるどころか、逆に指導力を強め、体制の政治的な武装組織であるイスラム革命防衛隊(IRGC)の支配力も強まった。
 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はイラン国民の決起を望んでおり、「イランの人々が旗を中心に団結する時が来た」と呼びかけている。
 イスラエルが展開する「ライジング・ライオン」作戦という名前は、革命前のイランの国王「シャー」の旗と、その中央に配されたペルシャのシンボルを思い出させる。
 ロンドンにある衛星放送局「イラン・インターナショナル」はネタニヤフ氏の主張をイラン人の一般家庭に伝えた。
 イランの支配者と被支配者の間にある溝は、シャーが国民の手によってその座を追われた1979年のイスラム革命時と同じくらい大きく広がっている。
 目もくらむような攻撃をイスラエルから受けたイラン指導部はぐらつき、力量のなさを露呈した。
 警告を受けていたにもかかわらず、備えを怠っていた。ある証券会社の社員はこれについて、まるで「張り子のネコだ」と冷笑した。
 イスラエルではミサイル攻撃を受けるとサイレンが鳴り響き、シェルターに入るよう指示される。
 イランではそうした警報は発令されない。
 また、イスラエルがイランの司令官を就寝中に暗殺することに成功したことは、イラン上層部の内通者の協力なしには実現し得ないことであり、忠誠心のなさを浮き彫りにした。
 縁者びいきと猜疑心は体制の中核に及んでいる。
 この状況を、当時軍人だったレザー・パーレビのクーデターによって倒されたガージャール朝の弱体化の気配になぞらえる向きもある。
 パーレビが新たな王朝を興し、イランを近代化に向かわせたのはちょうど1世紀前のことだ。」(以上「英エコノミスト誌 2025年6月21日号」より一部引用)

 古来より「権力は腐敗する。絶対権力は絶対的に腐敗する」という言葉がある。イランも宗教指導者と自称する独裁者が宗教の意匠を纏って独裁体制を続けている。
 独裁国家の特徴は独裁者と一握りの縁故者たちが国民から富を搾取し、社会を「恐怖」により統制することだ。いかなる意匠を纏おうとも、独裁国家はすべて同じだ。

 イランは原油産出国で莫大なオイルマネーが国庫に入っている。先進諸国並みのの財政運営をすれば、国民所得は先進国並みになり、社会インフラは整備され女性の社会進出も進んでいるはずだ。
 しかしイランの国家予算は約5~6兆円(為替変動により変わるが)ほどで、国民一人当たり平均所得は2023年で一人当たり約4,427米ドル(約70万円)でしかない。それは他の中東の独裁制の産油国も同様で、いかに独裁政権が国民を蔑ろにし、経済政策を蔑ろにしているか明らかだろう。

 一世紀前、当時のイランはパーレビ国王が統治し高層ビルやブティック、洗練されたカフェやレストランの出現によって、ヨーロッパの大都市、特にパリのような雰囲気を呈していたため、中東の「パリ」と呼ばれていた。もちろん女性はヒシャブなど被らず、流行の髪型を楽しんでいた。
 1979年のイラン革命により、親欧米的な世俗君主制が打倒され、ホメイニー師を最高指導者とするイスラム共和制国家が樹立された。それ以降、宗教指導者を自称する者によって独裁体制が続き、女性はヒシャブを強制され大学進学の道を断たれ、そして社会的から排除された。

 しかしイランでもネットは国民に深く浸透し、国民が自由に国外情報に触れるようになると、支配者と被支配者との分断を国民が認識するようになった。もはや自由を渇望する国民の欲求を「恐怖」で抑圧することは出来ない。間もなく、イランの独裁体制は崩壊するのではないだろうか。その後に民主的な政権が樹立される保証は何もないが。

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