誇大妄想に陥り、トランプ氏から見放されるプーチン。

＜ トランプ米大統領がウクライナに提示した和平案について、与党共和党議員から厳しい批判が相次いでいる。今月初めのニューヨーク市長選や２つの州知事選における野党民主党の勝利や、性犯罪で起訴された後に自殺した富豪エプスタイン氏の関連資料開示を巡る問題などとともに、トランプ氏の指導力に陰りが出てきた兆しとの見方もある。

　上院軍事委員会のウィッカー委員長は声明で「このいわゆる『和平案』はさまざまな現実的問題をはらんでおり、和平が達成できるかどうか私は極めて疑わしく思っている」と述べた。
　和平案への懸念は、２５日のブルームバーグによる報道で一層高まった。報道によると、米国のウィットコフ和平交渉担当特使はロシアのウシャコフ大統領補佐官との１０月１４日の電話会談で、米ロ双方が協力して和平案を策定すべきと発言したとされる。
　ドン・ベーコン下院議員はＸへの投稿で「ロシアの侵略に反対し、主権を有する民主国家のウクライナが勝利するのを望む人々にとって、ウィットコフ氏が全面的にロシア贔屓（ひいき）なのは明らかだ。彼は交渉主導役として信頼できない。ロシアに金で雇われたエージェントの行動でさえもっと控えめではないだろうか。解任が必要だ」と訴えた。
　ブライアン・パトリック下院議員も、米国の方針転換を要望し、ウィットコフ氏の通話記録を「大問題」だと非難した。
　前院内総務のミッチ・マコネル上院議員は、トランプ氏は新たな助言者を見つける必要があるのではないかと提言するとともに「ロシアの残虐行為に報償を与えることは米国の利益にとって破滅的だ」と強調した。
　一方バンス副大統領は、マコネル氏はこの和平計画に「ばかげた攻撃」を行っていると反論。トランプ氏の息子のジュニア氏もソーシャルメディアでマコネル氏は「ただ不満を抱いて父に八つ当たりしているだけだ」と述べた。
　しかし与党内からのトランプ氏に対する批判は、同氏にとってより厄介な事態につながる恐れがある、と複数の専門家は分析する。
　ブルッキングス研究所でガバナンスを研究しているスコット・アンダーソン氏は「トランプ氏は９－１０カ月前よりもずっと政治的に脆弱な立場に置かれているとうかがえる」と指摘した。
　来年の議会中間選挙に向けて、民主党との激戦が見込まれ、無党派層の取り込みを迫られている多くの共和党議員にとっては世論も無視できない。各種世論調査では、ロシアとウクライナの戦争に関して米国民の大半はウクライナを応援し、ロシアを侵略者とみなしている。
　トランプ氏批判派の中には、ベーコン氏やマコネル氏ら再選を目指さない議員も含まれる。
　ただアンダーソン氏によると、彼らは公的な場ではそうした批判ができない他の議員の声を代弁しているのだという。＞(以上「Newsweek」より引用)

　トランプ氏が示したウクライナ停戦19ヶ条はNATO諸国でもブーイングの嵐だが、米国共和党からも批判が噴出しているようだ。「トランプ「ウクライナ和平案」に与党内からも猛反発...指導力に陰り、止まらぬ共和党員の造反」との見出しに賛同するしかない。

　ウクライナ東部二州とクリミア半島のロシア軍が占領している地域をロシアに割譲して和平案とする、とは武力による国境線の変更を容認するものでしかない。それでは次にバルト三ヶ国やフィンランド、さらにはポーランドへとプーチンの野望は際限がなくなる。実際にプーチンがそんな発言をしているようだ。NATOが望むならロシアが欧州連合軍を破るだろう」と。

　米国特使ウィットコフ氏とトランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏はピクニック気分でロシアを訪れたという。ウクライナの割譲を条件にすればプーチンはトランプ氏が提起した和平案に飛びつくと考えていたようだ。

　しかしプーチンは二人との会談予定に三時間も遅れて登場し、尊大な態度で以下の要求を突き付けたという。

1,現在激戦が繰り広げられているスラビャンスクやクラマルスクを含むドネツク州全域の即時割譲。

2,ウクライナ軍を現在の数百万人から8万から10万人規模に縮小すること。

3,F16戦闘機を含む長距離兵器の完全撤去及びドローン生産施設の完全破壊とNATOへの加入の永久放棄。

4,ウクライナ国内でロシア語の公用化とウクライナ正教をモスクワの支配下に置くこと。

　これではウクライナをロシアの奴隷にすることではないか。ウィットコフ氏とクシュナー氏は顔を蒼くして絶句したという。

　時として老人は誇大妄想に陥りがちだ。それは高齢者特有の病変で、妄想性障害や統合失調症といった精神疾患のほか、認知症（特にレビー小体型認知症やアルツハイマー型認知症）やせん妄など、複数の病気が考えられる。
　プーチンの場合は過度のストレスから誇大妄想に陥る「妄想性障害」や、「気分障害（躁病エピソード）」、「遅発性統合失調症（老年期精神病）」などの精神疾患の可能性が考えられる。いずれにしても、現実離れした誇大妄想疾患に陥っているのは間違いない。

　さすがのトランプ氏も辣腕のネゴシエーターをしても常軌を喪ったプーチンに交渉の余地はないと悟っただろう。これまで回答を避けていた長距離トマホークのウクライナ供与に踏み切るだろう。プーチンはトマホークを供与すれば核使用も辞さないと脅していたが、ドイツは6500億円費やして「アロー3」防空システムを配備した。それは大気圏外で核ミサイルを破壊する防空システムで、ドイツだけでなく欧州全域に配備してロシアの核攻撃を無効化するものだ。

　つい先日ウクライナの長距離攻撃ドローンがモスクワを攻撃して、多大な被害をもたらした。ウクライナはさらに長距離攻撃ドローンを開発して、シベリアの原油精製基地を攻撃するつもりのようだ。既にロシアは厳冬期に入って連日氷点下の凍える日を迎えているが、燃料供給が絶たれればロシア国民は凍死しかねない。

　ロシアは戦闘航空機のすべてを失ったようだ。さらに戦車や装甲車なども払底して、戦争遂行能力は限界に達しつつある。昨日、プーチンはインドを訪れてモディ首相と面会してシベリア原油購入の契約に漕ぎつけたようだ。ロシア国内の食糧欠乏を少しでも補うために輸入する資金の調達にシベリア原油を廉価でも売却せざるを得ない。そこに目を付けたインドが原油購入に応じた。ニュース記事では「インドは抜け目ない」と評しているが、それこそが先進諸国がインドを全面的に信用できない原因だとインド首相には解らないようだ。

　トランプ氏は今回ばかりは目が覚めたことだろう。プーチンは交渉相手に出来ない異常人格者だと。幸いにも米国世論でも「(米国内の)各種世論調査では、ロシアとウクライナの戦争に関して米国民の大半はウクライナを応援し、ロシアを侵略者とみなしている」が大勢だ。

　武力による国境線の変更は断じて認めるべきではない。プーチンには侵略戦争を仕掛けて多大な犠牲者と国土破壊を強行した責任者として、国際司法裁判所の被告席に座るべきだ。独裁者の気ままな戦争を決して容認してはならない。